こんにちは! 熊谷裕子です。
今回は塗るだけで! お菓子をキラキラ&フレッシュに、まるでお菓子屋さんのケーキみたいに仕上がる「ナパージュ」について、その役割や使い分け、活用法をご紹介します。
ナパージュとは?
ナパージュの語源はフランス語の「塗るもの」。ケーキ作りにおいてはお菓子の表面に塗る、透明感のあるジュレ状のものをさします。その成分は糖分、水分、それにペクチンなどの凝固剤(増粘剤)。ナパージュには数種類あり、お菓子によって上手に使い分けるのがポイントです。
ナパージュの役割は?
トロトロに溶かしたナパージュをさっとケーキの上面やデコレーションのフルーツに塗るだけで、プロっぽい仕上げに見えませんか? またナパージュは見た目だけのためでなく、様々な役割があります。
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お菓子の表面につやや輝きを出し、フレッシュでおいしそうにみせる
ムースやババロアの表面や飾ったフルーツにナパージュを塗ることでつややかな輝きを出すことができ、よりお菓子をおいしそうに仕上げることができます。ナパージュに色を付けてデコレーションすることもあります(後述)。
お菓子の表面やフルーツのカット面を保護したり、乾燥を防ぐ
ムースやババロアなどの冷菓は冷蔵庫で冷やし固めたり保存したりしますが、冷蔵庫の中は乾燥しやすいもの。ムースやババロアの表面にナパージュを塗ることで、乾燥を防ぐ役割をします。同様にケーキの上に飾ったフルーツのカット面にもナパージュを塗ったりして乾燥を防ぎます。
空気に触れることで変色しやすいフルーツ(バナナや桃など)の劣化・変色を和らげる
バナナやりんごなどのフルーツはカットしてケーキに飾っても、徐々に変色してしまいます。ナパージュを塗ることでカット面が空気にふれて変色するのを和らげることができます(完全に防ぐことは不可ですが・・・)。またナパージュの輝きで変色を目立たなくさせることができます。
フルーツ飾りなどの形を固定し、形が崩れるのを防ぐ
タルトなどにフルーツをたっぷり盛りたいとき、ナパージュ(加熱用の固まるタイプを使用)を塗ることでナパージュがフルーツを固定し、形が崩れるのを防いだりカットするときに切りやすくなったりします。
ナパージュの種類と上手な使い分け
※ナパージュまとめ一覧もごらんください
①加熱用 透明ナパージュ ・・・フルーツや生菓子用 保管は冷蔵または冷凍
特徴
加熱用のナパージュは味や香りはほぼなく、透明な寒天のように固まっています。主にフルーツに塗るのに適しています。フルーツのつやがけや乾燥防止、変色防止に加え、塗った後もまたナパージュが固まるのでセット力(保形性)がよく、飾り付けたフルーツを崩れにくくする役割もします。
熱いナパージュを塗るので、熱に弱い冷菓(ゼラチンで固めるムース、ババロア、レアチーズケーキなど)には向きません。冷蔵保管するタイプのナパージュなので、焼き込みタルトやパウンドケーキなどの焼き菓子には不向きです。
使い方
そのままでは塗れないので、使用量の20~30%の水を加えて弱火で沸騰させ、完全に液状に溶かしてから刷毛などで塗ります。少量だけ使うときはレンジを使うと便利です。冷めてくると固まってきて、薄くきれいに塗りにくくなるので、温めなおして液状に戻してから再度使いましょう。
保管
保管は必ず冷蔵庫で。なるべく使う分だけその都度加水し加熱するように。一度使った残りも保管しておけば再度使えますが、未使用のものとは分けておき、早めに使い切ります。冷凍も可能です。
上手に使うコツ
塗ってすぐ固まってくるので、何度もこするように塗りなおすときれいなつやになりません。液状に溶かしたナパージュを刷毛でたっぷりすくい、刷毛を寝かせるようにしてフルーツやケーキの表面に「のせては少し伸ばし、またたっぷりつけてその隣の場所からのせては伸ばし、」というイメージで。ショートケーキの上にのせるいちごのように、ワンポイントでのせるフルーツにだけ塗りたいときは、ケーキにのせる前に塗ってから飾ると他の部分(ナッぺした生クリームなど)にナパージュがつかず、きれいに仕上がります。
こすらず「のせる」イメージでたっぷりめに塗るとよい。
ナパージュが固まるのでセット力(保形性)がよく、飾り付けたフルーツを崩れにくくする役割も。
加熱用 透明ナパージュを使ったレシピ
