こんにちは。洋菓子講師の舘野です。今回のテーマは焼き菓子に混ぜて使う「チョコ」です。
「チョコチップ」や「チャンクチョコ」など皆さんもパンやお菓子の練り込みに使ったことがあるかと思います。皆さんはどんなふうにチョコを選んで使っていますか?
「溶けにくさ」「味わい」「粒の大きさ」など、比較すると違いがあり、向いているお菓子も少し変わってきます。
今回は「溶けにくいチョコチップ」「チョコチップ」「チャンクチョコ」の他にクーベルチュールの「ミルク」「スイート」を加えた5種類のチョコで味比べ・焼き比べをして、結果をみなさんと共有したいと思います。材料選びの参考にしてみてくださいね。
5種類のチョコレートを比較
はじめに比較するチョコを紹介します。原材料は比較しやすくするために産地・アレルギー表示は割愛しました。
準チョコレート | - |
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原材料 | 砂糖、植物油脂、乳糖、ココアパウダー、全粉乳、 カカオマス/乳化剤、香料 |
チョコレート | - |
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原材料 | 砂糖、カカオマス、ココアバター、全粉乳、植物油脂、 ココアパウダー、脱脂粉乳/乳化剤、香料 |
チョコレート | カカオ分40% |
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原材料 | 砂糖、ココアバター、全粉乳、カカオマス/乳化剤、 香料 |
チョコレート | カカオ分44% |
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原材料 | 砂糖、ココアバター、全粉乳、カカオマス/乳化剤、 香料 |
チョコレート | カカオ分56% |
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原材料 | 砂糖、カカオマス、ココアバター、全粉乳/乳化剤、 香料 |
比較① そのまま食べてみる
比較するチョコを同量づつ並べた写真です。同じ重さでも体積、チョコの粒の数が大きく違っています。
まずは常温のチョコをそのまま食べて味わいを比較します。
「溶けにくいチョコチップ」は焼成することで本領を発揮するのか、そのままではやや味が分かりにくかったです。その他のチョコレートはそのまま食べても味わいが感じられ、「クーベルチュールミルク・スイート」はボンボンショコラなどにも使用できる品質なので、特に味わい・口どけの良さが際立ちました。
比較② クッキーに混ぜて焼成
アイスボックスクッキーに混ぜて焼成し比較します。
クッキーは天板に接地している面積が広いので、チョコに強く火が入るお菓子です。
生地100gに対してチョコを25g混ぜました。(チャンクチョコは粒が大きいので半分にカットして使用しました。)
冷凍して1cmの厚みにカット、160℃で20分焼成しました。
「溶けにくいチョコチップ」はチョコが溶けにくいので焼成前後での変化が少なく、見た目の美しさが際立ちました。
「チョコチップ」「チャンクチョコ」は焼成により多少溶けますが、大きな問題には感じません。
クッキーとの相性がよく、どちらもチョコクッキーらしい美味しさが存分に感じられました。
「クーベルチュール ミルク/スイート」はどちらも口どけの良いチョコの美味しさを感じられました。ただし、焼成によりビター感が増し風味の変化を感じたので、強い焼成には適していないかもしれません。クッキーの場合は、しっとりしたアメリカンクッキーのような短時間焼成タイプの方が向いていそうです。
また「チャンクチョコ」「クーベルチュール ミルク/スイート」はチョコの粒が大きい為、クッキーをカットする際にクッキーの丸型が崩れやすく、チョコの断面がボロボロしやすいです。丸めるタイプのクッキーの方が向いていそうです。
結果一覧 | 味わい | 食感 | 見た目 |
溶けにくい チョコチップ | チョコの味は強く主張せず、クッキーの味を引き立てる。軽やかに食べられる。 | チョコのカリッポリッとした歯ごたえが続く。 | 焼く前との変化が少ない。包装した袋は汚れにくい。 |
チョコチップ | チョコとクッキーの味がどちらもよく感じられ「ザ・チョコチップクッキー」の味わい。 程よい甘さで食べやすい。 | チョコはカリっとした歯ごたえのあと、じょじょに溶けていく。 | チョコの部分が少し溶けて、包装した袋に少し付着する。 |
チャンクチョコ | 存在感あるチョコのかたまりが入ったクッキー。チョコとクッキーそれぞれの美味しさが楽しめる。 | チョコのなめらかさを十分味わえる。 サクサクしたクッキーとのコントラストが楽しめる。 | 粒が大きいのでばらつきは出やすい。包装した袋に少し付着する。 |
クーベルチュール ミルク | ミルクチョコの優しい味わい。焼成によってビター感が増した。口溶けが良いので強く主張せず、クッキーの味を引き立てる。 | チョコはカリっとした歯ごたえのあと、スッと溶ける。 | チョコの部分にやや溶けが見られるが、包装した袋は汚れにくい。 |
クーベルチュール スイート | 焼成によってビター感が増した。カカオを感じる、濃厚な大人の味わい。 | チョコはなめらかに溶けていく。 | チョコの部分が少し溶けて、冷めてもかたまりにくく、包装した袋に付着しやすい。 |
比較③ マフィンに混ぜて焼成
次に、マフィン生地の表面にチョコをトッピング&中にも混ぜ込み焼成し比較します。
水分のある生地に接地しているので、クッキーよりもチョコへの火の入り方は優しいです。
