こんにちは!熊谷裕子です。
今回は「パートフィロ」についてご紹介します。
皆さんは「パートフィロ」という生地の名前を聞いたことがありますか?
日本でも数十年前から少しずつフレンチレストランやパティスリーでも使われ始めていましたが、ここ数年でまた注目が集まっているパートフィロ。
ぜひ上手に使いこなして、素敵なお菓子やお料理に活用してみましょう。
パートフィロとは?
パートフィロは小麦粉、水分、油、塩でこねた生地を、まるで半紙のように薄―く透けるような厚みに伸ばした生地のことです。
パートは「生地」、フィロは「葉っぱ」や「紙」を意味するそう。発祥はトルコ・ギリシャ周辺のようですが、そこから中東地域やヨーロッパまで広がり、いろいろなお菓子やペイストリー、料理に利用されるようになりました。溶かしバターやオイルを塗りながら数枚重ね、具をのせたり包み込んで焼くと、パリパリとしたパイ生地にも似た香ばしい焼き上がりに。
家庭でも作ることはできるのですが、生地をこねたり、透けるほど薄く伸ばしていくのは少し手間と技術が必要です。
そこでぜひ利用したいのが市販のパートフィロ。冷凍品なので、購入して冷凍庫に入れておけば、いつでも簡単にフィロのお菓子や料理が手軽にできます。
どんなお菓子・料理に使う?
甘いお菓子にも、塩味のベイストリーや料理にも使えるパートフィロは、使用範囲が広い便利な生地です。ほぼ無味に近いので、どんな素材にも合わせやすく、形も重ねたり包んだりトッピングしたりと自由自在。工夫次第でレパートリーが広がります。
有名なところではウィーンの銘菓「シュトルーデル(リンゴなどの具をロール状にフィロ生地で巻きこんで焼き上げるロールパイ)」や、ここ数年熱い注目が集まるアラブ菓子の「バクラバ(フィロ生地の間にナッツなどを何段もサンドし、焼き上がりにたっぷりとシロップをかけてしませてカットする一口菓子)」などがあります。
またフランスの南西部・ガスコーニュ地方の銘菓「クルスタッド・ォ・ポム(パスティスともいう)」も、パリパリとしたフィロ生地をいかしたりんごのタルトです。(後述)
お肉や魚を具と共に焼きこんで、ごちそうロールパイにも!
使い方のポイントは?
冷凍品のパートフィロは、まずしっかりと解凍しましょう。
冷蔵庫(または冷暗所)で完全に解凍したら、ロール状に丸まっている束をそっと広げます。
重なっている薄い生地を必要な枚数を一枚ずつ丁寧にはがしていきます。冷凍のまま無理に広げたりはがしたりすると、薄くて繊細な生地がボロボロになってしまうこともあるので、必ず解凍してからにしましょう。
パートフィロを用途に合わせて食用はさみやナイフで好みの大きさにカットし、溶かしバターやオリーブオイルなどの油脂を刷毛で表面にやさしく塗り、一枚重ねてはまた油脂を塗り、を繰り返します。
この油脂を挟むことで焼きあがったときパイ生地のように層状になり、パリパリとした食感が生まれます。
油脂をサンドしたパートフィロをタルト型に敷きこんで、パイやタルトと同様にフィリングを詰めて焼いたり、具を巻き込んでロール状にして焼くと香ばしいパリパリフィロのロールが出来上がります。春巻きのように一個ずつ小さな包み焼きにもできるので、揚げないローカロリーのお料理やペイストリーにも最適です。巻いたり包む場合は上面の生地にも油脂を塗って焼くとより香ばしさが増します。
用途に合わせて食用はさみやナイフで好みの大きさにカット
溶かしバターやオリーブオイルなどの油脂を塗りながら、一枚重ねてはまた油脂を塗り、を繰り返すことでパリパリとしたパイのような焼き上がりに。
パートフィロで「クルスタッド・ォ・ポム」を作ってみました
正方形にカットした生地に溶かしバターを塗りながら三枚重ねにし、タルト型に敷きこみます。
そこにクレーム・ダマンド(アーモンド生地)とソテーしたリンゴをのせ、
さらに溶かしバターをぬったパートフィロ生地を適宜くしゅっとさせてのせます。
これがパリパリ感と見た目の華やかさをプラスします。
やきあがり!
パリパリのフィロとしっとりクリーム・ダマンド、ジューシーなリンゴがおいしい!
ほかのフルーツで作ってもおいしそうですね。
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使い方・保存の注意点は?
パートフィロは薄い生地なので、とても乾燥しやすいのです。解凍したてはしなやかですが、乾燥するとパリパリになってしまい、成型するときに割れてしまうことも。
乾燥を防ぐには、作業中に使わない生地は必ずビニールやラップをかけておくことです。少し放置するだけでも乾いてくるので、まめにビニールなどをかけるようにしましょう。また生地同士がくっついてはがれにくいときもありますが、丁寧にそっとはがすようにします(少しくらい破れても、重ねて焼くので問題ありません)。
残った生地は丸めてまたビニール袋に入れて冷蔵保管し、なるべく早く使い切りましょう。
パートフィロでタルトレットを作ってみましょう
正方形にカットしたパートフィロを溶かしバターを塗りながら三枚重ねにし、タルトレット型に敷きこんだところにアーモンド生地を流してパリッと焼きこみます。
あとはカスタード、フレッシュフルーツをトッピングすれは、パリパリフルーツタルトレットの出来上がりです。パートフィロならではの食感と香ばしさが楽しめるお手軽レシピなので、初心者さんにもおすすめです。
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パートフィロで塩味のベイストリーを作ってみましょう
お料理では包み焼きや揚げ物にも使われるパートフィロ。ここでは手軽にできる三角包み焼きを作ってみましょう。
パートフィロを長細くカットしてオリーブオイルを塗り、端にお好みの具をのせたら、パタンパタンと三角に折りたたんでいくと、まるで三角の春巻きに。具はハムやチーズ、ツナなどキッチンにあるものでも十分おいしくできます。
包まずトッピングして焼けば、パリパリのミニピザに。こちらもワインやビールのおつまみにぴったりです。油で揚げないので、ローカロリーな上に手軽にできる塩味のペイストリー、ぜひお試しください。
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最後に
いかがでしたか。パートフィロを使うとお手軽レシピも、おもてなしレシピも、工夫次第で広がりそうですよね。お客様にランチやディナー、デザートでお出ししたら、「これ何? おいしい!」となることうけあいです。皆さんもぜひお試しください。
コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。 文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。