こんにちは! 熊谷裕子です。今回は「砂糖」についてです。
お菓子作りに不可欠なお砂糖。役割といえば「それはもう、甘くするための砂糖でしょ?」と思いますよね。もちろん甘い、おいしいお菓子の味を作るのは砂糖ですが、他にもいろいろな役割をしています。
今回はお菓子作り初心者さんにも役立つ、砂糖の役割とその使い分けをご紹介します。
砂糖とは? 何から作られている?どんなふうに作られる?
一般的に砂糖と聞いて思い浮かべるのは、一番身近な「上白糖」や「グラニュー糖」などの白砂糖でしょう。
少し専門的になますが、砂糖(ショ糖)は、サトウキビやサトウダイコン(てんさい・ビート)の絞り汁を濃縮・精製し、黒っぽい糖蜜から砂糖の結晶以外の成分を取り除いて純度を高め、白く結晶化させたもの。
精製度が低いほど原料の色や風味が強く、精製が進む(精製度が高い)ほど、白くくせのない味になります。精製度は食感にも大きく影響するので、それぞれの菓子の味や食感のイメージに合わせた使い分けが必要です。
砂糖の製造工程イメージ
原料・・サトウキビ・サトウダイコン(てんさい・ビート)などの絞り汁 ↓ ↓ (濃縮・精製) 黒っぽい糖蜜から結晶以外の成分をとり除いていく ↓ 黒糖、茶色いお砂糖・・しっとりして特有の風味や色がお菓子につく。滋味あふれる味わいに。 ↓ ↓ (濃縮・精製) ↓ 白い砂糖 ・・ ほぼ純粋な結晶。お菓子に色を付けず、くせがなく上品な甘みに。
お菓子作りにおける砂糖の役割は?
初心者さんが知っておきたい、お菓子作りにおける砂糖の役割はこちらの4点。
それぞれの役割について詳しく見ていきましょう。
1.甘み・風味をつける役割
やはり第一にお菓子に甘い味をつける役割をします。多く入れれば甘くなり、量を減らせば甘さ控えめに。また黒糖やブラウンシュガー、三温糖など茶色い砂糖を使い、滋味あふれる特有な風味をお菓子につけることもできます。
2.しっとりさせる役割 (保水性・保湿効果)
粉や水などシンプルな材料で焼くパンは、時間がたつと徐々に乾燥したりパサついたりしますが、スポンジやパウンドケーキなど砂糖が入るお菓子はしっとりと焼き上がり、その後も水分を逃がしにくく、パサつきにくくなります。砂糖には焼き生地をしっとりさせる保水性、保湿性があるのです。
またこの保水性により、メレンゲの泡を安定させる役割も。卵白だけで泡立てるとすぐに気泡が消えてしまったり、水分が分離してしまったりしますが、砂糖を加えることで気泡が消えにくく、安定してふわっとしたメレンゲを立てることができます。
3.傷みにくくする役割 (防腐効果)
フレッシュなフルーツはそのままだとどんどん鮮度が落ち、乾燥したり腐敗が進んでしまいます。そこで砂糖と一緒に加熱してジャムにしたり、砂糖漬けにすることで保存性を高め、食材が長持ちするようにします。砂糖の割合が少ないと(全体の糖度が低いと)やはり腐敗することもあるので、常温で保管するジャムや砂糖漬けを作るときは、少し多めに砂糖を加える必要があることも。お店で売られるジャムなどはいつも同じ甘さにするため、そして腐敗しないように「糖度計」で常に糖度をチェックしながら製造されています。
4.おいしそうな焼き色をつける役割 (色づけ効果)
砂糖にはパウンドケーキやスポンジ、タルト生地などの表面に焼き色をつける効果があります (専門的には「メイラード反応」といいます)。焼き生地において香ばしく、いかにもおいしそうな焼き色は不可欠です。
また砂糖を加熱することで茶色く香ばしいキャラメルになることを「キャラメル化反応」といいます。砂糖をふってバーナーで焦がすクレーム・ブリュレやグラニュー糖をたっぷりまぶして焼き上げるクイニー・アマンなど、キャラメル風味がおいしさを生み出すお菓子もたくさんあります。
役割のまとめ
砂糖はお菓子を甘くするので、「甘さ控えめにしたい!」となれば砂糖を減らす、ということになるのですが、
砂糖を減らしすぎるとぼそぼそした食感になったり、焼き色がつかず白っぽい焼き上がりになったりと、食感や見た目にも影響が出てしまいます。(ここ大事!)
