こんにちは。洋菓子講師の舘野です。
みなさん、シフォンケーキはお好きですか?今回のコラムテーマはシフォンケーキの「メレンゲ」です。
シフォンケーキは材料選びやレシピによって仕上がりが変わるのはもちろんですが、メレンゲ作りがとても重要です。今回はそれにまつわる2つのトピックをご紹介します。
まずは、夏場にメレンゲを安定して作るための秘訣をご紹介します。
夏場は卵が水っぽくなる&気温が高いことから、他の季節よりもシフォンケーキ作りの難易度が少し上がります。
「思い通り焼けなかった」「これから焼こうと思っている」という方は参考にしてみてください。
次に「メレンゲの立て加減」による、焼き上がりの違いをご紹介します。
みなさんは、シフォンケーキのメレンゲの立て加減に迷ったことはありませんか?
ゆるかったり、かたかったりすると、膨らみや食感がどう変化するのでしょう?
ふわふわになったり、しっとりしたり、結果を見て自分の好みはどれかなと想像して、参考にしてみてくださいね。
夏場のメレンゲ作りの注意点
まずは夏場のメレンゲを作る際、注意すべきポイントをお伝えします。
他の季節と比べてどんなことが違ってくるのでしょうか。
1.卵が水っぽい
夏場に卵を割って「なんだか水っぽく、サラサラとしているな」と思ったことはありませんか?
暑くて鶏が水をたくさん飲む為、卵白に含まれる水分が実際に増えたり、コシがなくなっているのだそうです。
サラサラとした卵白はとろりとした卵白に比べて泡立ちやすいのですが、泡の持続力がない為、泡が消えやすく注意が必要です。
2.卵白の温度
メレンゲを使うレシピで「卵白は冷蔵庫で冷やしておく」という注意書きを見たことはありますか?メレンゲを作る時の卵白の「温度」はとても大切です。
卵白は、温度が高いほど泡立ちやすいものの、コシがなくもろい、持続力のない泡となります。そして、温度が低いほど泡立ちにくいですが、コシのある力強い泡になります。室温が高いとメレンゲを立てている間にどんどん卵白の温度が上がってしまうので注意が必要です。
夏場のメレンゲを安定させる秘訣!
お伝えした注意点をカバーして、安定したメレンゲを作る秘訣をご紹介します。
ちょっと面倒に感じるかもしれないのですが、大きな効果がありますので試しに取り入れてみてください。
1.乾燥卵白を加える
メレンゲにする卵白の重さの1〜2%を加えます。
使い方は、乾燥卵白をグラニュー糖(メレンゲ作りに使う分)によく混ぜておくだけ。
泡立て方、グラニュー糖の加え方などは普段通りです。例えば100gの卵白でメレンゲを作る場合、乾燥卵白を1〜2g加えます。卵白が濃くなるので、しっかりとした泡を作りやすくなります。
乾燥卵白の量を入れすぎると、シフォンケーキの食感が力強くなりすぎるので上記の量がおすすめです。
2.卵白をしっかり冷やす&氷水に当てながら泡立てる
夏場は泡立てる前の卵白を冷蔵庫で冷やすだけでなく、短い時間冷凍庫に入れて、ボールの周りが少しシャリっとしてくるまでよく冷やすのがおすすめです。
凍りすぎないよう、数分ごとにこまめに様子を見てください。低温でスタートできれば泡立て終わりまで低い温度をキープしやすくなります。
また、氷水につけて泡立てると温度上昇を防げるのでおすすめです。
メレンゲの立て加減によるシフォンケーキの焼き上がりの違いとは?
