こんにちは。富澤商店クオカスタジオで洋菓子講師をしている舘野です。
今回は特宝笠と宝笠ドゥノールの徹底比較がテーマです。同じ「宝笠」という名前を冠した2つの薄力粉。どんな共通点・差異点があるのか、基本的な洋菓子の生地で作り比べてみました。
「口どけの良い国産小麦を探している」「特宝笠が好きだけど国産小麦に興味がある」「小麦粉マニア」な皆さんはぜひご一読ください。
スペックの違い
蛋白 | 7.6±0.5% |
---|---|
灰分 | 0.35±0.02% |
蛋白 | 8.5±1.0% |
---|---|
灰分 | 0.40%以下 |
大きな違いは小麦の産地。特宝笠が外国産であるのに対し、宝笠ドゥノールは国産です。
特宝笠といえば「口どけのよさ」「軽やかなふんわり感」ですが、国産小麦の薄力粉は重めの仕上がりなることが多く、そのような印象を持ったことはありません。今回のテスト結果はどのように出てくるでしょうか?
そして、蛋白分(グルテンのもと。生地の骨組みとなる)と灰分(小麦の旨みの強さ)は宝笠ドゥノールの方が少し多いです。
小麦粉そのものを見比べてみると、体積や色味などに違いはあまりなく、キメが細やかで空気を含んでいます。ふんわりしたお菓子が焼けそうだなという印象を持ちました。
スポンジ生地を作って比較
ここからは実際にお菓子にして比べてみます。
まず基本のスポンジ生地で比較します。使用したレシピはこちら。
特宝笠と言えばスポンジ生地。宝笠ドゥノールでもその良さが感じられると嬉しいな、と取り掛かりました。
リボン状に泡立てて、粉が見えなくなるまで混ぜたら牛乳とバターを加え、生地にツヤ感が出てくるまで混ぜ、最終比重を0.43に合わせて焼きました。
ふだん使っている粉よりも多く混ぜたと思います。粉の軽さに驚きました。焼いた翌日にカットして確認しました。
見た目
大きな違いは感じません。
どちらもふわふわとキメ細やかです。宝笠ドゥノールの方が少しだけ高さがあります。
食感
大きな違いは感じません。
どちらも口どけが抜群です。宝笠ドゥノールの方がわずかに弾力があります。
味わい
違いがあります。
特宝笠は小麦の風味は強く主張せず、スポンジ生地全体として甘く優しい味わいという印象です。宝笠ドゥノールはそこに国産小麦特有の優しい風味、コクや余韻が加わります。
総括
今回のレシピでは味わい以外は大きな違いを感じませんでした。
実際にはショートケーキなどでクリームと合わせて使用することが多いと思うので、次の比較もご参考ください。
ショートケーキを作って比較
焼いたスポンジ生地を1.5cmにスライスして軽くシロップをうち、生クリームと苺をサンドしておき、翌日に確認してみました。
食感&味わい
違いがあります。
特宝笠はシロップやクリームの水分が生地に染み込み、ジュワッと抜群の口溶けです。クリームや苺の存在を引き立てます。
宝笠ドゥノールは水分が染み込んでも、生地の弾力はそのまま感じられます。生地とクリーム、苺の重なりを楽しめます。
総括
スポンジ生地単体よりも違いをはっきり感じました。
特宝笠で作る口どけの良いショートケーキは唯一無二と実感。
スポンジの存在感(味わい・食感)をプラスしたい場合は宝笠ドゥノールがおすすめです。今回のタイミングでは比較していませんが、他の国産小麦よりも口どけやふんわり感は優秀だと思うので、軽やかなショートケーキにおすすめの国産小麦だと思いました。
シフォンケーキを作って比較
次に基本のシフォンケーキで比較します。使用したレシピはこちら。
宝笠ドゥノールの説明にある「もっちり感」。水分が多い生地ほど感じやすいだろう、と期待感を持って取り掛かりました。
最終比重は0.40に合わせて焼きました。焼いた後は冷めたら型から外し、冷蔵庫で保存。焼いた当日は風味が落ち着いていなかったので、翌日に確認しました。
見た目
大きな違いは感じません。宝笠ドゥノールの方が少しだけ高さがあります。
食感
違いがあります。
特宝笠は食べるとふんわりとソフトな弾力を感じたのちにスッと口溶けます。
宝笠ドゥノールは「もっちり」とまではいきませんが、口の中でまとまる感覚があります。口溶けが良いので、スフレのような印象も持ちました。
味わい
違いがあります。スポンジ生地の印象と同様です。
総括