お菓子の配合はバランスが大切。むやみに砂糖を減らさず、レモンや酸っぱいフルーツなど酸味のある素材、またはココアやビターチョコレートなど苦味のある素材を組み合わせることで味を引き締め、全体のバランスで甘さを抑えるようにするとよいでしょう。
お菓子の初心者さん向け おすすめのお砂糖3選
1.上白糖
しっとり効果抜群! 使いやすく適度な焼き色がつきやすい、手に入りやすくリーズナブル
まず初心者さんにおすすめなのはやっぱり上白糖。砂糖の結晶に「転化糖」をかけてあり、上白糖そのものもしっとりとしていますが、スポンジやシフォン、パウンドケーキなど焼き生地に使うとしっとりと焼き上がり、香ばしくおいしそうな焼き色がつきます。逆にサクサクさせたい生地(クッキーやタルト生地など)には不向きです。
また白いので色もつかず、甘さも適度につき、細かいので溶けやすく使い勝手も抜群。クリームやムース、デザートなどなんでも加えるだけという手軽さ。
わたしはほとんどのお菓子作りに上白糖を使っています。何といってもリーズナブルなのも魅力ですよね。
低温で乾燥する冬季には塊ができやすくなりますが、温かいところに置くとほぐれやすくなります。未開封なのに固まっている・・・そんなときの裏技は袋ごと「レンジで30~60秒温める!」です。簡単にほぐれるようになりますよ。ただしレンジかけすぎには気を付けて。
2.粉糖
粉糖は糖蜜を精製し、ほぼ純度100%に近い結晶のグラニュー糖を粉砕して粉状にしたものです。真っ白で溶けやすいので、手軽にクリームに甘みをつけたり、アイシングに使ったりとお菓子作りでは出番の多いお砂糖です。
また粉糖には転化糖はかかっていないので、しっとり効果はあまりありませんが、逆にクッキーやサブレ、タルト生地など「サクサクする食感」の生地作りに向いています。グラニュー糖では粒子が粗く、焼いた後も溶け切らなかったりしますが、粉糖は細かい粒子なのでバターの多い生地になじみやすく、サクサクに焼き上がります。
通常粉糖が固まるのを防止するため、粉末水あめやコーンスターチが添加されおり、通常のお菓子作りには影響はありませんが、何も添加されていないほうがよいときは純粉糖を使います。
3.溶けない粉糖
溶けない粉糖(デコレーションシュガーとも言います)は粉糖の粒子を油分でコーティングし、水分や油分と溶け合いにくくなるように加工された「デコレーション用」粉糖です。
基本的に溶けない粉糖を生地に混ぜ込んだり、焼いたりすることはなく、茶こしや粉糖振りでお菓子の上に雪のようにふりかけてデコレーションするために使われます。クリームやムースなど水分を含むものにふりかけても長時間溶けず、ふわっとしたデコレーションを保ってくれます。
またシュークリームやクッキー、パウンドケーキなど油分を持った生地の上にふりかけても溶けにくいシュガーです。
油脂がかかっているので、あまり長く保管すると油脂の酸化が進むこともあるので、開封後はなるべく早く使うようにしましょう。
おすすめの砂糖3選まとめ
害虫や湿気で使えなくなってしまうことがないよう、いずれも冷暗所でしっかりと密封して保管しましょう。砂糖類は冷蔵、冷凍する必要はありません。
用途別・砂糖の使い方ポイントいろいろ
基本のお菓子作りで砂糖の上手な使い方やアレンジのポイントをまとめてご紹介!
クリームに甘みをつけたい!
生クリームやカスタードクリームに色や風味をつけずに甘みだけをつけたいときは、ダイレクトに上白糖または粉糖を加えるだけ。上白糖の場合は塊がないことを確認してから加えましょう。
メレンゲと違って砂糖の量を増減しても、甘さが変わるだけでクリームの出来上がりには影響が出ないので、お好みの量に調節できます。
おすすめ商品
黒糖味にしたい! メープル味にしたい!
生クリームを黒糖味、メープル味などにしたいときは白いお砂糖の代わりに黒糖(粉末タイプ)、メープルシュガーパウダーを加えて混ぜるだけです。量はまず白砂糖の場合と同じ量から入れてみて、もし風味や甘みが足りなければ少しずつ足してみましょう。
黒糖などは小さな粒つぶが溶け残ってしまうことありますが、そのまま冷蔵庫に30分程入れておき、再び混ぜるときれいに溶けます。ブラウンシュガーやきび糖なども同様に使えます。
参考レシピ
焼き生地(バターケーキ生地、マドレーヌ生地、スポンジケーキなど)も白いお砂糖の代わりに黒糖やメープルシュガーにかえるだけですが、特に黒糖は100%置きかえると生地がもっちりと重くなったり、くせの強い風味になることも。またスポンジ生地など泡立ちが少し悪くなることあるので、黒糖と白い砂糖を半々にしてみるなど、最初は加減してみるとよいでしょう。
参考レシピ
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ナチュラルな風味にしたい!カントリーケーキの雰囲気を出したい!
