コーティングチョコレートの使い方 基本編|手作りバレンタイン

お菓子作り

こんにちは。お菓子教室主催・熊谷裕子です。

今回は「コーティングチョコレート」について、ちょっと詳しくご紹介します。上手に使いこなせれば初心者さんでもとっても簡単、しかもお店のみたいに素敵でおいしいチョコ菓子が作れますよ。使い方やレシピだけでなく、使った残りの保存や再利用法など、私がおすすめしたいお菓子作りの小さなコツもあわせてご紹介します。

コーティングチョコレートは何からできている? その用途は?

「コーティングチョコレート」の名の通り、サラッと溶けてコーティングしやすいように調整して作られたチョコレートです。ココアをベースに砂糖、植物油脂、乳化剤などをブレンドしてあり、溶かしてお菓子にかけたり浸すだけで簡単にコーティングすることができるチョコレート製品で「洋生チョコレート」「パータグラッセ」と記されることもあります。

その特徴は、

テンパリング(温度調整)する必要がなく、温めて溶かすだけで簡単にコーティングができ、冷やすと光沢よく固まる。

*溶かすと流動性があり(サラサラしている)、パウンドケーキやクッキー、トリュフなどを薄くコーティングすることができる。

という簡単・便利素材!なのです。チョコレートというと扱いが難しい、テンパリングは面倒…というイメージがありますが、初心者さんでも安心してチョコ菓子づくりができますね。ただしムースやガナッシュにしたり、ガトーショコラ、ブラウニーのような焼き生地に溶かして練り込んだりするには不向きです。基本的には「コーティング用」のチョコレートとして使いましょう。

コーティングチョコレートの種類と保存について

コーティングチョコレートもクーベルチュールチョコレートと同様に、カカオ風味しっかりのビタータイプ、マイルドなミルクタイプ、ミルキーなホワイトタイプがあります。さらにホワイトタイプにフレーバーや色をつけた抹茶、ストロベリー、レモンなどのフレーバータイプもあります。コーティングするお菓子の風味やご自身の好み、デザインに合わせて好きなフレーバーを選びましょう。

保管はクーベルチュールチョコレートと同様に直射日光を避け、涼しい乾燥している場所で保存するようにします(夏場は冷蔵庫がおすすめ)。

高温多湿におくと、変質してなめらかに溶けなくなったりブルームが出たりするので注意。
開封したらにおいがつかないように、しっかりと密閉袋などに入れるとベストです。

正しい溶かし方と注意点

簡単素材とはいえ、チョコレートにはかわりないので、温度にはちょっぴりデリケートです。

正しい使い方をマスターしましょう。

  1. 湯せんの準備をする。鍋に半分弱くらい水を入れ、火にかける。
  2. ふつふつと沸き始めたら火を止める。コーティングチョコレートを入れたボウルをのせる。
    *鍋とボウル(金属製)は同じくらいの直径がおすすめ。お湯や湯気がチョコにかからないようにするため。
  3. 溶け始めたらゴムベラなどで静かに混ぜ、完全に溶かす。温かい状態(35~40度くらい)で使用する。
  4. 冷めてきて固まってきたら同様に温めなおして使う。

ポイントは高温にしないこと、水分を入れないことです。

直火で溶かしたりして高温にすると、含まれる糖分が焦げたりして、ざらつきが出来たりなめらかな状態に溶けなくなります。そうなるともうもとに戻せないので気をつけましょう!

湯せんでも火をつけたまま湯せんにすると温度が高くなってしまうので注意。

また湯せんのお湯が絶対に入らないようにしましょう。チョコレートはほぼ「油分」でできているので、水分とはとても相性が悪いのです。

少しでも水が入ってしまうとブルームが出たりきれいなコーティングにならないので注意してくださいね。

×高温にしすぎてざらつきが・・!

×高温にしすぎてざらつきが・・!

×水が入るとドロッとしてきれいににコーティングできない・・・!

×水が入るとドロッとしてきれいににコーティングできない・・・!

もっと手軽な溶かし方は?

湯せんは面倒とか、作業中冷めて固まってきてしまったので少しだけ温めなおしたい、というとき、もっと手軽に溶かす方法は?

手軽なのは電子レンジで溶かす方法です。レンジ対応の容器(ガラスやプラスチック)に入れ、レンジで温めて溶かせば、お湯を沸かす手間もなく、水分や蒸気がチョコに入ることもありません。ただしレンジにかけすぎるとあっという間に温度が高くなりすぎ、焦がしてしまうので注意! 数秒ごとに様子を見ましょう。

少し溶け始めたら全体を混ぜ、また数秒かけては混ぜてその余熱で溶かすようにします。

溶け始めたくらいで一度混ぜ、余熱で溶かしましょう。

溶け始めたくらいで一度混ぜ、余熱で溶かしましょう。

*初心者さんは「湯せん」がおすすめです!

*初心者さんは「湯せん」がおすすめです!

上手なコーティングのコツは?

