赤サフと金サフの違いって?どちらかしか持っていない、代用できるもの?

比較・検証

こんにちは。富澤商店にてレシピ著者をしておりますマスダアイミです。
秋、冬になると、いつもより食べたくなるのが甘いお菓子やパン。
菓子パンを手作りして美味しく食べたい!そんな気持ちになってきますよね。

いざレシピを探してみると、菓子パンレシピによく書いてある「金のイースト」。
うちには赤いイーストしか持っていないけど・・これって代用できる?何が違うの?
そんな疑問を解消する為、今回のコラムではイーストの発酵の仕組みを深掘りしていきます。
コラムを読んで、日々の手作りパンに活かしていきましょう!

赤サフ・金サフとは?

パン作りでよく聞く「赤サフ」「金サフ」とは、フランスのルサッフル社が製造するインスタントドライイーストの通称で、低糖生地用を「赤サフ」、高糖生地用を「金サフ」と呼んでいます。

左:赤サフ 右:金サフ

赤サフは主に糖分0~12%の無糖、低糖の生地に対し発酵力に優れています。
例えば、フランスパン食パンなどに向いています。

金サフは多糖パン用。糖分5%以上の高糖の生地に対し発酵力に優れています。
例えば、ブリオッシュパネトーネなどに向いています。

赤サフと金サフの違いはズバリ『糖に耐える性質があるか』の違いです。
菓子パンのレシピによく金サフが使われているのは、材料に「砂糖が多いから」なんですね。

赤サフに向いているレシピ

金サフに向いているレシピ

砂糖と酵母の関係って?

パン酵母は、砂糖などの糖が多すぎる環境では、浸透圧の影響で弱ってしまいます。

ジャムを作ったことがある方は想像できると思いますが、フルーツに砂糖をたくさんかけて置いておくと沢山水がでてきますよね。あれは砂糖の浸透圧の影響で、フルーツの中の水分が引き出されて脱水している状態です。

高糖のパン生地でもそれが起こります。
酵母(イースト)は生き物。糖が多すぎると酵母の水分を抜き取ってしまうのです。
酵母は砂糖があれば、その砂糖を自身で分解し、分解した糖を栄養源として生命活動をしています。
これをパンの発酵といいます。
ただ、酵母が食べるために分解した糖が、食べる分を上回っていっぱいになってしまうと、グッと浸透圧が上がり、その結果酵母自身が弱ってしまうのです。

金サフは糖に耐える性質があるので、浸透圧で弱らず、良好な発酵をとることができます。
これが、砂糖の多い生地は金サフを使いましょう!と言われる所以です。

そこで考えてしまいがちなのが、
『金サフは赤サフと比べて、強い酵母なのでは?』
『赤サフよりも発酵が早くて強い!膨らみやすい!』
きっとそんな印象がつくと思います。果たして、そうなのでしょうか??

赤サフと金サフで発酵力の実験をしてみました。

どっちが早く発酵する?糖分の違う生地で、発酵力を比較!

左:赤サフを入れた生地 右:金サフを入れた生地

糖分の違う生地を使い、赤サフと金サフの発酵力を比較してみました。
低糖でも高糖でも無い糖分5%から、10%、15%と糖分を上げての比較です。
生地は同じ配合、同一の発酵時間で比較をしました。

まず糖分5%の生地から。

糖分5%の生地 左:赤サフ 右:金サフ

左が赤サフ・右が金サフです。
赤サフの方が膨らんでいる様子が分かります。同一の発酵時間ですと、赤サフの方が発酵速度は早いようです。

続いて10%、15%と糖分を上げていきます。
砂糖の量が多くなるので、金サフの方が優勢になるだろうと思いきや…?

糖分10%の生地 左:赤サフ 右:金サフ
糖分15%の生地 左:赤サフ 右:金サフ

それぞれ、画像内の左が赤サフ入りの生地、右が金サフ入りの生地です。

いずれも赤サフの方が膨らみは早く、赤サフ優勢の結果となりました。
糖分5%以上の高糖の生地に対し発酵力が優れるはずの金サフですが、
何故このような結果になるのでしょう…?

実は金サフは発酵が「早い」「強い」のではなく、「ゆっくり型」。
赤サフに比べて発酵に時間がかかるのが特徴です。時間をかけてぐんぐんと発酵します。

糖分15%の生地を更に長く置いておくと、次第に金サフが優勢になってきました。赤サフ生地は次第に元気がなくなってきています。

糖分15%の生地 左:赤サフ 右:金サフ
糖分15%の生地 左:赤サフ 右:金サフ

これは何が起こっているかというと、赤サフ生地は即時に発酵を始めているのに対して、金サフは自身が弱らないように発酵活動を調整しているから、という理由になります。

金サフは自身の糖を分解する能力が、赤サフに比べて低いのが特徴です。
砂糖をゆっくりと分解するので、自身の周りが分解した糖でいっぱいにならず浸透圧がグッと上がるのを防ぎ、ダメージを受けないように、弱らないように発酵を進めます。

分かりやすく言うと、
高糖の生地では赤サフは大勢でえーい!と大量に料理して、沢山の料理にのまれてしまうイメージで、
金サフは都度必要な分を料理して、お腹が空いたらまた料理する…そんな風に想像してみると良いと思います。

赤と金の代用はできるが、性質を理解してパン作りをしてみよう!

実験で分かった結果から、赤サフと金サフを使う際に注意すべきことは、
高糖生地で金サフを使う場合、金サフの性質上発酵がゆっくり進むのでしっかり待ってあげる、を意識すること。
また、赤サフを使っているレシピは金サフでも代用できますが、赤サフより発酵がゆっくりになるので
レシピの時間よりも発酵時間がかかるかもしれないと心得ておくこと、です。

手作りする際に材料の性質を知っておくと失敗しづらくなりますし、応用も効くようになり、手作りのバリエーションが広がります。何より普段使っている材料をより深く知れて、活かせるのは楽しいことですよね。
上手に使い分けをしながら美味しいパンを作っていきましょう!


赤サフに向いてるレシピはこちら

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コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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