こんにちは。オフィシャルクリエイターのけいちょんです。
今回はパン作りの製法の一つ「オートリーズ」についてお話ししたいと思います。私が富澤商店で公開させていただいているレシピの中にもいくつかオートリーズ法を使ったパンがあります。
普通に水と粉を合わせて捏ねるのと、オートリーズをとったパンとはでどう違うのでしょうか。また私なりのオートリーズの活用法もお話ししたいと思います。
ご家庭でのパン作りのヒントとしてぜひ参考にしてみてください!
オートリーズとは?
オートリーズとはパン作りにおけるミキシング工程の一つで、粉と水を混ぜ合わせしばらく休ませることを言います。一般的には粉と水のみですが場合によりモルトを加えることもあります。
休ませる時間はレシピにより様々ですが多くの場合30分前後、長いものでは1時間や2時間オートリーズを取るレシピもあります。
オートリーズの効果とは?
オートリーズを取ることで、小麦粉が水分を芯まで取り込み生地の伸展性がよくなります。粉と水を合わせるだけですがグルテンの生成が促されるため捏ねにくい高加水のハード系のパンでよく使われる製法です。
高加水のパンでは特に長めのオートリーズ・発酵を取ることで酵素が活性化しパンの風味が良くなります。
私個人としては加水高めの食パン生地や手ごねの時などでもオートリーズを活用します。グルテンの生成が促されることでオートリーズを取らずに捏ね始めるよりもまとまりやすく、捏ねやすくなり捏ね時間も短縮することができます。また生地の伸展性がでるので、ボリュームのあるふんわりとしたパンが焼けます。
生地が扱いやすくなり、風味のよいパンが作れるのは嬉しいメリットですね。初心者の方にもおすすめの製法です。
オートリーズ向きのパン生地は?
高加水のハード系(特に準強力粉を使うもの)はオートリーズをとるのがマストです。準強力粉は強力粉に比べて含まれるタンパク質が少なくグルテンが繋がりにくく、また水分も多いためにしっかりと捏ねるのが難しい生地です。オートリーズをとることで捏ねなくてもグルテンの生成を促しボリュームのあるハードパンを焼くことができます。
また、副材料の多い菓子パン生地やブリオッシュ生地でもその効果を発揮します。副材料の多いパンはグルテンのつながりを阻害するバターや卵の割合が高いです。バターを早めに入れたり砂糖が多いことで生地が緩みやすくたくさん捏ねようとすると生地温度が上がっていくので生地がダレる原因になりまとまらなくなってしまいます。事前にオートリーズでグルテンの生成を促して置くことで捏ねる時間を短縮できるため、ダレやすいきじも生地ダレを起こさずにまとめることができます。
おすすめ準強力粉
オートリーズを使った l クランベリークリームチーズのハードブレッドの作り方
それでは実際に富澤商店で公開中のレシピに沿ってオートリーズをとるパンの作り方をご紹介します。
オートリーズ前後の生地の変化もレシピページより詳しくご紹介します。
※こちらのレシピでは、通常オートリーズで最初から入れない蜂蜜・塩とインスタントドライイーストを水と一緒に加えています。
これはあまり捏ねない生地のため、ハードブレッド作りに不慣れな方でも蜂蜜・塩とインスタントドライイーストが溶け残らないように設計しているからです。発酵時間がオートリーズの分長くなることも加味してインスタントドライイースト量を決めています。
クランベリークリームチーズのハードブレッド
<フィリング>
- ラトビア産クランベリー 40g
- ドーバー ブランデーV.S.O 30g
- くるみ チャンドラー種 60g
<パン生地>
- 準強力粉 春よ恋ハードブレッド専用粉 150g
- ライ麦全粒粉 細挽 10g
- ゲランドの塩 微粒 3.5g
- サフ(赤)インスタントドライイースト 0.5g
- TOMIZ ハンガリー産アカシア蜂蜜 10g
- 水 125g
<具>
- MGクリームチーズ 100g
<仕上げ>
- ハンガリー産アカシア蜂蜜 10g
作り方
1.くるみは170度に予熱したオーブンで10分素焼きにします。
