こんにちは! お菓子教室主催の熊谷裕子です。
今回は本格的なチョコレートづくりにチャレンジしたい!というときに欠かせない「チョコレートのテンパリング(温度調節)」についてご紹介します。
チョコレートの性質を知り、正しい状態をチェックしながらテンパリングをマスターしましょう。
本コラムの公開後、続編として「本格ボンボンショコラにチャレンジ!型抜きショコラの作り方のポイント」を次週公開予定です。お楽しみにお待ちください。
テンパリングとは?

「一度溶かしたチョコレートを元通りのよい状態に固める」ための作業
そもそもどうしてチョコレートづくりにはテンパリング(温度調節)が必要なのでしょう。
チョコレートを温めて溶かし、型に流したり形作って冷やせば、元通り固まるでしょう? チョコレートなんだから…って思いますよね。でも、そうではないのです。
少し専門的な説明になりますが、チョコレートに含まれるカカオバターには多種の結晶が含まれ、どれも性質が異なっています。そのため溶かして冷やし固めるだけだと、それぞれの結晶によって状態にムラが出来てしまい、結果ザラザラとした食感になったり白っぽく浮き上がってしまったり(ファットブルームといいます)と、元のつややかでなめらかな状態には戻りません。
そこで決まった手順に沿って温度調節をすることで、「一度溶かしたチョコレートを元通りのよい状態に固める」ことができるのです。温めて、冷やして、またちょっと温めて…というテンパリングには、そんな意味があります。
テンパリングをしていないとどうなる?

型からうまく抜けなかったり、ザラザラとした食感になって口どけが悪くなる!
チョコレートを溶かしてテンパリングをすると、冷やし固めたとき収縮する性質があります。そのことによって型に流して冷やし固めたときに型から自然にはがれ、型抜けがよく、均一に結晶化するためつややかに仕上がり、口どけもなめらかになりチョコレート本来のおいしさが味わえます。
テンパリングを省いたり失敗していると、型からうまく抜けません。また型から出したあとにもしばらくたつと脂肪分が浮き、表面が白く結晶化してくることがあります。このままの状態で食べるとザラザラとした食感になって口どけが悪く、チョコレート本来のおいしさが味わえません。チョコレートづくりには正確なテンパリングが欠かせないのです。
基本のテンパリング~ポイントをしっかり押さえて~
1.チョコレートを湯せんでなめらかに溶かし、45~50度にする(ミルク、ホワイトなら40~42度)。
チョコレートを粗刻みにし、ステンレスボウルに入れる。鍋に湯を沸かし、ふつふつとしてきたらごく弱火にしてボウルを浮かべる。ときおり静かに混ぜ、スイート、ビターなら45~50度にします(ミルク、ホワイトなら40~42度)。

★ポイント★
湯を沸かす鍋とボウルはほぼ同じくらいの直径のものを使う。あまり鍋が大きいとボウルが不安定になり、チョコレートに湯気にあたったり湯が入ったりしてしまう。またボウルが大きいと直接鍋から熱が伝わり、チョコレートの温度が上がりすぎてしまうことも。
2.溶かしたチョコレートを冷やしていく。
氷を入れた冷水にボウルごとあて、ゴムベラで静かに混ぜる。まわりから冷えてもったりとし、小さなダマが出始めたら冷水からボウルをはずす。温度は25~26度(ホワイト、ミルクなら23~24度)


3.再び湯せんにかける。
今度は温度を上げすぎないように、少し湯せんにあてたらすぐ湯せんからはずし、全体を混ぜてチョコレートを溶かしていく。再び湯せんにあて、を繰り返し、やっとチョコレートのダマがなくなりなめらかになったところで完成。温度は30.5~31度(ホワイト、ミルクなら28~29度)。もし温度を上げ過ぎてしまったら、もう1度湯せんにあてて1の温度まで上げるところからやり直す

★ポイント★
ボウルのまわりやゴムべらのふちに固まってきたチョコレートを溶かしたり、ほんの少しだけチョコレートを温めたいときに、ドライヤーの温風をあてると便利。ただしあてすぎには注意。

4.テストをする。
パレットの先にチョコレートをつけ、余分を落として薄くつくようにする。そのまま室温に置いておく。しばらくして下からチョコレートのツヤがくぐもってきて、さらに全体がくぐもり(結晶化し)、固まってくればテンパリング成功。固まってくるのには2~3分もかかりません。
いつまでもツヤツヤとしたままで、なかなか固まってこないときはテンパリングが失敗しているので、もう一度プロセス1からやり直す。
テンパリングしたチョコレートの扱い方ポイント