※上記ではナパージュ(上がけゼリー)をご紹介しましたが、こちらの製品もナパージュとして活用できます。
ナパージュミックス / 100g
粉末状のナパージュミックスです。パウダーに対して倍量の水を加え、煮溶かして使用します。
粉末の状態だと賞味期限が長いので、少量しか使わない場合は経済的。
②加熱用 アプリコット風味のナパージュ ・・・焼き菓子用 保管は冷蔵または冷凍
特徴
そのままジャムとしても召し上がれますが、あんずやみかんの入ったジャムを裏ごし、固形物を取り除いてあるので、ナパージュとしてお菓子の仕上げにも活用できます。オレンジ色のジュレ状で、あんず(アプリコット)風味、ほんのり酸味もあります。
主に焼き込んだタルトや、パウンドケーキ、一部のクッキーなどに塗るのに適しています。塗った後もすぐに固まってくるので、焼き菓子のつやがけや乾燥防止の役割をします。塗った後は固まりますが、触るとペタッとしています。糖度もある程度高い(甘い)ので、常温で保管する焼き菓子に適しています。
ナパージュ自体にあんず風味がついているので、洋梨やリンゴ、アプリコットなどあんず風味と相性が良いフルーツを使ったタルトやパウンドケーキがおすすめ。
熱い状態で塗るので、熱に弱い冷菓(ゼラチンで固めるムース、ババロア、レアチーズケーキなど)には向きません。また甘みがある程度強く、あんず味がつくナパージュなのでフレッシュなフルーツのつやがけには不向きです。
使い方
そのままでは塗れないので、使用量の20%程度の水を加えて鍋に入れ、弱火で沸騰させて完全に液状に溶かしてから刷毛などで塗ります。少量だけ溶かすときはレンジを使うと便利です。
水を加えすぎるとさらっとして塗りやすいですが、塗ったあと時間とともに溶け、タルトやケーキ生地に吸われてしまい、つやがなくなったり甘くなっただけ、となってしまうので注意。
冷めてくると固まってきて、薄くきれいに塗りにくくなるので、温めなおして液状に戻してから再度使いましょう。
しっかり沸かして完全に液状に溶かしてから使う
保管
保管は必ず冷蔵庫で。なるべく使う分だけその都度加水し加熱するように。
一度使った残りも保管しておけば再度使えますが、未使用のものとは分けておき、早めに使い切ります。冷凍も可能です。
上手に使うコツ
塗ってすぐ固まってくるので、何度もこするように塗りなおすときれいなつやになりません。液状に溶かしたナパージュを刷毛でたっぷりすくい、刷毛を寝かせるようにしてフルーツやケーキの表面に「のせては少し伸ばし、またたっぷりつけてその隣の場所からのせては伸ばし、」というイメージで。
※アプリコットジャムをお菓子に塗ってつやをつけることをアブリコテ【仏:abricoter】と言います。
溶かしたナパージュは熱いので、耐熱性のある刷毛で。さっとのせるように塗り広げるのがコツ。二度塗りは厚くなるので厳禁。 |
固まってきたのをそのまま塗ると厚塗りになったりきれいに塗れないので注意。
必ず温めて溶かしなおしましょう。
シンプルな焼き菓子がワンランクアップします。
使い方のバリエーション: ベリーの色と風味をつける
ミックスジャムに裏ごししたラズベリージャムや、カシスジャムを同量加え、ラズベリーやカシスの色と風味をつけて使うことも。必ず加えるジャムも茶こしなどで裏ごし、ほんの少し水も加えて煮溶かしましょう。
またはミックスジャムにラズベリーピュレ、カシスピュレなどのフルーツピュレを加え(水は加えない)、煮溶かして使っても同様にベリーの色と風味がつきます。
加熱用 アプリコット風味のナパージュ(ミックスジャム あんず入り)を使ったレシピ
オレンジの焼き込みタルト(タルトオランジュ) | タルト プリュノーとアマンディーヌ |
▽アプリコットジャムを上手に塗るコツが動画で見れます 【お菓子のレシピ】オレンジタルト(TOMIZ-富澤商店) - YouTube | |
アプリコットケーキ | りんごのオープンパイ |
※上記ではミックスジャムをご紹介しましたが、こちらの製品もアプリコット風味のナパージュとして活用できます。 ナパージュ用アンズジャム(ジェルフィックス) / 50g 50gに対し40ccの水を加え弱火で溶かして使います。 |
③非加熱用 透明ナパージュ ・・・生菓子用 保管は冷蔵または冷凍
特徴
非加熱タイプのナパージュは味や香りはほぼなく透明ですが、とろとろとしていてジュレ状です。