マフィン生地はオールイン法(混ぜるだけの生地)で作成し、生地50gに対してトッピングのチョコは5g、混ぜ込みは7gです。マフィン型で180℃、20分焼成しました。
生地に混ぜたチョコは焼成による味の変化が少なく、クッキーでの比較時よりもそのまま食べた味に近いです。特に「クーベルチュール ミルク/スイート」はクッキーでの比較時は多少の焦げ感が気になりましたが、マフィンではほとんど気になりませんでした。
焼いた当日、常温で冷ましてからカットし、断面の様子も比較しました。
「溶けにくいチョコチップ」以外は、包丁に溶けたチョコが付着し、カット面にもチョコが付着しました。今回は焼成日に常温状態でカットしましたが、冷蔵庫で少し冷やしてからカットすると付着の程度が抑えられると思います。
結果一覧 | 味わい | 食感 | 見た目 |
溶けにくい チョコチップ | チョコの味はややビター。味わい・甘さは強く主張せず、マフィンの味を引き立てる。軽やかに食べられる。 | <トッピングのチョコ> カリッと食感がある。 <混ぜたチョコ> 多少柔らかさを感じる。 | 焼成前後での見た目の変化は少ない。断面もきれい。 |
チョコチップ | チョコの味がしっかり感じられる。「チョコチップ入りマフィン」という名前から想像した通りの味わい。 | <トッピングのチョコ> ややカリッと食感がある。 <混ぜたチョコ> 口溶けよく柔らかい。 | 焼成前後での見た目の変化は少ない。断面はややチョコが付着。 |
チャンクチョコ | 存在感あるチョコのかたまりが具として入っている。 チョコとマフィンそれぞれの美味しさが楽しめる。 | <トッピングのチョコ> 焼きチョコのような食べ応え。 <混ぜたチョコ> なめらかさを一番感じられる。 | マフィンの中にところどころチョコが点在。断面はチョコが付着。 |
クーベルチュール ミルク | ミルクチョコの優しい味わい。口溶けが良いので強く主張せず、マフィンの味を引き立てる。 | <トッピングのチョコ> ややカリッと食感がある。 <混ぜたチョコ> 口溶けよく柔らかい。 | トッピングのチョコは変化が少ないが、混ぜたチョコはやや溶けている。断面はややチョコが付着。 |
クーベルチュール スイート | カカオを感じる、濃厚な大人の味わい。 チョコの味わいが強く、マフィンの味は控えめ。 | <トッピングのチョコ> ややカリッと食感がある。 <混ぜたチョコ> ややねっとり濃厚に感じる。 | トッピングのチョコは溶け広がり、混ぜたチョコも溶けている。チョコは冷えても固まりにくく断面はチョコが付着。 |
まとめ
3種類の比較結果をもとに、それぞれのチョコレートの魅力やおすすめのお菓子を考えてみます。
「溶けにくいチョコチップ」&「チョコチップ」
「溶けにくいチョコチップ」「チョコチップ」は幅広く焼き菓子の種類を選ばず使用できます。
▼「溶けにくいチョコチップ」
「溶けにくいチョコチップ」は見た目や作業面が特に優れていて、溶けにくいので断面が美しく仕上がります。例えばパウンドケーキなどカットするお菓子にもおすすめです。包装した袋にも付着しにくいです。他のチョコに比べるとチョコの味が強くは主張しないので、ココアベースの生地で使ってみるのもおすすめです。
▼「チョコチップ」
「チョコチップ」は「これぞチョコチップ!」な王道の美味しさが魅力です。見た目や作業面は「溶けにくいチョコチップ」に比べると少し気遣いが必要ですが、さほど問題はないと思います。個人的にはチョコレートはビター派ですが、このチョコチップは程よい甘さ・ミルク感でとても美味しく食べられました。
「チャンクチョコ」
「チャンクチョコ」はチョコのごろごろ感が魅力です。焼いても多少なめらかさが残るのでチョコレートらしい味・食感が楽しめます。粒が大きいので大きめのクッキーや、カット不要の焼きっぱなしの焼き菓子(マフィン・スコーンなど)がおすすめです。
「クーベルチュール ミルク/スイート」
「クーベルチュール ミルク/スイート」は前述のチョコ製品よりも高価なこともあり、味わいに優れています。一方強い火が入ってしまうとせっかくの美味しさが減ってしまいます。
生チョコなど火を通さないお菓子、溶かして生地に混ぜる焼き菓子(ガトーショコラ、ブラウニーなど)、クッキーであればしっとりしたアメリカンクッキーなど長時間焼かないものがおすすめです。
チョコチップなどの前述の製品はどれも「スイートチョコ」寄りの味なのでチョコのミルク感がお好きな方には「クーベルチュール ミルク」がおすすめです。
「クーベルチュール スイート」は焼成すると特に、濃厚なカカオ感が感じられ、ワンランク上の大人の味わいになります。
終わりに
そのまま食べて美味しいと感じたお気に入りのチョコを、クッキーに入れて焼いてみたときに、あれ?とあまり美味しく仕上がらなかった経験があり、クッキーにはどんなチョコが向いているのかな?と今回の比較をしてみました。
チョコチップやチャンクチョコが焼き菓子に向いていることは知っていましたが、子ども向けの味なのかな?と思い込みあまり使ったことがありませんでした。今回実際に比較してみて、クーベルチュールの方向性とは異なるものの、魅力あふれるおいしいチョコだと実感し、どんなお菓子を作ってみようかな?とわくわくしています。
今回のコラムが皆さまのお菓子作り・パン作りの参考になれば幸いです。
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コラム執筆:舘野真里さん
製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。