白神こだま酵母とは?イーストとの違いや魅力をお伝え

基本・初心者

こんにちは。富澤商店にてレシピ著者をしておりますマスダアイミです。
私は毎月、白神こだま酵母を使ったパンレシピをご紹介しています。

白神こだま酵母でパンを焼くと、とても美味しくパンが仕上がるのでお勧めしているのですが、
「白神こだま酵母って何?」「イーストと何が違うの?」
と、こんな質問をよくいただきます。

今回は白神こだま酵母の特徴のご紹介から、イースト使用のパンとの焼き比べをして、白神こだま酵母の魅力を深掘りしてお伝えしていきたいと思います!
このコラムを通して、白神こだま酵母を使ってみたいな…!そう思っていただけたら幸いです。

白神こだま酵母とは?

秋田県と青森県をまたぐ世界自然遺産、白神山地のブナの原生林より採取され純粋培養された酵母です。
日本の酵母菌研究の第一人者で知られる、故小玉健吉博士が発見しました。
白神山地で小玉博士が見つけた酵母。なので白神こだま酵母という名前なのですね。
白神こだま酵母の特徴として、

〇種起こし不要で水に溶かしてすぐ使える。

〇発酵力が強い。

〇国産小麦と相性が良い。

〇砂糖を入れなくてもほんのり甘いパンが焼ける。

等の特徴があります。

インスタントドライイーストとほぼ同等の発酵力を持ち、種起こしなどの事前準備もなく水に溶かせば使用できる酵母になります。
ただ、イーストと同じように使えるのか?と言われると少し注意すべき点があります。
イーストとの違いを比較しながら、白神こだま酵母の扱いについて知っていきましょう。

紹介中の商品

便利な水溶性。温度管理がポイント!

白神こだま酵母は長い時間をかけて種起こし等をする必要はなく、水に溶かせば使用することが出来ます。
ただ、インスタントドライイーストのように粉の方に直接振りかけて使うのは要注意!

予め溶かして使わないと、ダマになり上手く生地に混ざらない原因になります。
溶かす水の温度は30℃~35℃程の温度の水で溶かしてあげましょう。

ちなみに粉に直接混ぜて使えるタイプの
白神こだま酵母ドライGという商品もあります。

白神こだま酵母仕込みのパンは、捏ね上げ温度をイースト仕込みのパンより少し高めに設定するのが基本です。
イースト仕込みのパンは大体26~28℃程の捏ね上げ温度を目指しますが、
白神こだま酵母仕込みのパンは30℃程を目指します。30℃で50~60分の発酵…というのが基本の発酵工程です。
ただ、こちらはあくまで「基本」なので、温度が下がれば発酵時間を延ばすなど臨機応変に対応します。
白神こだま酵母はなぜ捏ね上げ温度を高くするとよく育つのか?は、販売元でも未解明だそうです…!

砂糖を入れずに優しい甘さのパンになる

白神こだま酵母は東北出身の酵母。冬の寒く過酷な環境を生き抜くために得た特性があります。
それは「トレハロースを豊富に含んでいる」ということです。
トレハロースは天然の糖質で、自然界においては酵母、カビ、海藻類、砂漠のシダ類や植物の種子など幅広く存在していて凍結や乾燥、高浸透に強いという性質があります。
白神こだま酵母は他酵母と比べて約4~5倍のトレハロースを含有しているそうです。
それは凍らないように、乾燥しないように…過酷な環境で自分自身を守るために酵母自身が蓄えた産物。それにより良い効果がパンに作用します。
トレハロースは砂糖の45%程の甘味度。食品に作用させると乾燥や風味の劣化を防ぐ役割があります。
白神こだま酵母は沢山のトレハロースを含有している為、焼くパンは砂糖を入れなくてもほんのり甘く、パサついて固くなるのを遅らせることが出来ます。

