卵について知ろう!卵黄や卵白の性質とは?パン生地にどんな効果がある?

基本・初心者

こんにちは。富澤商店にてレシピ著者をしておりますマスダアイミです。
パン作りで使う副材料のひとつに卵があります。皆さんは卵を入れてパンを作ったことはありますか?

パンは材料を最低限にすると、小麦・塩・酵母・水のみで作ることが出来る為、必ずしも卵を入れる必要は無いのですが、生地に配合することで様々な効果を得られます。

今回は卵の性質から、パン生地にどんな効果を与えるか?深掘りしていきたいと思います。

卵について知ろう!~サイズの違いについて~

一般的に食用とされる鶏卵けいらんは「無精卵」といい、ヒナにならない卵です。
鶏卵を大きく分けると「卵黄」「卵白」「卵殻」「卵殻膜」に分けられます。
私達が使うのはだいたい卵黄と卵白です。卵1個の卵黄と卵白の割合は大体「卵黄30%・卵白60%」となります。
よく卵が材料にあるレシピで「卵は何サイズを使用するのか?」という質問を見かけますが、特に記載がない場合はMサイズを使用するのをお勧めします。
実は卵黄は基本的にどのサイズを買ってもだいたい同じ量が入っていて、卵白の多さでサイズが変わります。(ただし小さいサイズの卵は少し卵黄が小さい場合があります。)

殻を割った状態の卵の重量を見てみると、だいたいMサイズが50g、Lサイズが60gです。
卵黄の重さはだいたいどちらも20g前後なので、重さの差は卵白の量の違いになります。

卵について知ろう!~卵黄と卵白について~

卵白について

卵を割った時、卵白に粘りがあってぷりんとしていたり、逆にさらさらの液状だったり…。
いつも同じ質感じゃない…!そんな経験をしたことはないでしょうか?
その理由は卵白の性質にあります。

卵白は水分とたんぱく質が主要成分となります。
水分が90%近いのでほぼ水分です。(水分90%・たんぱく質10%)

卵白を泡立てる例

粘性のある卵白のことを「濃厚卵白」、さらさらの卵白のことを「水様卵白」といいます。
これらの違いは、たんぱく質の中のオボムチンという物質が多く含まれていると卵白が粘性になり、「濃厚卵白」となります。
そしてオボムチンの構造は時間が経つにつれ緩んでいく性質があり、水様卵白になっていきます。
ですので、「濃厚卵白」が多いか?は卵の鮮度の重要な指標になります。
そして卵白のたんぱく質はこのオボムチンだけでなく、10種類以上のタンパク質が含まれていて、それらが卵白の泡立ちの重要な要素になっています。

卵黄について

卵黄は、卵白よりもたんぱく質、脂質、灰分、カルシウム、リン、ビタミンを豊富に含みます。
鶏卵内では卵黄膜という膜に包まれている為、卵白と混ざらずに存在しています。

この卵黄膜の強度も鮮度に関係があります。
卵を割ったら卵黄がすぐ割れて卵白と混ざってしまった…と、そんな経験はありませんか?
卵黄膜は時間とともに弱くなる性質があるため、鮮度が悪い卵だとそのような事が起こります。
卵黄の成分は卵白には入っていない「脂質」が水分に次いで多く、その卵黄脂質の中でも「レシチン」を含んでいるのが特徴です。

乳化の例

リン脂質であるレシチンは乳化剤の役割があり、マヨネーズやアイスクリームなどには欠かせない物質です。(乳化とは、本来混ざりあうことのない水と油が混ざりあう現象です。卵黄はこれらを繋げる役割をします)

卵がパンに与える影響について

卵はパンの風味を良くし、美味しそうな色味を出してくれるだけではなく、生地そのものに色々な効果を与えてくれます。
パンに卵を加えたらどのような事が起きるのか?効果についてお伝えしていきます。

