はじめまして。
今月からコラムを連載させていただくことになりました、けいちょんと申します。
まず初めに自己紹介をさせていただきたいと思います。私は夫と娘、愛犬と九州に住むパン作りが大好きなごくごく一般的な主婦です。大きな肩書きはありませんが、ブーランジェリーでのパート経験や独学で得た知識をもとに、少しでも美味しいパンを焼くことに日々奮闘しています。その努力が功を奏し、昨年よりTOMIZでパンレシピを中心にご紹介させていただいております。
コラム第一回目の今回は、そんなTOMIZ掲載レシピの中でも特に人気でレーズン嫌いさんが「悪魔的な美味しさで大好きすぎるパン」とまで言ってくれる『至福の黒糖レーズンパン(ぶどうパン)』を掘り下げてみたいと思います。
「至福のレーズンパン」最大のポイントは?
冒頭で「レーズン嫌いさんが」なんて言ってしまいましたが、 基本的にレーズンパンはレーズン好きの方が食べることが前提のパンなので私は惜しみなくたっぷりとレーズンを入れます。ただそのまま入れるのでは生地の水分が乾いたレーズンに吸い取られてパンが美味しく無くなってしまいます。それでは本末転倒、何と言っても主役はパン生地。あくまでパンなのでパン生地も美味しくなくてはいけません。それを両立させるのが「蒸す」という工程です。
一般的にはお湯に浸けて戻すことが多いレーズンですが、そうするとうっかり漬けすぎてレーズンが水っぽくなったり甘みが抜けてしまったりと失敗も多い工程。私もついうっかり忘れて放置してしまいがちです。それに比べ、蒸すという工程はちょっと手間がかかりますがレーズンをふっくらと中まで瑞々しく戻すことができます。
あえて切り混ぜる!工程に隠された美味しさの秘密
そしてレーズンを混ぜ込む工程にも実はポイントが。
レシピでは手捏ねの場合も機械捏ねの場合もここからは手で混ぜ込む方法を推奨しています。しっかり戻ったレーズンは潰れやすいので機械で捏ねてしまうと水分が出てべちゃっとしてしまいます。なので台に出して切り混ぜるのですが、この切り混ぜるという方法によって、あえて少し潰れるレーズンを生みます。
すると潰れたレーズンが生地全体に散りレーズンの味わいを濃くしてくれるのです。レーズンが多い部分はもちろん、レーズンが偏っていてもどこを食べてもレーズンの風味を感じる味わい深いパンになります。
それでは、改めてレーズンパンの作り方をおさらいしてみましょう。
「至福の黒糖レーズンパン(ぶどうパン)」の作り方
材料
- 強力粉(キタノカオリ) 125g
- 北海道産強力粉(ゆめちから100%) 125g
- 黒糖 25g
- 塩 3.7g
- 素焚糖 12.5g
- サフ セミドライイーストゴールド(冷凍) 2.5g
- 湯 30g
- 牛乳 175g
- バター(食塩不使用) 30g
フィリング
- 有機レーズン 150g
道具
- 中華セイロ 18cm / 身 1個
- 中華セイロ 18cm / 蓋 1個
- ガス抜き めん棒 1本
- 蓋付食パン焼型1号1.0斤 1個
- カーレックス・スプレー 1本
準備
・レーズンは細かい枝がないか確認し、蒸し器やせいろで15分じっくり蒸す。蒸し上がったら乾燥しないように冷ましておく。
※蒸し器がない場合は鍋に沸騰させた湯を張り、マグカップやココットをひっくり返して置く。ペーパーを敷いたザルにレーズンを広げ、やけどに気をつけてざるをココットなどの上に置き、蓋をして15分蒸すといい。その際は水滴が落ちないよう布巾を鍋蓋と鍋の間にかませる。
お湯に漬けて戻すと皮が弱くなり、こねる時に潰れやすくなってしまう。また甘みも味も抜けてしまうため湯に浸さず必ず蒸して戻す。
生地作り
パン生地の材料を計量する。湯で黒糖を溶かしておく。溶かした黒糖を牛乳と合わせる。
