お菓子・材料の保存方法|お菓子の冷凍テクニック【後編】

お菓子作り

こんにちは!お菓子教室主催・熊谷裕子です。

前編ではお菓子作りの材料の冷凍テクニックについてご紹介しましたが、後編では「お菓子作りの途中工程のもの、完成品の冷凍」について、ご紹介します。

すっかり秋も深まり、焼き菓子や濃厚なケーキがおいしいシーズンになりました。お菓子作りもより楽しくなるシーズンですね。張り切って作ったら上手にお菓子が出来たけど、たくさん作りすぎてしまった、全部はすぐ食べきれない、来週の来客まで取っておけないかな、、、。そんなときは「冷凍テクニック」を上手に使いましょう。

お菓子の途中工程、または完成品の冷凍について

基本的にはデコレーションまでした完成品よりも、「完成一歩手前」「焼く前」「生地の状態の段階」がおすすめです。

完成したものはピッタリと包めないものが多く、容器に入れるためかさばったり、霜がつきやすかったり、解凍後の状態や風味、食感が落ちやすくなります。完成品はなるべく冷凍せず、早めに召し上がってください。

「仕上げる前のもの」や「生地だけのもの」「焼き上げる前のもの」なら、解凍して仕上げたり、焼き上げるだけで出来立てのおいしさがいつでもすぐに味わえるので、保存としてだけでなく、材料や時間がある時に作り置きするなど上手に利用すると良いでしょう。

タルト類、パイ類の場合

まずタルト生地(パートシュクレやフォンセ)、パイ生地(パートブリゼやフィユタージュ)など、できた生地を平らな状態にし、冷凍保存するのは全く問題ありません。バター分が溶け出さないよう、常温ではなく、必ず冷蔵解凍で。私は型に敷き込んで残った二番生地も冷凍してとっておき、たまってきたら小さいタルトを作ったりと無駄なく使っています。

中身に詰めるクレームダマンドもラップに包み、密閉袋に入れて冷凍もできます。加熱したフルーツのフィリングなども冷凍可能。

つまりタルトやパイのパーツごとに作って冷凍しておき、焼きたいときに解凍して組みたて、すぐに焼き上げることができます。

一度にたくさん生地やフィリングを仕込んで冷凍し、焼く分だけ解凍して使っていくのも効率的です。

タルト生地は薄く平らにし、ぴったり包んで冷凍します。

もっと「すぐに焼き上げれる状態」にしたいときは、タルト生地やパイ生地を型に敷き込み、クレームダマンドなど水気の少ない生地を流した段階のものを冷凍します。あとは解凍し、フルーツやフィリングをのせて焼けば出来上がり、です!

解凍は大きなものなら冷蔵庫で1〜2時間以上、小さなものなら30分くらいです。(目安)

ただしこれは冷凍庫の場所をとったり、型ごと冷凍保存する(他のお菓子作りに使えなくなる)というデメリットもありますが、すぐに焼き上げられるメリットもある為、朝一番にたくさん焼き上げなければいけないお菓子屋さんでよく使われている手順でもあります。

型ごと冷凍し、冷蔵解凍。
トッピングをのせてオーブンへ。

タルトやパイを焼き上げたものも、冷凍は可能です(ジャムやナパージュを塗る前のもの)。ただしどうしてもフィリング(フルーツなど水分を含むもの)から離水してきて水っぽくなってしまうので、ベストとは言えません(とくにアップルパイのようにフルーツフィリングの割合が多いものほどシトッとしてしまいます)。

自然解凍したら5〜8分くらいオーブンで焼き直し、ナパージュなどでデコレーションしましょう。焼く温度は最初に焼き上げたときと同じ温度くらいで、時間は大きさに合わせて微調整してください。

ジャム、コンポート、ソテーの場合

フルーツがたくさんあって食べきれないときはジャムやコンポート、ソテーなどして加熱しておくと、冷凍することができます。生のままだと解凍時に大きく離水してしまうフルーツも、加熱すれば大きく変化は出ません。冷蔵庫または常温で解凍したら、そのままでも、お菓子作りに役立てたり(焼き菓子に焼き込んだり、生ケーキにサンドしたり)と活用できます。

加熱して脱水させるとフルーツも冷凍可能。
密閉容器や袋に入れてしっかり密封して冷凍しましょう。

ムース、ババロア、レアチーズ、ベイクドチーズケーキの場合

ゼラチンで固める生ケーキ類、焼きチーズケーキも冷凍は可能です。ただしおすすめは「仕上げる前のもの」。しっかりとラップで包み、さらに密閉袋に入れて冷凍、解凍は冷蔵庫でゆっくりです。冷凍保存中に変形しないよう、ベストは型に入ったままですが、しっかり冷凍してから型を外し、ぴったり包んで冷凍でもOK。

