フィナンシェとマドレーヌの違いとは?|基本レシピとアレンジレシピ3選ご紹介

お菓子作り

こんにちは! 熊谷裕子です。今回は「フィナンシェ」についてご紹介します。

フィナンシェはフランス発祥のお菓子ですが、今では日本のパティスリーでもマドレーヌと並んで必ず置いている人気の焼き菓子です。その起源や原材料、作り方ポイント、アレンジレシピなどを詳しくご紹介します。ぜひお好みのフィナンシェレシピを探してくださいね。

フィナンシェとは?

フィナンシェはフワンス・ロレーヌ地方の伝統菓子で、アーモンドパウダーを主体に焦がしバター、砂糖、卵白、薄力粉を基本材料としたシンプルな焼き菓子です。主張が強すぎない中にもしっとりとしてリッチな味わいは、コーヒーや紅茶にぴったり。作り方も簡単で、ギフトにもしやすいポピュラーな焼き菓子です。

フィナンシェの起源は?

フィナンシェの起源は諸説ありますが、最も有名なのは17世紀、フランス北東部のロレーヌ地方の聖母訪問会の修道女が作っていた菓子だという説。

当時教会に飾られた宗教絵画で主流だったのは「テンペラ画」というもので、絵の具に卵黄を使用していたため、大量の卵白が余りました。

そこで修道女たちは、その余った卵白を使ってお菓子を焼き、それは聖母訪問会(ヴィジタシオン)にちなんで「ヴィジタンディーヌ」と呼ばれ、フィナンシェの原型とされています。当時はまだバターやアーモンドは大変貴重だったので、庶民的なのものではなく、教会など一部だけで作られていた特別なお菓子だったのでしょう。

フィナンシェの名前の由来は? なぜ長方形?

フィナンシェ(Financier)はフランス語で「金融家」という意味。
19世紀なってパリの金融街の近くで菓子家を営む職人が、先のヴィジタンディーヌをもとにして「金塊」「金の延べ棒」をイメージしたお菓子を「フィナンシェ」として売り出しました。黄金色に焼き上げられたフィナンシェは金融街で働く人々にとって縁起がよいとされ、また忙しい合間にも手軽に片手でつまんで食べれる「長方形」になったのだそうです。

フィナンシェに似たお菓子との違いは?

フィナンシェにとても似ているお菓子に「ヴィジタンディーヌ」「フリアン」があります。

先述したようにヴィジタンディーヌはフィナンシェのもとになったお菓子で、その違いは「ヴィジタンディーヌは卵白を泡立てて作り、形も丸型や楕円型、花型などで焼く」とされています。

また「フリアン」は「美食家・おいしいもの」というのが語源ですが、長方形で焼くのがフィナンシェと呼ばれるのに対し、同じ生地でも正方形で焼くと「フリアン」と呼ばれることが多いようです。要は「形の違い!」だそう。

ただどちらもフィナンシェとの区別はあいまいなことも多く、卵白を泡立てないヴィジタンディーヌのレシピもあったり、正方形でないフリアンもあったり。いずれもアーモンドたっぷりのリッチな焼き菓子であることには変わりありませんね。

マドレーヌとの違いは?

お菓子屋さんでは決まったようにフィナンシェと並んで売られているマドレーヌ。形は違えどちょっと似てる・・?そのマドレーヌとの違いは何でしょう。どちらも「ドゥミ・セック」と呼ばれる半生焼き菓子ですが、その材料、形に着目しみると・・・・

フィナンシェ
おもな材料焦がしバター、卵白、アーモンドパウダー、砂糖、薄力粉、蜂蜜など
金塊をかたどった 長方形
マドレーヌ
おもな材料溶かしバター、全卵、薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、蜂蜜など
貝殻型

というように、フィナンシェの注目ポイントは「焦がしバター」「卵白」「アーモンドパウダー」。

マドレーヌはやわらかい風味の「溶かしバター」「全卵」「ベーキングパウダー(膨らし粉)入りの薄力粉」が主体で作られるので、気泡が大きく、やさしくふんわりとした風味と食感に。
対してフィナンシェはバターを焦がすことと、卵白だけを使い、たっぷりのアーモンドパウダーが入る(薄力粉はつなぎ程度にだけ入る)ことで、しっとりとリッチで香ばしい風味と食感に焼き上がります。ベーキングパウダーが入らないので大きくふくらみは出ませんが、型離れがよく、複雑な形状の型でもきれいにはがれ出やすい生地です。

パンダちゃんやクマちゃんなどのお顔もきれいに焼き上がる!