この先にも比較が続きますが、シフォンケーキの食感がいちばん2種類の小麦粉の違いを感じました。
宝笠ドゥノールの「もっちり」に近い雰囲気は他の国産小麦でも同様にありますが、口溶けが良いことで口残りがなく、シフォンケーキの魅力である軽さを損なわないと感じました。
パウンドケーキを作って比較
次に基本のパウンドケーキ(カトルカール)で比較します。使用したレシピはこちら。
焼き上げた翌日にカットして比較しました。食感と味は焼き面ではなく生地の白い部分で評価しました。
見た目
大きな違いは感じません。
食感
違いがあります。
特宝笠は生地の歯応えはあまりなく、とてもきめ細やかでスッと口どけます。
宝笠ドゥノールは初めのひと噛みだけわずかに歯応えがあるが、その他は特宝笠とよく似ています。どちらも当日、翌日、数日後としっとりとソフトな感じが増しました。
味わい
違いがあります。
特宝笠は小麦の風味は強く主張せず、バターや卵の優しい風味を引き立てています。
宝笠ドゥノールは国産小麦特有の優しい粉の甘み・旨みが感じられます。他の国産小麦よりも主張が穏やかで、バターや卵のおいしさもしっかり感じました。
総括
食感と味わいに違いが出ます。
他の比較結果と重複しますが、口溶けの良さ・小麦の風味の控えめさがお好きでしたら特宝笠を、そこをベースに小麦の風味を足したい・ほんの少しだけ生地に重さが欲しいという場合は宝笠ドゥノールがおすすめです。
クッキーを作って比較
最後にアイスボックスタイプのクッキーで比較します。使用したレシピはこちら。
クッキーは小麦粉の割合が多いお菓子なので食感や味に違いがはっきり出るかな?と思いながら取り掛かりました。
1cmにスライスし、シルパンを使って焼きました。焼いた当日は風味が落ち着いていなかったので、翌日に確認しました。
見た目
よく見比べると、宝笠ドゥノールの方がエッジがしっかり出ていて、少し高さがあります。蛋白分が少し多いのでその影響だと思います。
食感
大きな違いは感じません。
味わい
違いがあります。
特宝笠は粉の風味が主張しないのでバターの風味が感じやすいです。
宝笠ドゥノールは国産小麦特有の優しい粉の甘み・旨みを感じた後にバターの風味を感じます。
総括
味わいの違いは明確でしたが見た目と食感の違いは少し分かりにくかったです。
クッキーの配合はガレット、ラングドシャ、スノーボールなど種類によって大きく変わるので、ものによっては違いがはっきり出るかもしれません。
口溶けの良いクッキーを作りたいと思ったら宝笠シリーズを試してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
ここまでお菓子ごとに比較してきたので、全体で共通している点をまとめて終わろうと思います。
2種類の共通点は、とてもキメ細かく密で口どけの良い生地が作れることです。
風味の面では、特宝笠は主張は控えめで他の素材を引き立てます。
宝笠ドゥノールは国産小麦の優しい甘みや旨みを感じられます。「灰分(小麦の風味の強さの指標)」は他の国産小麦と比べて多くないので、他の素材の風味もしっかり感じられ、調和していると思いました。
食感のうち、歯応え・弾力はお菓子やレシピの種類によって違いを感じました。蛋白量・小麦の産地の違いに由来していると思います。
私は特宝笠をあまり使用したことがなかったのですが、今回のテストでショートケーキを食べて口溶けの良さを実感し、長年愛される理由がわかった気がしました。
また、宝笠ドゥノールは「とても口どけの良い国産小麦粉」であり、これは他の小麦粉にはない特長だと思います。ぜひ試してみていただきたいです。
今回の比較をする前は「国産小麦で宝笠の魅力がきちんと出るのかな?」と大変失礼ながら(!)懐疑的だったのですが、テストを進めるにつれ「宝笠ドゥノールすごい!」と魅力にのめり込みました。こんな小麦粉欲しかった!と思ったのです。
皆さんも興味を持たれたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
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コラム執筆:舘野真里さん
製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。