卵黄を入れる効果

①生地の伸びがよくなり、膨らみやすくなる

卵を加えた生地は伸びが良くなります。
これは卵黄が入っている場合に顕著に起こります。(卵黄→全卵の順で効果が出ます。)

卵黄に含まれているレシチンが(正確にはレシチンとリポタンパク質)乳化剤としてはたらき、水と油が混ざりあって生地を滑らかにします。
きめ細やかで伸びの良い生地になるため、パンのボリュームが出やすくなります。

②でんぷんの老化を抑制

卵黄のレシチンにはでんぷんの老化を抑制する役割があります。
そのため、卵黄や全卵を生地に入れることによって、パンのパサつきを抑制し、美味しさを持続してくれる効果があります。

③冷凍パン生地を守る

パン生地は冷凍されると、基本的にイーストが冷凍障害を受けるので膨らみが多少悪くなります。
卵黄を添加することで生地を保護し、イーストがダメージを受けるのを阻止する効果があります。

➃栄養価アップ


小麦のたんぱく質は、アミノ酸スコアで見ると50程度とあまり高くない数値なのですが、卵を追加することで足りない栄養素を強化することができます。

アミノ酸スコアは、食べ物に含まれる「たんぱく質」の量と「必須アミノ酸」がバランス良く含まれているかを数字で表した指標となるもの・100に近いほど栄養価が高いとされています。

パン自体の栄養のバランスを整える上で、卵を生地に入れるのはメリットと言えます。

ここまでは主に卵黄が入る事でのメリットをお話しましたが、次項は卵白を入れた時の効果についてお伝えします。

卵白を入れる効果

パンの骨組みを補強して、歯切れの良い食感を生みます

卵白のたんぱく質がグルテンを補強するので、骨格が強くなり膨らんだ生地がしぼみにくくなります。
また、卵白内のたんぱく質のオボアルブミンが熱で凝固して生地に歯切れの良い食感を生み出します。
ただし、卵白の配合量が増えるとしっとりさに欠け、固い食感になり、ボリュームが抑えられた焼き上がりになります。

卵黄生地と卵なし生地での比較

卵を配合した生地と卵なし生地で、卵以外の材料は同じで同環境にて生地を仕込み、焼いてみました。
今回は特に影響があるとされる卵黄のみを配合してみました。

左:卵入り 右:卵なし

生地の時から違いを感じました。卵なし生地と比べて、卵入り生地は薄くやわらかく伸びる生地になっていました。

左:卵入り 右:卵なし 
左:卵入り 右:卵なし 

そして焼成後。
まず卵配合の生地は焼き色が強く出ました。卵黄の色素が焼き色に影響しています。
クラムも黄色く、ほんのり卵の香りがします。
ボリュームも卵配合の方が大きく膨らんでいます。
しっとり、柔らかな食感になりました。

翌日以降も、卵配合の生地の方が柔らかさを維持していました。
やはり卵を入れるとボリュームアップ、老化抑制等のメリットがありそうです。
柔らかく、ボリューミーできめ細やかなパンを焼きたい時には、卵を入れて仕込んでみると良さそうです。

材料の特徴を知り、生地の変化を楽しもう

パン作りは小麦粉の他に様々な材料を配合して焼き上げます。ひとつひとつの材料の特徴や効果を知っておくと、自分で自在に好きな味・食感のパンを作り出すことが出来ます。生地の変化を感じて楽しむのも手作りの醍醐味です。
卵を入れた生地はふんわりしてとても美味しいです。是非卵入りのパン、作ってみてください!

全卵入りのパンレシピ

▼合わせてチェック!

富澤商店オフィシャルクリエイターのけいちょんさんが書かれた、
卵とパン作りをテーマにしたこちらのコラムも合わせてご覧ください。

パン生地作りにおける卵の役割とは?水・卵黄・卵白の違いを徹底比較
パン生地作りにおける卵の配合割合は? 膨らみや色付きの違いを徹底比較

コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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