やわらかいのでそのままお菓子やフルーツに手軽に塗ることができます。塗った後冷蔵すると少し固さが出ますが、寒天のようには固まらないのでなめらかな食感です。
加熱の必要がないので熱に弱い冷菓(ゼラチンで固めるムース、ババロア、レアチーズケーキなど)のデコレーションに最適。ピュレやジャムで色や風味もつけやすく、アレンジしやすいナパージュです。
フルーツのつやがけにも使えますが、冷えてもがっちりとは固まらないので、時間がたつとフルーツから出る水分でナパージュが流れ落ちやすくなってしまうことも(セット力・保形性が弱い)。
冷蔵保管するタイプのナパージュなので、焼き込みタルトやパウンドケーキなどの焼き菓子には不向きです。
使い方と上手に使うコツ
やわらかいジュレ状なので、冷蔵庫から出してそのままパレットで塗ったり刷毛で塗り広げたりできます。厚く塗りすぎると流れ落ちることもあるので、適度な厚みがポイント。何度塗っても固まってきたりざらざらしてくることはないので、塗りやすいナパージュです。
保管
保管は必ず冷蔵庫で。ピュレやジャムを混ぜて色づけたものも保管しておけば再度使えますが、未使用のものとは分けておき、早めに使い切ります。冷凍も可能です。
使い方のバリエーション: 色と風味をつける
フルーツのピュレやジャムを加えて色と風味をつけることができます。
フルーツピュレの場合はナパージュ10に対してピュレはおおよそ2くらいの割合で混ぜ、茶こしで濾して均一にします。
ジャムの場合は同量程度加え混ぜ、濾して使います。
風味付けしたものは保存せず、なるべく使い切るようにしましょう。
非加熱タイプのナパージュを使ったデコレーションいろいろ
ナパージュにカシスピュレを10:2で混ぜて濾し、カシスムースに塗る。 |
透明ナパージュを塗り、その上からインスタントコーヒーを微量の水で溶いたものをのせて軽くこすりつけ、マーブル模様にする。 |
透明ナパージュにストロベリーピュレ入りナパージュで色味をつける。 応用していろいろな色のナパージュ仕上げに。 |
アプリコットピュレ入りのナパージュにラズベリーピュレ入りナパージュで色味をつける。 |
透明ナパージュにピスタチオペースト入りのナパージュで色味をつける。 ピスタチオのフレジエ |
非加熱用 透明ナパージュ(ロイヤルミロワールヌートル)を使用したレシピ
ナパージュまとめ一覧
ナパージュ | 加熱用ナパージュ | 焼き菓子用ナパージュ | 非加熱タイプナパージュ |
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特徴 |
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使用時の 加熱の有無 | 加水加熱して使う | 加水加熱して使う | そのまま使える |
適したお菓子 | フルーツ飾りなど 要冷蔵のお菓子 | 焼き込みタルト、 パウンドケーキなどの 焼き菓子 | ムース、ババロア、 レアチーズなどの冷菓 フルーツ飾りなど 要冷蔵のお菓子 |
使用後の状態 セット力 (保形性) |
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保存方法 | 冷蔵庫で(冷凍も可能) | 冷蔵庫で(冷凍も可能) | 冷蔵庫で(冷凍も可能) |
ナパージュを使ったNEWレシピ
アーモンドたっぷりのしっとりパンドジェーヌに洋梨を組み合わせました。生地にはレモンの爽やかな香りをつけ、食感のアクセントにココナッツも加えています。アプリコットのナパージュでつややかに仕上げましょう。冷やして召し上がってもおいしい夏の焼き菓子です。
タルト生地をから焼きし、レアチーズを流した上にブルーベリーをたっぷりのせます。
カシスナパージュをかけることで色濃くつややかに、且つカシスの酸味がよりブルーベリー風味を高めるソースの役割もします。
「タルト生地からはちょっと大変・・」という方には、市販のタルトカップを使う簡単バージョンもご紹介。
最後に
いかがでしたか。ナパージュひとつでいつものお菓子もワンランクアップの仕上がりになりますね。ナパージュの種類や役割、使い分けを理解し、ぜひ素敵なお菓子作りに役立ててみてください。
コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。
文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。