強力粉・素焚糖・イースト・塩をボウルで合わせてホイッパーでしっかり撹拌する。黒糖を合わせた牛乳を加えてゴムベラでよく混ぜる。ひとまとまりになったら台に出して薄いグルテン膜が確認できるまで25分ほどしっかりとこねる。
バターを加えてなめらかになるまで捏ねる。蒸して冷ましたレーズンを生地と合わせる。ホームベーカリーで生地をこねる場合も、レーズンの入れ方はここから同じ手順で丁寧に混ぜ込む。
生地でレーズンを包みこみ、スケッパーを使い切り混ぜするとあまりレーズンを潰さずにしっかりと混ぜることができる。方向を変えながら数回繰り返して切り混ぜをし、全体にレーズンが満遍なく行き渡るように軽く捏ねてまとめる。
一次発酵
ある程度まとまったら、外に飛び出しているレーズンを中に巻き込みながらまとめて丸め、ボウルに入れて室温25度前後で約1.5~2時間、2倍になり指を真ん中にさし、開いた穴が塞がらなくなるまで一次発酵をとる。
ベンチタイム
発酵が完了したら、2分割にして丸める。固く絞った濡れ布巾や大きめのタッパー等をかぶせて乾燥を防ぎながら20分間ベンチタイムをとる。
成形
めん棒でガスを抜きながら丸く広げる。左右を折って3つ折りにする。折り目に空気が入らないようしっかり押さえる。
手前からくるくると巻き、オイルスプレーをかけた型に入れる。乾燥しないように気をつけながら30度前後で2次発酵を60~80分ゆっくりとる。発酵完了目安は、生地の頂点が型の3~4センチ上に来るくらい。
焼成
霧吹きで軽く水をかけて190度に予熱したオーブンで25分ほど焼く。焼きあがったら、型ごと台などに打ち付け熱いガスを抜き、型から外してケーキクーラーなどに移し粗熱を取って完成。
※所要時間=発酵時間や冷やし固める時間など、環境や設備などによって差が大きく出るものは除く
成形によって変わるクラムの違いを楽しもう!
こちらのレシピでは2つに分割して俵型に成形する方法とワンローフと呼ばれる大きな生地をナマコ型に成形して型入れする方法をご紹介しています。
2つの成形によってクラムの状態が変わります。
<俵成形> | |
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俵成形の場合は麺棒で薄く伸ばして折り畳み、さらに麺棒をかけて伸ばすためクラムがきめ細かくなり、生地も締まって焼成時に釜伸びしやすい特徴があります。 弾力のある食感でヒキも強めに仕上がります。 |
こちらは1.5斤用の食パン型で作るレシピですので、合わせて参考にしてくださいね。
このように、実は配合だけでなく成形によっても食感や釜伸びの仕方が変わります。好みに応じて配合を変えるのではなく、まずは成形を変えてみるのも好みのパンに近づける第一歩です。
「焼きたて」は食べないで!?
美味しそうに焼けたパンは1秒でも早く食べたくなってしまうもの。焼きたてを手で割ったりすると美味しそうな湯気が立ち昇ってたまらない!
でもそれ、ちょっと待って!
その湯気を逃してしまうのはすごく勿体無いんです。パン生地の中にあるべきだった水蒸気を逃してしまうと、割った部分からどんどん水分が飛び生地がパサつく原因になってしまいます。
こんがりと焼けたクラスト(表皮)は水蒸気を閉じ込めてくれている大切な役割を持っています。すぐに食べたい気持ちをグッと抑えて、パンが落ち着くまで割ったり切ったりせずに待つのが美味しさをアップさせる秘訣です。
大型のパンは冷めるまでに時間がかかりますが、グッと堪えることで美味しさがアップしてその後数日間美味しい状態が保てるので、ぜひ焼きたては食べずに、落ち着くまで(食パンの場合のおすすめは3〜4時間置いたくらい)待ってみてくださいね。小型のパンの場合は15分ほど待つのがおすすめです。ぜひ「焼きたて」の「冷めたて」を楽しんでみてください!
初めてのコラムでしたがいかがでしたでしょうか?TOMIZでは今回ご紹介した黒糖レーズンパン以外にもレシピをたくさんご紹介しておりますので、ぜひそちらもお試しください。