ちなみに冷凍にも強い性質があり、通常イースト仕込みのパン生地は冷凍してしまうと著しく損傷を受けてしまいますが、白神こだま酵母仕込みのパン生地はそれよりも冷凍状態に耐えることが出来ます。

白神こだま酵母とイーストの焼成比較

国産小麦を使ったパン生地を白神こだま酵母とインスタントドライイーストで焼き比べる

白神こだま酵母は国産小麦と相性が良いというメリットがあります。
本当に国産小麦と相性が良いのか?インスタントドライイースト使用の生地と比較してみました。
レシピは白神こだま酵母でつくる基本のレーズンパンで作ります。
配合は同じで、使用小麦は国産小麦の春よ恋。同じ環境にて仕込んでみました。


まず、捏ねあがりの写真です。

インスタントドライイースト仕込みの生地

捏ね時間は同じですが、
イースト仕込みのパン生地は少し表面がざらざら

白神こだま酵母仕込みの生地

白神こだま酵母仕込みのパン生地はつるんとしています。

次に、一次発酵を同時間にて進めた時の状態です。

左:インスタントドライイースト仕込み 右:白神こだま酵母仕込み

左側がイースト仕込み、右側が白神こだま酵母仕込みです。
イースト生地の方が膨らんでいるのが分かります。白神こだま酵母生地はあとちょっと…!な印象ですね。


最後に、焼き上がりの写真です。

左:インスタントドライイースト仕込み 右:白神こだま酵母仕込み

発酵はイーストの方が進みは早くふっくらしていたのに、焼き上がりは白神こだま酵母の方がふっくらしています。
焼き色も白神こだま酵母のパンのほうが濃く色づいています。
これはいったい何が起こっているのでしょう??
国産小麦は海外小麦と比べてグルテン量が少ないものが多く、デリケートな部分があります。
時間をかけて生地を繋げてあげたり、生地に合った捏ね方をしてグルテンを繋げてあげる必要があるのですが、繋がる前に酵母が沢山活動してしまうと、発酵により出てくるアルコールや有機酸が生地を柔らかくほぐしてしまうので、結果的に生地の繋がりは悪くなります。


イースト仕込みのパンの捏ね上がりがざらざらしていたのは、イーストが捏ね上がる前に沢山活動してしまったから。国産小麦でイーストを使う際は、もう少しイースト量を減らした方が良さそうです。
白神こだま酵母の良さは、ここから分かるように「適度な発酵スピードの遅さ」。
イースト仕込みの生地より若干発酵の進みが遅いために、国産小麦の生地が繋がってきた頃に発酵活動が活発になるので、生地の繋がりと発酵活動のタイミングが合っている事から、国産小麦と相性が良いと言われています。
しっかり繋げた生地を発酵させたのでよく膨らみ、発酵見極めのタイミングも良く白神こだま酵母仕込みのパンは焼き色も濃く焼けましたが、イースト仕込みのパンは生地が繋がる前にどんどん発酵が進み、繋がりも弱く生地の糖分も沢山消費してしまった為、焼き色が薄く小さく焼けたのだと思います。
(これはイーストの量を落としてあげることでタイミングを合わせてあげる事が出来ます!イーストは発酵力抜群なサラブレッドなので、量に注意ですね)

おすすめ商品

国産の小麦と酵母で、優しい甘さのパン作りを

白神こだま酵母は、日本の世界自然遺産・白神山地より生まれた酵母。
簡単に使えて、トレハロースをたっぷり含んでいるのでパンの老化が遅く、ほんのり甘いパンが焼けます。
国産小麦と相性が良いというメリットも。国産の酵母、国産小麦でパンを手作りすることは地産地消の取り組みにも貢献できますし、何より安心・安全で美味しい!
是非、国産小麦を手に入れたら白神こだま酵母でパンを焼いてみてください。使う酵母でパンの仕上がりも変わる面白さを感じる事が出来ると思います。

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コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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