こんにちは、洋菓子講師の舘野です。今回のコラムのテーマは「グレーズ」です。
「グレーズ」と聞くと何を想像しますか?私はツヤツヤとした砂糖衣がかかった、ふわふわのイーストドーナツを思い浮かべます。
そして「グレーズ」ととても似たものに「アイシング」や「グラス」がありますが、どんな違いがあるのでしょうか?
今回はグレーズとその仲間たちの違いについて、そしてグレーズやアイシングの乾かし方による仕上がりの違いを紹介します。つやっとした透明感ある仕上がりと、マットで透明感のない仕上がり。どちらも見かける気がしますが、どんな風に作り分けるのでしょうか。
みなさまのお菓子やパン作りに役立つ内容になればと思いますのでぜひご一読ください。
グレーズとは?

グレーズはドーナツやバームクーヘンを覆う、“薄く半透明の砂糖衣“のこと。
下の生地が透けるほど薄く、食感や甘さは控えめで、ツヤのある仕上がりも多いです。
英語の「glaze」(ツヤ・光沢)が元の言葉で、「ガラスのような光沢を持たせること」や「陶器や焼き物に使われる釉薬(うわぐすり)」も意味し、食品の表面に光沢を与えることを表しています。
アイシングとは?

アイシングはクッキーやシナモンロール・デニッシュにかかった“厚めの砂糖衣“のこと。
厚めなので下の生地は透けず、食感や甘さが強く出ていることが多いです。
英語の「icing」「ice」(氷)が元の言葉で、固まった際の白い見た目が氷を連想させたため、この言葉が用いられるようになったようです。
グレーズとアイシング、何が違うの?

見た目の主な違いは「厚み」と「透け感」です。グレーズが薄く透け感があるのに対して、アイシングは厚めで透け感はあまりありません。
厚みは味わいにも通じており、厚い方が甘味が強く・味の存在感があります。
どちらも主な材料は砂糖と水分で、フルーツの果汁やパウダー、甘味料、着色料などで多種多様なバリエーションができます。

アイシングの中でも卵白を用いた「ロイヤルアイシング」は、水で作るよりも乾いた時に強度やツヤが出るので、アイシングクッキーやクリスマスのヘキセンハウスなどに用いられます。
実際のところは…
グレーズとアイシングは、ロイヤルアイシングを除いてはレシピによって仕上がりが非常に似ていることも多く、日本ではあまり厳密に区別されていないと思います。
今回は、用語を定義して違いを述べてみましたが、あまり名称にとらわれず、見本写真の仕上がりやレシピの分量を参考に作るとよいかもしれません。

一つ例をご紹介します。フランスではグレーズやアイシングにあたるものを「グラスアロー(水のグラス)」や単に「グラス」と呼びます。
その為、レモンの焼き菓子を例に取ると、フランスの『ウィークエンドシトロン』の砂糖の上掛けは「グラスアロー」と呼ばれますが、イギリスやアメリカ風の『レモンケーキ』なら「グレーズ」か、ちょっと厚めなら「アイシング」と呼ばれるでしょう。
日本ではさまざまな国のお菓子やパンが親しまれてきたので、色々な呼び名がゆるやかに混ざり合っているように思います。
理想の仕上がりにするには?
さて、ここからは実際に使う時の話です。グレーズやアイシングは乾かし方や水分量(=固さ)で厚みやツヤ感に違いが出ます。
今回はこちらのレシピのレモンケーキを作り、アイシングを掛けたあと、2パターンの乾かし方で比較しました。理想の仕上がりの参考にしてみてください。
生地を焼き、冷ましたらアイシングを作り全体に上掛けします。
その後【オーブン】、又は【室温】にて乾かして違いを比べます。
乾かし方
【オーブン】上掛け後、レシピどおり180℃のオーブンに1分半入れた後、室温におく(5分ほどで乾燥)
【室温】上掛け後、そのまま室温で乾くまでおいておく(20分ほどで乾燥)
上掛け直後

オーブンから出した直後

乾燥後

2パターンの方法で乾かした結果
見た目
【オーブン】オーブンにいれるとアイシングが溶け広がり、透明感が出ます。薄くスタイリッシュなレモンケーキのイメージです。
【室温】掛けた直後から徐々に透明感がなくなり、白っぽい仕上がりです。やや厚みがあり少しレトロなレモンケーキのイメージです。
味わい・食感
【オーブン】薄めなので味わいの主張は控えめです。オーブンでしっかり乾燥しているのでシャリッと食感を感じます。
【室温】オーブン乾燥よりやや厚く掛かっているので、味もそのぶん主張します。食感のシャリッと感は控えめで生地にやわらかく馴染みます。

アイシングの際のポイント
オーブンにいれると溶け広がって薄くなるので、厚めに掛けたいときはあらかじめアイシングの水分を控えめに(かために)作る方法もあります。
今回は2月の乾燥した時期にテストしたので、室温乾燥もスムーズでしたが、梅雨時期や雨の日は乾燥しにくいので、オーブン乾燥のほうがよいかもしれません。
また、生地の粗熱が残っている状態でかけるとアイシングが広がりやすいので、室温乾燥でもオーブン乾燥のような結果に近づいたりもします。
使用した商品
離型油をスプレーして使用。型離れよく、焼色もきれいに付きました。
おすすめ商品
お菓子やパンの仕上げをイメージして楽しむ

グレーズやアイシング掛けはお菓子やパンの最後のお化粧のような役割なので、少し緊張する場面でもありますが「こんな風なアイシングにしたいな」というイメージから逆算して水分量や乾燥方法を調節できるようになるととても楽しいと思います。今回のコラムがその参考になれば幸いです。
コラム執筆:舘野真里さん

製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。