こんにちは!お菓子教室主催・熊谷裕子です。
今回は前後半に分けて、お菓子作りの材料や、途中工程のもの、完成品の冷凍について、ご紹介します。お家でお菓子作りをする上でどうしても出てしまう「材料のちょっとだけ残り」。ありますよね!
そのまま放置してダメにしてしまうのはもったいない、でも次いつ使うか分からない、、。また上手にお菓子が出来たけど、たくさん作ってしまった、全部はすぐ食べきれない、、。
そんな材料、お菓子はどうやって保存するのがベストでしょうか。一番の対策はすぐに消費!ですが、それが追いつかないときは「冷凍」です。とはいえそのまま冷凍庫に入れるだけでは乾燥したり、冷凍臭がついてしまいますし、どんな材料でも冷凍できる訳ではありません。
ここでは私の経験値からお伝えしたい、お菓子作りで無駄なく美味しく材料を使いこなす「冷凍テクニック」、今回は前編「お菓子作りの材料の冷凍」についてのご紹介です。
お菓子材料の冷凍について
沢山買ってしまった材料、ほんのちょっと使い残してしまった材料、どうしよう、、というとき、「冷凍」は無駄なく使い切れるよい保存方法ですが、万能というわけではありません。
冷凍できるもの(冷凍しても遜色なく再び使えるもの)、できないもの(冷凍して解凍すると大きく形や風味、食感を損ねてしまうもの)をまずは確認しましょう。
✳︎基本的には材料の品質表示に従って保存をしましょう。どうしても「消費期限までに使いきれなさそう」なときは冷凍がおすすめ、が、基本です。
✳︎私はこうしています、というおすすめですので参考にしていただきご自身で判断するようにしてください。
冷凍保存に向いてる材料
バター
冷凍しても冷蔵解凍すれば、ほとんど変わりなく使用できます。ただし匂いがつきやすいので、しっかりと銀紙に包んだまま、さらにラップ、密閉袋に入れて乾燥や匂いを防ぎましょう。使うペースによっては小分けにしても便利です。解凍は必ず冷蔵解凍で。
よつ葉バター(食塩不使用) / 450g
ナッツ類
ナッツ類は腐ったりカビが生えることはあまりありませんが、ナッツにたっぷりと含まれる油脂が酸化してくると、酸化臭が出て油くさくなります。冷暗所か冷蔵庫で保管し、「夏を越えさせない」のがベストですが、長く保管するときは冷凍も可。
特にアーモンド スライスやパウダーなど、細かくしてあるものは表面積が増えるので、より酸化しやすくなります。しっかりとビニール袋と密閉袋で二重にしてから冷凍しましょう。
ナッツとキャラメルのペーストからできるプラリネペーストや、ピスタチオペーストなども酸化しやすいので、古くなる前に冷凍がおすすめ。
ピスタチオナッツは綺麗なグリーン色を活かしデコレーションに使うことが多いですが、古くなると退色してきます。私は買ったらすぐ冷凍庫で保管。使うとき使う分だけ少量の水と一緒に容器に入れ、レンジにかけてブクブクと10数秒沸騰させ、水分をよく乾かしてから使っています。湯がくことで発色し、綺麗な色味が出ますよ。
ドライフルーツ
ドライフルーツは基本的に賞味期限がある程度長いので、冷暗所、冷蔵庫で保管できますが、これも沢山あったり長期保存したいときは古くなる前に冷凍してしまうのもひとつの方法です。
卵白
お菓子作りではカスタード系など卵黄だけ使うものが多く、卵白だけ余ってしまうことが多々あります。卵白を使うお菓子(ラングドシャやフィナンシェ 、メレンゲ、シフォンケーキなど)を作るときまで取っておきたいものですが、割った卵はすぐに傷むので、卵白も冷凍がベスト。小さい容器に1個分ずつ冷凍するのもよし、沢山あるときは密閉袋で冷凍するのもよし。この時薄く平らに冷凍しておくと、少し常温に置くだけで簡単に割ることができ、必要な分だけ出して解凍することができます。
ナパージュ類
ロイヤルミロワールヌートルや上掛け用ナパージュなど、ケーキをつやつやに仕上げるデコレーション素材は便利ですが、買った分全ては一回で使いきれないことも。次に使うのはいつか分からない、、そんなときはいっそ冷凍してしまいましょう。必要量だけ常温に出せばすぐに使える状態になります。
(詳しくはナパージュとは?|基礎知識とテクニック&レシピ14選もお読みください)
パウダー類
抹茶や紅茶などのお茶パウダーや、紫芋、かぼちゃなど野菜パウダーは、古くなると風味や色が弱まったり褪せてしまうことも。
フレーバーや色を活かすパウダー類も冷凍すると、常温保管よりよい状態で長く保てます。
マロンペースト、クリーム、渋皮煮
マロンペーストやマロンクリーム、栗の渋皮煮などマロン製品も、どうしても使い残りが出てしまうもの。缶詰のマロンペーストやクリームは小分けにしてラップに包み、平らにして密閉袋に入れて冷凍しましょう。栗渋皮煮も小分けにして密閉袋に入れ、平らにして冷凍します。解凍は常温または冷蔵庫で。まったく問題なく使用できます。