冷凍したお菓子は前日の晩から冷蔵解凍、当日仕上げて早めにいただく、がおすすめです。忙しいときに「最初から全部作っている時間がない!」ときは、土台まで冷凍しておけば当日仕上げるだけなので、保存だけでなくいつでも食べたいときに必要なだけ解凍していただけます。効率よいお菓子作りが楽しめます。

仕上げてしまうと容器に入れる必要があるので冷凍庫で場所をとったり、トッピングのクリームやフルーツから解凍時に離水するので、あまりおすすめしません。

型ごとぴったりラップをし、さらに密閉袋に入れて。
レアチーズケーキやムースも冷凍可能。

シュー生地の場合

シュー生地も焼いた皮を密閉袋に入れ、冷凍しておくことができます。食べるときはそのまま常温解凍だとしめっとしているので、冷凍のまま180度のオーブンで3〜4分(大きさによる)焼くとパリっと戻ります。ただしシュー皮って、ちょっと冷凍庫でかさばりますけどね、、!またクリームを詰めたものは冷凍できないので注意してくださいね。

スポンジ生地、シフォンケーキの場合

フワッとしたスポンジ生地やシフォンケーキも冷凍にまったく問題はありません。シフォンケーキはカットしてひとつずつ冷凍しましょう。どちらもしっかり2重に包んでください。そのまま常温解凍できます。凍らせてもやわらかいものなので、他の冷凍材料などで押しつぶされない位置に置きましょう。カットシフォンは個装したのを密閉容器に入れると安心です。ロールケーキ生地も冷凍はできますが、家庭の冷凍庫には、、かさばりますよね?!

パウンドケーキ、ガトーショコラ、マドレーヌ、フィナンシェ等バターケーキの場合

バターたっぷりのバターケーキ類(ブラウニーやカップケーキなども含まれます)も冷解凍に問題ありません。ただし冷凍焼けして臭いがついてしまったり、乾燥しないようにしっかりとマドレーヌ袋などで個装し、密閉容器に入れるのがおすすめです。パウンドケーキやガトーショコラは1台のままでも、カットしてからでも用途に合わせて。解凍は冷蔵または冷暗所で。

ガトーショコラやクグロフケーキはホールの状態でも、カットして個装してからでも。
ミニクグロフやフィナンシェは個装してから種類別に袋に。

クッキー生地の場合

型抜きクッキー生地、成形したアイスボックスクッキー生地は冷凍可能です。型抜き生地は平らに冷凍し、冷蔵解凍のあと伸ばして型抜き、焼成できます。成形したアイスボックスクッキーも、そのままカットしようとすると固くてきれいにカットできないので、切れる固さになるまで冷蔵解凍しましょう。

どちらも生地を冷凍しておけば食べる分だけ解凍→焼成となるので、いつでも焼き立てのおいしさが味わえます。

絞り出しクッキー生地は絞りにくくなるので冷凍には不向きです。また焼き上げたクッキーも冷凍はおすすめしません。

型抜き生地、アイスボックスクッキー生地は冷凍向き。

冷凍に向かないお菓子、生地について

焼く前のスポンジ生地やバターケーキ生地

泡立ててフワッと焼き上げるスポンジ生地や、ベーキングパウダーで膨らませるバターケーキ生地を生のまま冷凍は不向きです。解凍時にしぼんでしまったり、ふくらみが悪くなります。

バターケーキ生地は作ったらすぐに焼きましょう。焼き上げたものを冷凍するように。

ロールケーキやショートケーキ などホイップした生クリームをたっぷり使ったケーキ

基本的にホイップした生クリームは冷凍には向きません。解凍したときにボソボソになったり離水してしまい、なめらかな食感ではなくなるからです。ですのでホイップクリームをたっぷり巻き込んだロールケーキやショートケーキは冷凍には不向きです。

(市販品では冷凍するものもありますが、業務用の冷凍対応のクリームを使用したり、急速冷凍庫(ショックフリーザー)など特別な冷凍方法で作られています)

ホイップした生クリームやフルーツたっぷりのケーキは冷凍には不向き。

生のフルーツをたっぷり入れたケーキ

ムースやレアチーズなどは冷凍可能ですが、生のいちごやマスカットをたっぷりサンドしたものは、やはり離水が大きく出てしまうので不向きです。冷凍するケーキには加熱したコンポートやソテーを「少なめに」サンドしたほうが離水が少なくなります。

フレジエのように生のいちごがたっぷりのケーキは冷凍には不向き。

カスタード系のクリーム、お菓子

カスタードクリーム、カスタードプリン、クラフティなど卵と牛乳から作られるこれらは全て冷凍には不向きです。解凍したときにザラザラになり、おいしさが戻りません。

カスタード系のお菓子は冷凍せず、なめらかな食感を楽しんで!

