こんにちは。洋菓子講師の舘野です。今回のコラムのテーマは「マジパン」です。クリスマスシーズンに入ってくるとシュトーレンと共に「マジパン」という言葉を見聞きすることが多いかな?と思います。
このコラムではマジパンの種類とその説明、手作りマジパンの作り方を紹介します。
そしてシュトーレンに手作りマジパンと市販のマジパンを包み、仕上がりの違いを比較し紹介します。
マジパンに興味のある方、手作りに挑戦してみたいなという方はぜひ読んでみてください。
マジパンとは?
マジパンとは主にアーモンドと砂糖で作るペーストのこと。
中東や欧州では古くから食されているので伝統菓子によく用いられます。
焼き菓子やシュトーレンによく使われるアーモンドの風味が強いマジパン・ローマッセと、ケーキの装飾に使うマジパン(マジパン・ペースト)の2種類に大別されます。
マジパン・ローマッセは砂糖とアーモンドの割合が1:2程度とアーモンドの含有量が高くアーモンドの持つ風味と油脂分による芳醇な味わいが特徴で、ドイツではシュトーレンのフィリングに使ったり、フランスではボンボンショコラのセンターに使ったり、焼き菓子に練り込んだりと用途は多岐に渡ります。
マジパンはマジパン・ペーストとも呼ばれ、砂糖とアーモンドの割合が1:1程度と砂糖の割合が多く、柔らかくしなやかな性質を持ちます。細工用に使われる事が多く、欧州の伝統菓子では緑やピンクに色づけて薄く伸ばしてケーキを覆ったり、日本ではウェディングケーキに乗せる人形などにも使ったりします。
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マジパンの手作りレシピをご紹介
マジパンは基本的に粉砕したアーモンドと砂糖を練り合わせて作られます。
富澤商店で取扱いのあるマジパン・ローマッセはドイツのリューベッカ社の製品で、ドイツの伝統的な製法を守る高品質なマジパンとして知られています。
実は、マジパンは家庭でも似たものを簡単に作ることができるので紹介します。
マジパンの作り方
1.アーモンドプードルをオーブンシートに広げ160℃で10〜15分、軽く色づくまでローストし、冷ましておく。
2.ボールにグラニュー糖と1を入れて混ぜ、牛乳を少しずつ加えながら混ぜてよくよく練る。
3. 滑らかでありながらも、手にはくっつかない硬さになるよう牛乳の量を調整し、用途に合わせて成形する。
マジパンは非常に乾燥しやすく、乾燥するとボロボロになってしまうので、完成したらラップでしっかりと密封しましょう。
牛乳の部分は卵白で作ることもでき、好みで洋酒を混ぜ合わせることもできます。
市販と手作りの違いは?
市販品のマジパン・ローマッセと、手作りのマジパンではどのような違いがでるのでしょうか?
シュトーレンの生地に包んで焼き上げ、作業性や味わいを比較したいと思います。
レシピはこちらを参考に作りました。
焼成前の状態の比較
まず焼成前のマジパンの状態を比較します。
市販品は滑らかで、粒子感を感じません。生産時にアーモンドと砂糖をローラーにかけて圧力をかけてすりつぶすことで粒子感(=ザラザラした食感)の無い、滑らかな状態となるようです。
比較して、手作り品も滑らかではありますが、前述の工程を再現することはできないのでやや粒子感を感じます。
焼成したシュトーレンで、味わいや状態の比較
次に焼成したシュトーレンで味わいや状態を比較します。作成後10日間冷暗所で保管した後に確認しました。
市販品は焼成後も滑らかでしっとりとしており、焼成前とあまり変化はありません。
シュトーレン生地に滑らかでしっとりとした「こしあん」が包まれているようなイメージです。
味わいは芳醇で特有の杏仁香(アマレット、杏仁豆腐、ビターアーモンドのような香り)が淡く感じられ、これぞマジパンといった味わいです。
手作り品は焼成前よりも少々焼け固まった感じがしました。
シュトーレン生地よりはやわらかいものの、わずかにホロッと崩れる感じもあり、前述の「こしあん」という表現よりも「クレームダマンド」など別の生地のような感じがします。
味わいは「香ばしいアーモンド+お砂糖の甘さ」そのもので親しみのある味わいです。食感も味わいも市販品よりもマジパンらしさは控えめだとは思うのですが、ヨーロッパの伝統菓子に馴染みが無い人にとっては案外こちらのほうが「食べやすい」「親しみやすい」と感じる方が多いのでは・・・?と思いました。
手作りマジパンは定番のアーモンドプードルを使用しましたが、マルコナ種のリッチなアーモンドプードルで作ると一層芳醇になるでしょうし、ピスタチオパウダーなどの好みのナッツパウダーをブレンドしたり、好みの砂糖で作るアレンジも楽しめそうです。
皮付きのプードルですと香ばしさが楽しめる一方で、皮の粗さは滑らかさと相反するので、皮無しタイプを使用するか、皮付きのものは篩って細かい粒子の部分だけを使用するのが良いかと思います。
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ナッツパウダーについてはこちらのコラムで種類や特徴を詳しく紹介していますのでご参考ください。
マジパン・ローマッセを使ってみよう!おすすめのレシピをご紹介
マジパン・ローマッセはシュトーレンに包む他にも、シュトーレンや焼き菓子の生地に練り込むことで非常にしっとりとした仕上がりになります。
練り込み用途でマジパン・ローマッセを使う場合は手作りのマジパンでは特長が出にくいと思いますので、市販品で作ってみることをおすすめします。
作ってみないと分からない、市販品と手作りのそれぞれの魅力
比較する前は、今回のコラムの結論は「やはり市販品が圧倒的においしい!手作りできるけれど市販品がおすすめです」となるかなと予想していたのですが、親しみやすい味わいやバリエーションを作る楽しさなど、手作り品にも魅力があることが分かりました。
そして、実際に作って食べてみないと分からないのがお菓子作り・パン作りの醍醐味だなと実感しました。もしよかったら試してみてください。
最後に、今回シュトーレン用の可愛らしい箱も見つけたので紹介します。少し深さがあるので緩衝材(ペーパークッション)を入れると丁度良く、クッキーなど小さな焼き菓子も一緒に包むこともできそうです。
今回の記事がマジパンに興味を持っていらっしゃる方の参考になれば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。
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コラム執筆:舘野真里さん
製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。