基本のフィナンシェをマスターする!

まず基本のフィナンシェを作ってみましょう。

材料

  • 縦85×横42×深さ12mmのフィナンシェ型 6個分
  • 無塩バター…45g
  • 卵白(常温)…45g
  • はちみつ…15g
  • 粉糖…45g
  • 薄力粉…18g
  • アーモンドパウダー…38g

※型の内側にマヨネーズくらいにやわらかくしたバター(分量外)を刷毛や指で薄くぬっておく。卵白は常温に戻す。

作り方

1.焦がしバターを作る。バターを鍋に入れ、中火にかける。泡立て器で混ぜながら加熱する。

 
混ぜないと焦げムラができるので、常に混ぜながら加熱する。沸騰してブクブクと泡が出はじめるので、混ぜていないと焦がし加減が泡で見えなくなる。さらに加熱すると鍋底から薄く黄色に色づいて徐々に茶色に変わってくる。焦がし加減が足りないと、香ばしい風味が出ないのでしっかりと。

2.やや濃い茶色になったら火を止める。すぐに鍋底を水にあてて色止めし、40~50度まで冷ましておく。

 
そのまま放置すると余熱で焦げ色が進んでしまうので、ひとまわり大きな鍋かボウルを使い鍋ごと冷やすように。ただし氷水だと温度が下がりすぎてしまうので、水程度でよい。

3.ボウルに卵白、はちみつを入れ、泡立て器でほぐすように混ぜる。

 
はちみつは少量でもしっとり焼き上げる効果がある。好みの香りのものを使うとよい。卵白は冷たいとはちみつが固まって混ぜにくいので、常温に戻しておく。

4.粉糖、薄力粉、アーモンドパウダーを合わせてふるい入れ、混ぜ合わせる。

 
泡立てて空気を入れるのではなく、材料がすべてなめらかに混ざりあうようにぐるぐる混ぜる。粉けがなくなって均一な状態になったら混ぜ終わり。混ぜすぎると粉の粘り(グルテン)が出てしまい、詰まってねっちりとした食感に焼き上がるので注意。

5.40~50度の焦がしバターを生地に加え混ぜる。バターが生地になじむまで泡だて器で混ぜ、ゴムべらにかえてムラなく混ぜたら、生地のできあがり。

 
水分の多い生地に油分を混ぜ混むので、バターが冷めていると混ざりにくい(乳化しにくい)ので必ず温かいバターを加えるように。逆に熱い焦がしバターを加えると卵白や粉類が高温によって凝固してしまうので、必ず指定の温度(40~50度)まで冷ますように。

6.用意した型に6等分して流す。

 
フィナンシェ生地はベーキングパウダーも入らず、大きくは膨らまないので、型の8~9分目くらいまで流し入れて焼いても溢れない。

7.190度のオーブンで12~13分ほど焼く。ひとつずつパレットなどで型からはずす。

 
フィナンシェ生地は少し高めの温度で焼き、香ばしく焼き上げる。焼き時間が足りないと焼き色が薄く、白っぽい焼き上がりに。アーモンドパウダーに十分熱が入らず、焦がしバターの香ばしさが出ないので注意する。

フィナンシェ作りのコツいろいろ

焼き上がったフィナンシェの保管

冷ましてすぐ食べると、まわりはカリッと香ばしく、中はしっとり。乾燥しないよう袋などに入れて一晩以上おくと、全体がしっとりします。冷暗所または冷蔵庫で保存すれば3~4日はおいしくいただけますが、あまり長い間置いておくとバターが酸化したり、風味が抜けてしまうので、お早めに。(保存期間は環境に寄るため参考までに。)

フィナンシェ生地を焼く前に寝かせる

混ぜ合わせたそれぞれの素材をなじませたり、混ぜることでできる小麦粉のねばり(グルテン)を弱め、ほろっと歯切れのよいフィナンシェに焼き上げるために、生地を焼く前に寝かせることもあります。その場合はラップをかけて乾燥を防ぎ、涼しいところで1時間以上おくようにします。寝かせている間に成分が沈殿することがあるので、焼く前に必ず生地が均一になるよう、ひと混ぜしてから型に流しましょう。