ここからは、メレンゲの立て加減を変えたシフォンケーキを実際に作ってみて、見た目の仕上がりや食べた際の違いを比べた結果をご紹介したいと思います。
シフォンケーキの詳しい作り方はこちらを参考にしてください。
先ほどご紹介したメレンゲを安定させる秘訣を取り入れて作りました。
乾燥卵白は卵白に対して1.5%加えました。粉はドルチェを使用しました。
レシピによってシフォンケーキのメレンゲの立て加減は多少異なりますが、今回は基本(一般的な立て加減)・かため・ゆるめの3つを作って比較しました。
1.基本(一般的な立て加減)
ツノは軽く立ち、おじぎはしていません。全体的にふわふわとしたメレンゲです。
メレンゲのしなやかさが無くなってきて、かたい手応えを感じはじめたら止めました。
2.かため
ツノがピン立ち、全体的にモコモコとした、かたく力強いメレンゲです。
ツノが立ってからも泡立て続けましたが、ボソボソになる前に止めました。
3.ゆるめ
ツノはおじぎしています。全体的に手応えのないしなやかなメレンゲです。
メレンゲを作り終わってからの状態は3つを比較しながらご紹介していきます。
卵黄生地と混ぜているとき
基本 | 卵黄生地とメレンゲはスムーズに混ざります。 |
かため | 卵黄生地に対してメレンゲがかたいのでほぐしながら混ぜます。 |
ゆるめ | 卵黄生地とメレンゲはスムーズに混ざります。 |
生地の混ぜ終わり・型に流した状態
基本 | ゆるやかですが、ふんわり感もあります。型にスムーズに流れました。表面は少しならせば平らになります。 |
かため | とてもふんわりしています。型には流れましたが、表面はしっかりとならす必要があります。 |
ゆるめ | とろとろとして、ふんわり感はありません。型に流すと自然に平らになりました。 |
焼き上がり・冷めた後
基 本 | 一番膨らみました。少し焼き縮みがあります。 |
かため | 膨らみは基本とゆるめの間くらいです。 焼き縮みが控えめでした。ふわふわしている分、火の通りがスムーズでよく焼けた為だと考えます。 |
ゆるめ | 一番膨らみが控えめです。 |
焼いた当日にシフォンナイフを使って型から外して冷蔵保存し、翌日にカットして見た目や味わいを比較しました。
見た目
基本 | ふわふわときれいに焼けました。 |
かため | ふわふわときれいに焼けました。 |
ゆるめ | 底上げ(表面にくる部分が凹んでしまう)が半分くらいの面積で発生しました。 目詰まり(底にくる部分が詰まる)の程度も強いです。 |
味わい
違いはほぼありませんでした。
ゆるめは火の通りが遅く、かためは火の通りが早い傾向がありますが、今回は焼成時間をそろえたので、わずかに卵感の濃淡は感じました。
食感
基本 | ふわふわ感を感じた後、しっとりとまとまり、口どけが良いです。 |
かため | 一番ふわふわ感を長く楽しめます。 その分、しっとりとまとまる感じはやや少ないです。 |
ゆるめ | 基本よりもふわふわ感が弱く、すぐに口の中でしっとりとまとまります。 |
こちらの写真にあるのは、それぞれのシフォンを強めの力で押した跡です。
かため>基本>ゆるめの順に押した跡が戻ってきています。ふわふわ感=押されたものが戻る力なので、シフォンを口に含んだ時も同じようなイメージになります。
まとめ
まず、ゆるめのメレンゲで作ったシフォンは一般的に「失敗」とされる仕上がりでした。
ゆるく、泡が消えやすい力のないメレンゲは、卵黄生地と混ぜた際にふんわり感が残らず、とろとろとしてしまい、焼き上がりが底上げしやすいです。
次に、基本とかためを比較します。どちらも焼き上がりに大きな問題はなかったので、食感の「ふわふわ」と「ふわふわ&しっとり」のどちらが好きかで、作り分けても良いと感じました。
かためのメレンゲで作ったシフォンは焼き上がりがしっかりとしているので、包装するときや持ち運ぶ際に少し指で押したりしてしまっても戻りが良く、安心できるなと思いました。
ただし、かためのメレンゲを目指すには、メレンゲがボソボソするまで泡立てないことが大切です。夏場のメレンゲ作りは不安定になりやすいので特に注意が必要です。
1年中、好みのシフォンケーキが作れるように今回のテスト結果や冒頭でご紹介した「夏場のメレンゲを安定させる秘訣!」を参考にしてみてください。
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メレンゲ作りをマスターしよう!夏のおすすめレシピ
夏のメレンゲ作りは注意が必要!と繰り返しお伝えしましたが、備えがあれば憂いは不要です。
乾燥卵白を取り入れたり温度に注意して、夏もシフォンケーキやメレンゲを使ったお菓子作りを楽しんでくださいね。
終わりに
いかがでしたか?
私は1年ほど前から「シフォンケーキがうまく焼けないな」と思うことが多くなり、あれこれ試す中で、シフォンケーキの基本と応用を見直すようになりました。
正直なところ、普段からうまく焼けている方は、あまりスタイルは変えずに今までどおり焼くのが一番なのかな?と思います。
好奇心の強い方や、もっとうまく焼きたい!と考えている方にとって、今回のコラムが参考になれば幸いです。
コラム執筆:舘野真里さん
製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。