冷凍するときの注意点&使用するときのポイント

各項目でもご紹介しましたが、材料やお菓子を冷凍するときの基本は「臭いや乾燥を防ぐためにしっかり密閉」と、「冷凍後は2〜3週間を目安に消費」です。

凍らせるときはなるべく平らな形状にすること。急速に凍ったほうが解凍時に離水しにくく、また解凍も早くできます。必ずラップで包むだけでなく、密閉袋や容器に入れて2重包装に(アルミ素材の袋のほうがより冷凍臭を予防できます)。材料名のラベルや冷凍日の記入も忘れずに。

解凍は包んだまま、容器のまま(むき出しだと水滴が直接つくので)、ゆっくり冷蔵解凍がベストです。ものによっては常温でも大丈夫なものや、焼き直しが必要なものもありますので、各項目を参照してください。

冷凍するといつまでも大丈夫、、!と思いがちですが、やはり徐々においしさが失われていくので、早めにいただきましょう。

冷凍保存もできるお菓子 りんごを使ったレシピ3選

今回は冷凍も活用できる「秋のりんごの焼き菓子」3レシピをご紹介します。

一時期だけ出回る紅玉りんごは、しまった果肉質と酸味が焼き菓子にぴったり。私は紅玉がないときはりんごの焼き菓子は作らない!というくらい紅玉派。ですが一時期しかないので、紅玉の旬にたくさん購入し、ソテーやコンポートにして冷凍しておきます。そうすれば秋〜冬はしばらくりんごのお菓子が楽しめるのです。

生地や焼き上がりの冷凍も可能な、美味しいりんごの焼き菓子レシピをぜひお試しください。

りんごの簡単プティパイ

りんごをソテーにして冷凍しておけば、冷凍パイシートで包んですぐに焼きたてが食べられます。マフィン型を使うので成形もとっても簡単、初心者さんにもおすすめレシピです。上にアイシングをかけるとよりりんごの甘酸っぱさが引き立ちます。

ベラミーズパイシート / 150g×2

冷凍パイシートはいつでも解凍して成形するだけで焼きたてパイが食べれるという優れもの。工夫次第で活用の幅が広がります。

フィリングのりんごもソテーして冷凍しておけばすぐにお菓子作りに使え、旬のりんごをいつでもおいしくいただけます。

りんごのクグロフ ノルマンディー

紅玉りんごをキャラメルソテーし、りんごのブランデー「カルバドス」で香りづけたフィリングをしっとりしたクグロフケーキに焼き込みます。りんごの漬け込みフィリングをケーキ生地と同量くらい混ぜ込むリッチな配合で、りんごと相性の良いドライイチジクのプチプチした食感と、風味よいラムレーズンも入った、大人の焼き菓子です。シュトーレンのように晩秋からクリスマスにかけて日々一切れずつ楽しむのが私の楽しみにもなっています。

こちらも漬け込みフィリングは冷凍でき、また焼き上がったケーキも冷凍可能です。

タルト・ポンム エマンセ <薄切りりんごのタルト>

香ばしいパリパリ食感がおいしい練りパイ生地と、クレームダマンド、りんごをたっぷり焼き込んだリッチな本格タルトです。りんごはソテーして風味を濃縮したものと、生のまま薄くスライスしたものをのせるので、違う食感のおいしさが味わえます。美しくおいしく焼くポイントは、りんごを薄く、厚みをそろえてスライスし、しっかりと焼き込むことです。

練りパイだけでも冷凍ストックできますが、型に敷いてソテーとクレーム・ダマンドをのせた段階でも冷凍できるので、あとは解凍してりんごスライスをのせるだけでいつでもすぐに焼きたてのタルトが楽しめます。

最後に

いかがでしたか。私もお菓子教室をしているとどうしても材料やお菓子が余ってしまうことがあります。なるべく無駄なく美味しく使い切る、食べ切る、というのも、本当のお菓子作りの達人になりえる条件のひとつではないかと思います。

皆さんも冷凍も上手に活用して、お菓子作りを楽しんでくださいね。

コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生

熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。 文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。