バターの焦がし加減はお好みで

基本的にはしっかり「ヘーゼルナッツ色まで焦がしたバター(ブール・ノワゼット)」の風味を利かせるのがフィナンシェの基本ですが、ミルキーなバター風味を強調させたいとき、抹茶フィナンシェなどあまり強い色や風味を出したくないときは、焦がし加減を薄めにしてもよいでしょう。

またレシピによってはバターを焦がした後、茶漉しなどで漉すことがありますが、もし大きな焦げの塊ができるようなら漉しましょう。(混ぜながらバターを焦がすと、あまり大きな焦げの塊はできず、漉してもほぼスルーですので、漉さなくても大丈夫です。)

お好みの焦がし加減でフィナンシェを作っても。

基本のフィナンシェの別バージョンレシピ

しっとりリッチタイプのフィナンシェ「アーモンドパウダー多め」

薄力粉を減らし、アーモンドパウダーを増やすことでよりリッチでしっとり、濃厚なフィナンシェになります。薄力粉はつなぎで程度にしか入らないので、グルテンが出にくく、しっとりアーモンド風味が強くほろほろっとした歯切れになります。

  • 無塩バター…45g
  • 卵白…45g
  • はちみつ…15g
  • 粉糖…45g
  • 薄力粉…11g
  • アーモンドパウダー…45g

※作り方は基本レシピと同じです。

ふんわり軽いタイプのフィナンシェ「卵白の一部を泡立てて加える」

基本レシピの卵白の一部を泡立てて加えると、ふわっと軽い「ヴィジタンディーヌ」タイプに。空気が入るぶんかさも増え、通常のフィナンシェとはまた違う食感が楽しめます。

  • 無塩バター…60g
  • 卵白…35g
  • はちみつ…20g
  • 粉糖…40g
  • 薄力粉…25g
  • アーモンドパウダー…50g
  • 卵白…25g(メレンゲ用)
  • 粉糖…20g(メレンゲ用)

卵白の一部を泡立てて加えるのでふんわりしっとり。

自分好みのフィナンシェにアレンジするには?

フィナンシェ生地にココアや紅茶の茶葉など、パウダー状のものを加えれば簡単にフレーバーがつけられ、かつトッピングも好みのものをのせて焼くことができます。型も長方形に限らず、小さな金型やシリコン型など手持ちのもので試してみても。
ただし大型の形(パウンド型やデコレーション型など)で焼き、カットして食べるのにはあまり向いていません。小さく焼くことで香ばしさやおいしい食感が生まれる生地です。

フレーバーをつけてアレンジする

基本配合のフィナンシェにパウダーや顆粒状のフレーバーを加えるだけでいろいろなアレンジがしやすいのがフィナンシェ生地。アーモンドパウダーなどの粉類と一緒にに加えるだけです。
参考配合をご紹介しますが、お好みで調節してもよいでしょう。

フレーバー配合量
抹茶またはほうじ茶パウダー3g
ココア6g (薄力粉は-5gに)
アールグレイ(茶葉)3g
カフェリーヌ・エスプレッソ2~3g
オレンジの皮のすりおろし少々
※基本配合に上記の量のフレーバーを加えてください

抹茶フレーバーやココア味にも手軽にアレンジできます。

またラベンダーやオレンジ、フルール・プランタニエールのように香りのよい蜂蜜をセレクトすることで、蜂蜜風味を生かしたフィナンシェにも。

参考レシピ
 
ラベンダーはちみつのフィナンシェ

他のナッツパウダーを使う

フィナンシェは皮なしのアーモンドパウダーで作るのがオーソドックスですが、他のパウダーでも作ることできます。
皮つきのアーモンドパウダーなら皮のビター感もほんのり加わり、見た目にもナッツ感が強まります。ローストアーモンドパウダーならよりナッツの香ばしさが楽しめます。またスペイン産のマルコナ種のアーモンドパウダーで焼くとより強いアーモンド香と、しっとりとリッチな食感に。
またアーモンドパウダーのかわりにヘーゼルナッツパウダーを半々にし、トッピングにヘーゼルナッツ(ホール)をカットしてのせれば、香り高いヘーゼルナッツフィナンシェが出来ます。

 

ヘーゼルナッツフィナンシェは香ばしく、おすすめです。

トッピングをする

フィナンシェ生地にお好みのトッピングをして焼いてみましょう。おすすめはナッツ類やドライフルーツなど、あまり水けの多くないもの。大きなカットでのせると沈んでしまうので、粗刻みにしたり、薄くスライスするとよいでしょう。