フルーツの缶詰
あんず缶や洋梨缶など、フルーツの缶詰も全部使ってしまうのか一番良いですが、やっぱり残ってしまうことも。
浸るくらいのシロップと一緒に密閉袋に入れ、平らにして冷凍します。
ただし解凍すると少し果肉が柔らかくなってしまうので、そのままトッピングなどには不向きです。タルトやバターケーキに焼き込むなどして使うなら問題ありません。その際は十分水気を切り、キッチンペーパーで水分をとってから使いましょう。
生フルーツ
残ってしまった生フルーツ、基本的には冷凍はおすすめしません。解凍したとき離水が大きく出てしまうからです。ですがどうしてももったいない!というときには冷凍し、(大きなものや皮付きのものは皮を剥いて可食部だけにし、カットしましょう)ジャムやコンポートに利用しましょう。冷凍したベリーをマフィンやバターケーキなど焼き菓子に少量焼き込むこともできます(沢山入れると水分が出てびしょびしょな焼き上がりになるので注意)。 生フルーツのままより、加工して冷凍のほうがおすすめです(後編でご紹介します)。
冷凍しないほうが良い材料
チョコレート、粉類
これらは冷凍しないように。チョコレートは基本的に長期保存可能な素材ですし、それでも冷凍すると非常に低温になり、室温に出した時に湿気を呼び、ブルーム現象(白くなりザラザラした食感になる)を起こしやすくなります。粉類も同様に湿気が害虫やカビの原因となるので、冷暗所または冷蔵で保管し、早め使いましょう。
砂糖類、蜜類、酒類
糖類、酒類も長期保存食品なので、冷凍する必要はありません。上白糖などかえって固まって使いにくくなったり、はちみつや水飴などは固くなって計量しにくくなったりすることも。
コアントロー / 50ml
卵(卵黄)
卵黄は冷凍すると離水し、分離してしまうので冷凍は不向きです。ただし10%ほど砂糖を加えると、冷凍しても元通りに使えるようになります(商品として販売されている冷凍卵黄も加糖されています)。使用するときは砂糖が入っている分量を考えて計量する必要があります。
クリームチーズ
これも冷凍すると解凍時に離水するので、冷凍はおすすめしません。私はどうしも冷凍したいときはレアチーズケーキやベイクドチーズケーキにして冷凍します(後編で詳細をご紹介する予定です)。
キリ クリームチーズ / 1kg
生クリーム
生クリームそのものも冷凍すると、解凍時はザラザラとしてしまい、ホイップしても泡立たないので、冷凍には向きません。
少しだけ余りがちな生クリームの使い方
よく「ちょっとだけ」生クリームって余ってしまいますよね。そんなとき私の使い方は…
- お料理(クリーム煮やクリームソース、オムレツなど)に使う
- キャラメルソースを作ったり(バナナやアイスクリームにかけたり、お菓子作りに使う)、それを冷凍する
- (余っている)チョコレートと溶かし合わせ、生チョコ(ガナッシュ)にしたりそれを冷凍する。ほんのちょっとおやつになる分だけ作ります。
参考レシピ
ショコラ フレ (Chocolat frais)
◎生クリームそのものは冷凍不向きですが、ムースやババロア、レアチーズケーキなどにしてしまえば冷凍も可能です(後編で詳細をご紹介する予定です)。
冷凍するときの注意点&使用するときのポイント
各項目でもご紹介しましたが、材料やお菓子を冷凍するときの基本は「臭いや乾燥を防ぐためにしっかり密閉」と、「冷凍後は2〜3週間を目安に消費」です。
凍らせる時のポイントはなるべく平らな形状にすること。
急速に凍ったほうが解凍時に離水しにくく、また解凍も早くできます。必ずラップで包むだけでなく、密閉袋や容器に入れて2重包装に(アルミ素材の袋のほうがより冷凍臭を予防できます)。材料名のラベルや冷凍日の記入も忘れずに。
解凍は包んだまま(むき出しだと水滴が直接つくので)、ゆっくり冷蔵解凍がベストです。ものによっては常温でも大丈夫なものや、焼き直しが必要なものもありますので、各項目を参照してください。
冷凍するといつまでも大丈夫、、!と思いがちですが、やはり徐々においしさが失われていくので、早めに頂きましょう。
最後に
いかがでしたか。少し余ってしまった材料なども、冷凍を活用すれば、無駄なくお菓子作りが楽しめますね。次回後編では「お菓子作りの途中工程のもの、完成品の冷凍」について、ご紹介します。おたのしみに。
コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生
熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。 文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。