上手にテンパリングができていたら、すぐに型に流したり、コーティングをしましょう。テンパリングしたチョコレートはすぐに固まってくる性質になっているので、そのまま放置しているとボウルの内側からどんどん固まってきます。テンパリングする前に使用する型や道具、トッピングなどすぐにチョコレートづくりができる準備をしておきましょう。
作業中もチョコレートが固まってきてドロッとしてくると作業がしにくくなります。その時はドライヤーでさっと固まってきた部分やチョコレートの上面を温め、全体をよく混ぜてから作業に戻りましょう。ただし全体を混ぜたところでプロセス3の完成温度(ビター、スイートは30.5~31度まで、ホワイト、ミルクなら28~29度まで)を超えてしまうとテンパリングが壊れてしまうので、温めすぎには注意しましょう。
テンパリンクができたら?
まずは型に流してトッピングするだけ、などのシンプルなものからトライしてみましょう。
それができたらちょっと本格的な型抜きショコラなどにも挑戦、というように徐々にレベルを上げていくと良いでしょう。
▼テンパリングがはじめての方におすすめレシピ
成功するテンパリングのポイント Q&A
しっかり温度を測った筈なのに、テンパリングが上手にいかない…。そんなときの原因と対策をこちらで確認してください。
Q.テンパリングするときはどのくらいの量ですると成功しやすい?
A.
ここではなるべく家庭のキッチンでも手軽に作れる基本の方法を紹介しています。
本来チョコレートは多めにテンパリングして準備した方が作業しやすいのですが、まだショコラづくりに慣れない方が大量のチョコレートを扱うのは気が引けてしまうでしょう。
少なすぎても温度が計りにくかったり、誤差が出やすかったりするので、最低でも200~300gは用意しましょう。また、型を使ってフィリングを詰めたり、ガナッシュをコーティングするような本格ショコラづくりには、400~500g以上あった方が作業もスムーズに。チョコレートの量が少ないとすぐに温めすぎたり冷え固まってきたりと、かえって作業性が悪くなるからです。
Q.テンパリングを失敗したらやり直せる?
A.
テンパリングをしたらショコラ作りに入る前に、必ずテストをしましょう(上記プロセス参照)。
そして固まらない、収縮しない、艶が悪いなど、テンパリングが失敗しているような症状が出たら、もう一度やり直せば問題ありません。もう一度プロセス1.の「温かい状態(45度程度)にする」~やり直しましょう。プロセス2.の氷水で冷やす、ところではなく、もう一度温度をさらに上げるところからです。
ただし、温度を上げ過ぎ(50度以上)たり、焦がしてしまったら、もうショコラ作りにも他のお菓子にも使えなくなってしまうので、十分注意しましょう。
Q.ビターやホワイト、ミルクなど、チョコレートによってテンパリングの仕方は違う?どれがやりやすい?
A.
ビターやホワイト、ミルクなど、どのチョコレートでも同じようにテンパリングすることができます。ただしそれぞれ温めるとき、冷やすときの温度帯がビター、スイートの方が全体的に温度高め、ホワイト、ミルクは温度低めにします(上記プロセス参照)。
ビター、スイートはカカオ分が多く、溶かしたときにサラッとしていて、温度変化によって見た目の変化もはっきり出るため、ビギナーさんもテンパリングしやすく、扱いやすいでしょう。
ホワイトやミルクはカカオ分が比較的低く、ミルク分が含まれるため若干ビター、スイートより焦げやすくて流動性がなくいので(ドロッとしてる)、温めすぎないように気をつけます。
Q.テンパリングしてショコラを作ったあと、残ったチョコレートはどうする? また使える?
A.
たくさんの量をテンパリングしてショコラづくりの準備をした方が作業性もよく、失敗が少なくなります。ただショコラづくりが終わって残ったチョコレートはどうしよう…となるわけですが、心配いりません。
テンパリングを壊さないまま、また冷やし固めておけば、次の機会にテンパリングして同様にショコラづくりをしたり、ガナッシュを作ったり、焼き菓子、生菓子に混ぜ込んだりと、通常のお菓子作りにも使えます。オーブンシートの上に平らに流し、冷やし固めたらシートからはがして適宜割り、密閉袋に入れましょう。においや湿気に晒されないよう、しっかりと密封して保管するのがポイントです。
Q.チョコレートはどのくらい保存できるの? ベストな保存方法は?
A.
材料としてのチョコレートはかなり長期保存可能な素材です。製品の賞味期限に従ってください。テンパリングして残ったチョコレートも同様です。
ただし重要なのは「よい状態で保存する」ことです。理想は温度15度前後、湿度50%以下、光が当たらず温度変化もなく、振動の加わらないところにしっかり密封して保管、となりますが、意外とこれは家庭のキッチンでは難しい環境です。
家庭では温度が低すぎない、冷蔵庫の野菜入れの奥の方、などがよいでしょう。出来れば真夏は越さない方がよいので、なるべく使う分だけ購入するのをおすすめします。
Q.チョコレートづくりやテンパリングには向かない季節がある?
A.
チョコレートは高温・多湿を嫌います。ショコラ作りの理想環境は、室温15~17度、湿度50%以下。梅雨時や夏季など温度・湿度が高めの時期は作業に適していません。
無理に作っても上手にテンパリングできなかったり、つやのないショコラができたりするので、その時期のショコラづくりはお休みしましょう。チョコレートづくりやテンパリングには10月から4月くらいの期間がおすすめです。
テンパリングで広がる、チョコレート作りの楽しさ
いかがでしたか? 少し面倒そうなテンパリングも、プロセスをきちんとひとつずつ踏めばきちんと成功します。テンパリングができれば、シンプルなものから本格的なチョコレートまでぐっと幅が広がりますよ。ぜひマスターしてみてください!
続編として「本格ボンボンショコラにチャレンジ!型抜きショコラの作り方のポイント」を次週に公開予定です。お楽しみにお待ちください。
▼合わせてチェック!
テンパリングの手法にはさまざまな考え方があります。
本コラムの内容は熊谷先生の個人的な見解の一つとして参考にしていただき、ご自身に合った方法を選んでいただければと思います。(富澤商店スタッフ)