抹茶生地には豆の甘煮、ココア生地にはナッツやチョコチップなど、生地のフレーバーに合わせたトッピングを。アールグレー生地にオレンジスライスやココナッツ生地にプルーンをのせても。

水気の少ないものをトッピングしましょう。

チョコレートでコーティングする

冬の寒い時期には、チョココーティングした濃厚なフィナンシェもおすすめ。全面または一部だけコーティングしてトッピングすれば、デザイン性も上がります。チョコレートは溶かすだけで手軽に使えるコーティングチョコレートを使いましょう。

型をアレンジする

先述したように、フィナンシェは型離れのよい生地。柔らかくしたバターを塗っておけば、きれいに型離れします(マドレーヌのようにバターを塗った上に粉をはたいておく必要はありません)。ここではおすすめの型をご紹介。

cuoca×CHIYODAシリーズでいろいろアレンジ

美しい焼き色と型離れに定評があるcuoca×CHIYODAシリーズの型。オーソドックスな長方形の他に、正方形やスティック型、クマちゃんやパンダちゃんの型など、少し複雑な型できれいにフィナンシェが焼けます。

ムジタルトシリーズでいろいろアレンジ

ムジタルトシリーズはお好きな個数で焼けたり、型の保管に場所をとりません。熱伝導率の高いアルミニウムにフッソ樹脂を2度塗りしているので型抜きも安心。

使い捨てタイプのベーキングカップでいろいろアレンジ

適した型を持っていなくても、手軽にフィナンシェを焼きたいなら使い捨てタイプのベーキングカップがおすすめ。型にバターを塗ったりする手間もいらず、そのまま生地を流して焼くことができます。プレゼントするときもカップごと包装して贈れますね。

フィナンシェ生地を使ったお菓子いろいろ

フィナンシェはそれだけでおいしい生地ですが、それをベースにケーキを作ったり、トッピングして仕上げるお菓子もあります。

代表的なのは「ティグレ」。ティグレはフランス語で「タイガー(虎)」のこと。チョコチップ入りの生地をサバラン型で焼き、真ん中のくぼみにチョコガナッシュを絞り込んで仕上げます。生地のまだらなチョコチップ模様が「虎の模様」に似ているから、だとか・・・!

またフィナンシェ生地を薄く焼き、それを土台にケーキに仕上げるパティシエのレシピもあるのだそう。リッチなフィナンシェをベースにするのだから、おいしくないはずがありませんね!

フィナンシェ生地にガナッシュをトッピングした「ティグレ」。
フィナンシェ生地をモンブランなどのケーキの土台にしても。

フィナンシェの基本とアレンジいろいろをご紹介したところで、今回はフィナンシェをアレンジしたNEWレシピ3品をご紹介します。

ふわっと軽いヴィジタンディーヌ

フィナンシェの原型となったヴィジタンディーヌは、フィナンシェとほぼ同じ配合ですが、卵白の一部を泡立てることでリッチでしっとりとした中にも、ふわっとしたビスキュイのような食感が生まれます。基本のフィナンシェを食べなれていると、これはまた「別もの」と感じるおいしさがあります。本来は花型や丸型などで作るそうですが、ここではブリキケーキ型 #Kでお花のような形に焼いてみました。もちろんフィナンシェ型やボート型でも焼けます。

ヘーゼルナッツとオレンジのティグレ

オレンジ風味のヘーゼルナッツフィナンシェ生地にチョコチップを混ぜ込み、サバラン型で焼き上げたところにガナッシュをトッピング。フィナンシェとガナッシュの間にもオレンジマーマレードを忍ばせます。ガナッシュはビター、ホワイト、キャラメルの3種をご紹介。シンプルなフィナンシェも大人向けなプティガトーにワンランクアップします。

フィナンシェ・モンブラン

焦がしバターが香ばしい、しっとりフィナンシェを土台にしたモンブランです。ナッツとマロンは相性がよく、フィナンシェの風味と食感がよりリッチなモンブランに。きび糖のフィナンシェに丸1個栗の渋皮煮をのせ、たっぷりとモンブランクリームを絞って仕上げます。

最後に

フィナンシェについてその基本の作り方と、アレンジ方法をいろいろご紹介しました。とってもシンプルで作り方も簡単なので、ぜひ自分好みのフィナンシェを見つけてみてくださいね。

コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生

熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。 文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。