クープとは?|役割と入れ方のコツ&おすすめレシピ3選

パン作り

最近、秋を意識してマロンを使ったパンの試作中のけいちょんです。
夏もまだこれからだというのに、試作しては毎朝食べながらベストを研究中です。

さて、ハードパンを焼くときには必ずと言ってもいいほど入れる「クープ」ですが、クープの入れ方は難しいですし、絶対入れなきゃダメなの?そもそもなぜ入れるの?と苦手意識があったり疑問に思っている方も多いはず。そんなクープについてお話したいと思います!

「クープ」とは?

「クープ (Coupé)」とはフランス語で「切り取られた」という意味があります。
パンにおける「クープ」とはその名の通り、ナイフやハサミを使って切り込みを入れること(切り込みを入れた部分)を指します。
単に飾りとして入れることもありますが、ほとんどの場合は大きな役割があって、あえて切り込みが入れられています。

「クープ」の役割とは?


クープは主に

・釜伸びをよくする
・形を良くする
・火通りをよくする

という3つの役割を持っています。

クープの役割1.釜伸びをよくする

クープが入っているパンは主にフランスパンと呼ばれるような、いわゆるハード系の「リーンなパン」が多いことにお気づきでしょうか。

「リーンなパン」とは基本的に小麦粉・水・塩とシンプルな配合で作られたパンのことで、逆にバターや砂糖などが配合されたパンを「リッチなパン」と呼びます。
リッチなパンはバターや砂糖が入ることで生地の性質は大きく膨らみやすくなりますが、リーンなパンはシンプルな配合であるために膨らみにくいというデメリットがあります。
リッチなパンは焼成の際にガスを抱き込み大きく膨らむことが容易ですが、リーンなパンはそうはいきません。大きく膨らもうとする内部からの圧力に耐えきれず、生地の弱い部分からひび割れてしまいます。

そこでクープの登場です。
クープを入れて、生地内部の湿った部分を露出させ、あえて弱い部分を作り釜伸びを助けます。

クープの役割2.形をよくする

釜伸びを助けると同時に、クープを入れることでパン生地内部から発生する水蒸気や圧力を逃すことができるので、リーンなパンでもスムーズにひび割れず形良く膨らむことができます。
またクープを複数本入れることで、独特の模様を描きながら膨らむためスタイリッシュに仕上がります。

お菓子の時も同様に、綺麗に割れるようクープを入れることがあります。

クープの役割3.火通りをよくする

クープを入れることで、パン生地の表面積を大きくすることができます。
表面積が大きくなることで火通りが良くなるため、短時間で焼き上げることができます。
特にリーンなパンは内部の水蒸気がスムーズに抜けることで、程よくもっちりとした軽いクラムに仕上がります。

クープを入れる場合・入れない場合の違いとは?

基本のソフトフランスの生地を使って、クープを入れるのと入れないのとではどのような違いが生まれるのか検証してみます。

生地を同じグラム数に分割し、同じ時間発酵をとって焼成前にクープを入れるもの入れないものを作ります。


上:クープなし
下:クープあり

同じ温度・焼成時間で焼いたものがこちらです。
まず外観ですが、クープを入れた方は横に広がるように焼け、クープがない方はバターが入っているので割れはしなかったものの、膨らみが足りないように見えます。

断面を見てみると一目瞭然。
クープが入っている方は断面が一回り大きく、気泡もしっかりと膨らんでいるのがわかります。そしてクープを入れなかった方は比較すると断面が小さく、気泡も膨らみ切らずに内層がぎゅと詰まっています。
食感も違います。クープを入れた方は全体的に軽くふんわりとし、クープを入れた部分はパリッと薄いクラムに焼きあがっています。クープを入れなかった方は入れたものと比較するとクラストもクラムもむぎゅっとやや噛みごたえがあります。

左 クープあり中 クープなし左クープなし
右クープあり

このようにクープを入れる・入れないでパンの仕上がりが違ってきます。
クープがぱっくりと開いてエッジがバリっと立つ必要はありません。エッジが立たないからと言って失敗ではありません。
しっかりクープを入れてそこから程よくガスが抜けて入れば、写真のようにエッジが立っていなくても問題ありません。
配合によりエッジが立たないものもあります。

クープ入れのコツ

クープを綺麗に入れるにはまず、よく切れるクープナイフ(剃刀)を使うことです。
包丁やペティナイフでは刃が厚いので柔らかい生地に刃が入りにくく潰してしまうこともあります。
個人的には「カミソリ刄ホルダー」と「カミソリ刃ホルダー用 両刃カミソリ」がおすすめです。

クープを入れるときには、パン生地に刃の角を当てるのではなく刃の面を当てるイメージです。点で当ててしまうと引きつれてしまうので、面で当たるようにします。
そして手首を動かすのではなく肘を横に引くようにして入れるとスパッと入りやすいです。
クープ入れは難しいですが、コツを頭に入れてイメージしながら入れるとうまくいきやすいです。ぜひ参考にしてみてください。

富澤商店でご紹介しているパンレシピでは、基本のソフトフランスをはじめ基本のイーストカンパーニュヴィエノワなどクープを入れるものがあります。

ぜひクープ入れのコツを参考に作ってみてください。

コラム執筆:けいちょんさん

けいちょん
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この著者のレシピ一覧
イーストだけでなく数種類の自家製酵母を使い、完全独学ながらお家で作れる「簡単だけど本当に美味しい家族が喜ぶパン」を日々研究中です。