(素焼きしているものを使う場合はそのまま使用できます。)
2.冷めたら5分ほど水に浸水させておきます。
3.クランベリーとブランデーを耐熱皿に入れて、ラップをかけずに電子レンジ600wで1分加熱しそのまま冷ます。
4.どちらも水気をしっかりと切っておきます。
5.パン生地の材料を計量します。
6.水に蜂蜜とドライイーストを溶かします。
7.別のボウルでライ麦粉・準強力粉・塩をホイッパーでしっかり撹拌します。
8.蜂蜜とドライイーストを溶かした水を注ぎます。
9.ゴムベラでひとまとまりになるまで混ぜ、ラップをかけて30分休ませます。(オートリーズ)
この時はまだ混ぜただけなので持ち上げ少し引っ張ると生地はすぐにちぎれる状態です。
30分経過すると下の写真のように透けるグルテン膜が出来始めており、引っ張ると長く引き伸ばせます。(伸展性のある生地になっています)
10.生地の外側を内側に折り込むように約40回ほど捏ねます。
11.ラップをかけて30分休ませます。
12.これでグルテンが生成されかなり繋がった状態になります。さらに生地の外側を引っ張って伸ばし中心に折りたたむ作業をボウル一周分繰り返します。(パンチ)再びラップをかけて30分休ませます。
13.もう一度12の工程(パンチ)を繰り返し30分休ませます。
14.水気をしっかりと切ったくるみとクランベリーを加えてボウルの中(もしくは台の上でも可能)で切るようにしながら満遍なくフィリングを混ぜ込みます。
15.丸めてラップをかけ室温(25度前後)で約2倍になるまで一次発酵を取ります。(目安は1.5〜2時間)
16.約2倍になったら一次発酵完了です。
17.5分割にして丸めボウルやタッパーを被せ乾燥を防ぎベンチタイムを15分とります。ベタつくのでしっかり強力粉で打ち粉をする。濡れ布巾はくっつくので使用しないでください。
18.クリームチーズを20g×5個分準備します。
19.生地を軽く広げクリームチーズを包んでしっかりととじる。この時表面にくる側(クープを入れる面)の生地が厚くなりすぎないよう成形するとクープを入れた後綺麗に割れてクリームチーズがしっかり覗きます。
20.キャンパス生地に打ち粉をして生地をのせ、ラップなどはかけずに室温で二次発酵を30分取ります。
21.2次発酵完了に合わせてオーブンに天板をセットしスチームを入れ250度に予熱する。スチーム機能がない場合は湯を張ったココットを天板の隅に置くと良いです。
22.発酵完了した生地をクッキングシートを敷いた取板の上に移動させカミソリの刃でクリームチーズが見えるまで生地の中央にクープを深く入れます(ハサミでも可能)。
23.高い位置から霧吹きで水を軽くかけ、温めた天板にクッキングシートを滑らせるようにして移し入れ、250度のオーブンでスチームをかけて約15分前後(様子を見て)焼き上げます。
24.焼き上がったらオーブンから取り出し、粗熱が取れたら仕上げ用の蜂蜜をクープの開いた部分にかけて完成です。
オートリーズをとり、しっかりグルテンが生成されたパン生地なのでしっかり捏ねる工程がなくフィリングの多いパンでも重くならずボリュームのある膨らんだパンに焼き上がります!
いかがでしたか?
オートリーズを使うことで、捏ねるのが難しい生地やハード系のタンパク質の少ない粉でもしっかりとグルテンをつなぐことができ、しっかりと捏ねなくてもボリュームのあるパンが焼けるようになります。
一見難しいと思われがちですが、混ぜて休ませるという簡単な工程ですのでぜひチャレンジしてみてください!
また手ごねの方はいつものパンを焼くときにオートリーズを取り入れて捏ねる時間を短縮してみるのもおすすめです。
富澤商店ではご紹介したレシピ以外にもオートリーズをとるパンのレシピをご紹介しています。こちらもぜひお試しください。
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コラム執筆:けいちょんさん
イーストだけでなく数種類の自家製酵母を使い、完全独学ながらお家で作れる「簡単だけど本当に美味しい家族が喜ぶパン」を日々研究中です。