まずは簡単! ひたすだけ

クッキーやマドレーヌ、ドライフルーツなどをひたしてコーティングするときは、ひたした後余分をよく落とし、底面をボウルのふちなどですり切ってからクッキングペーパーなどに並べ、冷蔵庫で冷やし固めます。

余分をよく落とさないとペーパーの上でチョコが広がってしまうので注意。

途中チョコレートが冷めてくると濃度が増し、コーティングが厚がけになりやすいので、もう一度温めてよく溶かしてから作業を続けるようにします。

チョコレートが固まる前にトッピングをしたり、ビニール製の絞り袋に入れ、先を少しカットして細いラインを絞るなど、デコレーションも工夫してみましょう。

表側を上にしてひたし、引き上げる。

表側を上にしてひたし、引き上げる。

裏側をボウルのふちですり切り、余分を落とす。

裏側をボウルのふちですり切り、余分を落とす。

ベーキングペーパーに並べて冷やし固める。

ベーキングペーパーに並べて冷やし固める。

×よくすり切らないと余分が流れてしまう

×よくすり切らないと余分が流れてしまう

コーティングチョコを使った参考レシピ

ケーキをコーティングする

パウンドケーキの上面に流しかけてコーティングするときは、クッキングペーパーの上にのせたケーキの上面から適量を流しかけ、側面にたらりと流れ落ちる状態にします。

好みでドライフルーツやナッツをトッピングしてみましょう。

スプーンなどで適量かけます。

スプーンなどで適量かけます。

全体をコーティングするときは多めにコーティングチョコレートを準備し、一気に流しかけるように。側面や下のほうにかかっていない部分があればすぐにパレットなどで流れ落ちたチョコレートをすくってかけましょう。

チョコレートは徐々に固まってくるので手早く作業するのがコツです。流れ落ちたチョコが固まる前にお皿などに移動してからトッピングなどをします。

一気に流しかけるのがコツ!

一気に流しかけるのがコツ!

サイドのかかってないところをパレットでカバー。

サイドのかかってないところをパレットでカバー。

かかり残りがないように。

かかり残りがないように。

流れ落ちたチョコが固まる前に別のペーパーにそっと移して。

流れ落ちたチョコが固まる前に別のペーパーにそっと移して。

きれいにコーティングできました!

きれいにコーティングできました!

好みで線描きをしたり、トッピングしたり。

好みで線描きをしたり、トッピングしたり。


同じケーキでもデコレーションでこんなにイメージが変わります。

ポイントは手早く作業することです。チョコレートは徐々に固まってくるので、ずっとパレットで触っているとザラザラな仕上がりに・・・・!

また土台のケーキが冷えているとすぐにコーティングチョコレートが固まってきて、ムラができたり厚がけになってしまうので、必ず常温に戻してから作業しましょう

二度がけも同様にムラや厚がけの原因になるのでNGです。

×手早く作業しないと固まってきてきれいに仕上がりません。

×手早く作業しないと固まってきて きれいに仕上がりません。

×厚がけになるとチョコの味や食感が強すぎてしまうことも

×厚がけになるとチョコの味や食感が
強すぎてしまうことも

コーティングチョコを使った参考レシピ

一度溶かしたコーティングチョコレート、保存や再利用できる?

クッキーやマドレーヌを浸したあとや、ケーキにかけて流れ落ちた余分のコーティングチョコレート、一度溶かして使ったあとも、また再利用できます!

私のおすすめは、ボウルに残ったチョコは一度温めて溶かし、バットにクッキングペーパーを敷いた上に平らに流します(薄くしておくほうが、再度溶かすときや保管が便利になります)。

冷蔵庫で冷やし固めたらペーパーからはがし、適宜割って密閉袋に入れ、冷暗所や冷蔵庫で保管します。

クッキングペーパーに流れ落ちたチョコレートもそのまま冷やし固め、同様に密閉袋で保管しましょう。もしクッキーやケーキの破片が混ざっていたら、一度溶かして茶こしで濾してから固めて保管すればOK。使うときはまた溶かして同様につかえますよ。

一度溶かしてペーパーに平らに流し、冷やし固める。

一度溶かしてペーパーに平らに流し、冷やし固める。

固まったら適宜割って密閉袋に。冷暗所または冷蔵庫で保管します。



流れ落ちたコーティングチョコも固めて保管すれば再利用可能に。

お菓子の破片などが混ざっているときは、一度液状に溶かし、茶こしで濾しましょう。

製菓用チョコレート「クーベルチュールチョコレート」でコーティングはできないの?

もしクーベルチュールチョコレートで焼き菓子をコーティングすると・・・

所定のテンパリング(温度調整)をしないと光沢よく固まらなかったり、ブルーム(白っぽく油が浮き出る状態)が出てしまいます。また溶かしたときの濃度(とろみ)が強いので、コーティングが厚くなりやすい上に、冷え固まったときコーティングチョコレートよりも固く固まるので、お菓子をカットしたとき表面のチョコが割れてはがれてしまったり、食感が固く強すぎたりします。

やはり焼き菓子のコーティングには、コーティングチョコレートのほうが簡単で適しています。

×カットしてみるとコーティングの厚すぎたり・・・
×クーベルチュールチョコを溶かしてかけると、 冷え固まったときブルームが出たりフォルムがきれいに出なかったり・・・!
×厚がけになってしまいます。
×厚がけになってしまいます。
×カットすると固いのでうまく切れない・・・
×カットすると固いのでうまく切れない…

次回 応用編ではコーティングチョコレートをさらにもっとおいしく、幅広いメニューに応用するコツをご紹介します。お楽しみに!

コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生

熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。
文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。