白い砂糖を使うと、くせのない、上品な甘みのお菓子になりますが、砂糖本来の自然な甘みを楽しみたい、滋味あふれる素朴な風味に焼き上げたい、というときは黒糖、ブラウンシュガー、きび糖、三温糖などの精製が進んでいない茶色いお砂糖を使ってみましょう。原料由来のミネラルなども含まれ、ホッとするやさしい味に仕上がります。
参考レシピ
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カリカリの砂糖トッピングをしたいとき
お菓子作りでは砂糖類をトッピングして、食感のアクセントにすることもあります。粗い粒子のグラニュー糖やポップシュガーを使うと、おいしいカリカリ食感が生まれます。
例えば
アイスボックスクッキーにグラニュー糖をまぶして焼き上げると、ざくざくした食感とともにキラキラとした輝きが生まれます。
パート・ド・フリュイ(ハードゼリー)にも同様にグラニュー糖やクリスタルシュガー(トッピングシュガー)をまぶしつけることでキラキラとさせ、かつゼリー同士がくっつかないようにします。
シュケット(ミニシュー)やワッフル、トロぺジェンヌには、白い砂糖を加工して作るポップシュガーやパールシュガーをトッピングしたり混ぜ込むことで、カリカリの食感をプラスします。
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しっとり食感の生地に焼き上げたいとき
スポンジやロールケーキ、パウンドケーキ生地がパサつくのが気になる…そんなときははちみつや水あめ、トレモリン(転化糖)などの液状の糖類を上手に利用しましょう。
転化糖やはちみつなど液状の糖類は保湿効果が非常に高く、パウンドケーキやスポンジに焼き色をつけたり、しっとりとした食感に焼き上げたり、キャラメルをねっちりさせます。
ただし液状の糖類だけでは、焼き色がつきすぎたり、べたついてしまうので、かならず砂糖と組み合わせて使用しましょう(砂糖の1~2割程度から試してみるように)。
はちみつは原料の花によって風味があり、色もつきますが、白色のトレモリンはお菓子に加えたときに余分な風味や色がつきません。むしろはちみつ風味を生かしたいとき(スポンジやマドレーヌ、フィナンシェなど)は、お菓子に合った風味のはちみつを使ってみましょう。
いずれも砂糖だけのときより焼き色が強くつきやすかったり焦げやすかったりするので、焼き時間と温度には気をつけましょう。
参考レシピ
ラベンダーはちみつのフィナンシェ | レシピ | 富澤商店 (tomiz.com)
はちみつ金柑ロール | レシピ | 富澤商店 (tomiz.com)
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砂糖の特徴と使い方一覧
食感・風味の効果 | おもな糖類 | 純度・色 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
さっくり軽い くせがない 上品で繊細 | グラニュー糖 | 高い (白色) | もっとも純度が高い。結晶の粒が大きく、固まりにくい。 | 上品な甘さの生ケーキなどに |
サクサクに | 粉糖 | グラニュー糖を粉末にしたもの。コーンスターチやオリゴ糖などを添付したものもある。グラス(アイシング)にも使用。 | サクサクしたサブレ、パートシュクレに | |
しっとりする | 上白糖 | 転化糖が少量添加されている。くせが少なく、安価で入手しやすい。やや固まりやすい。 | しっとりしたバターケーキやスポンジなどに | |
風味がある | 三温糖 | 中程度(茶色) | 茶色がかっている。ほんのり風味がつく。 | カントリー風のケーキや個性的な風味づけに |
ブラウンシュガー きび糖 粗糖 | 精製度が低く、サトウキビのミネラルや風味、茶褐色が残る。りんごやマロン、カフェに合わせるとよい。 | カントリー風のケーキや個性的な風味づけに | ||
じっとり濃厚 くせがある どっしり 素朴な味わい | 黒糖 | 低い (濃茶) | サトウキビの絞り汁を煮詰めたもの。濃い茶褐色で風味が強い。重くじっとりとした食感になる。上白糖などと合わせて使うのもよい。 | 黒糖の風味を生かしたい生地や素材に合わせて |
液状の糖類 | ||||
---|---|---|---|---|
ねっちり しっとりに | 転化糖 (トレモリン) | お菓子に色がつかない。風味をつけたくないときに使用する。 粘度をつける効果も。 | しっとりと上品な甘みの焼き生地に | |
はちみつ | お菓子に色と風味がつく。採取された花ごとにフレーバーが異なる。 | しっとりとはちみつの風味を生かした生地に |
砂糖を使ったおすすめレシピ
アールグレイとりんごのコンフィチュール
てんさい糖や きび糖などナチュラルな甘みと風味の砂糖を使用して、香り高いアールグレイのジャムを作ります。しっかり煮だした紅茶には相性抜群のりんごを加え、じっくりと煮詰めて秋にぴったりなコンフィチュールに。
マロンの黒糖クリームパイ
冷凍パイシートとアッシュカスターを使って、初心者さんでも簡単に作れるクリームパイです。
から焼きしたパイケースにカスタードとマロンを盛り、たっぷりと黒糖クリームを絞ってパイクラムを貼り付けます。溶けない粉糖を雪のようにふって仕上げましょう。香ばしいパイとまるごとマロン、たっぷりのクリームがおいしい秋のデザートに。
まとめ
いかがでしたか。砂糖には甘みをつけるだけでなく、いろいろな役割や種類がありましたね。使い分けやアレンジ方法をマスターして、おいしいお菓子作りに役立てくださいね!
コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生
熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。 文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。