クラフティとは?|基礎知識とテクニック&レシピ12選

お菓子作り

こんにちは!熊谷裕子です。
今回は初夏のデザートにぴったりな「クラフティ」をご紹介いたします。

クラフティ(Clafoutis)とは?

クラフティは卵や牛乳をベースにした液状の生地(アパレイユ)をフルーツ(主にチェリー)と一緒にグラタン皿やタルト生地に流し、オーブンでじっくりと焼き上げたシンプルなデザートです。
もとはフランス中部のリムーザン地方に伝わる家庭的なお菓子で、この地方で採れたブラックチェリーを焼き込んだものを「クラフティ・リムーザン」と呼び、長く親しまれてきました。

さらにさかのぼると、この近辺で作られていた「フロニャルド(Flognarde)がクラフティのもとになっているそう。
フロニャルドはクレープ生地にラム酒やキルシュで香りづけてから厚焼きにしたもので、ここにチェリーを焼きこんで「クラフティ」と呼ばれるようになったようです。
今ではエリア関係なくフランス全土に広まり、また他のフルーツで作ることもあります。
材料もシンプル&作る工程も簡単なのも、フランスでずっと親しまれている要因でしょう。

クラフティは何から作られる?

クラフティは液状のアパレイユとフルーツを焼きこんで作ります。
アパレイユの材料はいたってシンプル、家庭でもすぐに揃えられるものだけ!
牛乳、卵、砂糖、それに少しの小麦粉が基本材料。やさしいカスタードの味わいになります。
ここにバニラビーンズやリキュールなどで風味をつけることもあります。クラフティはフランスの家庭でもよく作られており、人によって配合は様々だそうです。

クラフティに入れるフルーツは?

先述したようにクラフティの本場リムーザン地方では初夏にその土地で採れるブラックチェリーを入れるのが「クラフティ・リムーザン」。やはりチェリーがおすすめです。
さっとチェリーに火を通してからアパレイユと一緒にオーブンで焼きますが、人によっては生のまま、しかも種ごと入れることあるそうですよ!(ちょっと食べにくいので種は抜くほうがおすすめです・・・)
私たちが日本で作るにおいては、佐藤錦のような日本種だと風味が弱いので、おすすめはしっかりとした風味で肉厚なアメリカンチェリーです。初夏に出回るチェリーをさっとコンポートにし、クラフティに焼き込むと旬のおいしさが味わえます。それ以外の季節や手軽に作りたいときはダークスイートチェリーの缶詰を使うとよいでしょう。
ちなみに他のフルーツでもおいしく出来ますが、そうなるとフランスでは「クラフティ」とは呼ばず、「フロニャルド」となるそうです。

クラフティの作り方は?

クラフティの作り方はとっても簡単!まずはシンプルな基本配合から。

アパレイユ

作り方

  1. アパレイユを作る。卵をよく溶き、砂糖を加えて混ぜる。
    ※卵液を泡立てないように。卵のコシをよく切り、砂糖と混ざればよい。
  2. 薄力粉をふるって加え、混ぜる。
  3. 牛乳(牛乳と生クリーム)を加えて混ぜ、濾し器で濾す。
  4. ダークスイートチェリーはザルにあけてよく水けを切り、耐熱皿に広げる。天板にのせ、アパレイユを流す。
  5. 180度に予熱したオーブンで25~30分程焼く。

アパレイユが余るときは、ココットなど小さい容器に流して同様に焼きましょう。

やわらかクラフティにしたいときは・・・・

私のおすすめ配合は、禁断の(!)粉が入らないタイプ。プリンのようにやわらかーく、フルフルッとした焼き上がりです。作り方は上記と同じですので、こちらもぜひお試しを。

※生のダークチェリー(アメリカンチェリー)をコンポートにして焼き込む場合
アメリカンチェリーのヘタをとり、種取り器で種を取り除く。重量を量り、チェリーの重さの25%の砂糖、ひたひたの水、レモン汁適量を入れて中火で加熱する。沸いたら弱火にして5~6分煮る。そのままさます。密閉袋に入れて冷凍も可能。

クラフティを焼く器は?

陶器のグラタン皿やパイ皿

一番身近な耐熱のグラタン皿がおすすめです。
焼けたクラフティをそのまま食卓にのせても素敵。お気に入りのグラタン皿でどうぞ。
陶器製や耐熱ガラス製のパイ皿を使ってもかわいいです。

スキットパン

温かいデザートとして食べるときは、取っ手がついているスキットパンを使っても。
長時間置くと色移りや金属臭の原因になるので、出来たらすぐ召し上がれ。

ココット

かわいらしいサイズのココットで一人分ずつ焼くことできます。
カットも不要、焼き時間も短く済みます。スプーンですくってそのままいただけます。

おすすめの食べ方は?

温かいデザートとして焼きたてでも、冷やしてからでもおいしくいただけます。お好みでどうぞ!


フルーツの酸味と甘みがアパレイユのミルキーな風味を引き立てます。
やわらかいアパレイユのとき、またはシンプルに食べたいときはスプーンですくって器に盛ります。
タルトタイプのときはカットしてお皿に分けると、ケーキ風に。温かいとやわらかくて切り分けにくいので、よく冷やしてからカットしましょう。


もとは家庭的なデザートですが、フランス料理のデセール(デザート)としてフルーツやクリーム、ソース、またはアイスクリームを添えてサービスされることもあります。

クラフティに使うフルーツはアレンジできる?

先述したとおり、クラフティは基本的にチェリーで作られますが、他のフルーツで焼いてもおいしいですよ! 季節のフルーツでいろいろチャレンジしてみましょう。ベリー類などは生のままでよいですが、りんごや洋梨などはさっとコンポート(シロップ煮)にして入れるとよいでしょう。

参考レシピ

洋梨の赤ワイン煮のクラフティー | レシピ | TOMIZ 富澤商店


りんごのクラフティ 甘酸っぱい紅玉を皮つきでスライスして


洋梨(プチポワール)、いちごのクラフティ

バナナのクラフティ メープルシロップをかけてもおいしい!


ルバーブのクラフティ さっとシロップでコンポートにして


アプリコット アーモンドスライスをふって

手軽に作りたいときは缶詰が大活躍

フルーツが季節外れのときや、コンポートの手間を省きたいときは、缶詰のフルーツを活用しましょう。必ずザルにあけてシロップを十分切り、適当な大きさにカットしたら軽くキッチンペーパーで水けを取って使います。

SW ダークスイートチェリー / 439gプチ・ポワール缶詰4号缶 / 425g(固形量210g)ゴールドリーフ あんず / 825g

アパレイユをアレンジしたいときは?

クラフティのアパレイユはシンプルでやさしいカスタード風味ですが、簡単なアレンジもできます。

  • 砂糖をメープルシュガーや黒糖に替えてフレーバーをつける。
  • レモン皮・オレンジ皮などをすりおろして加え、爽やかな風味をつける。
  • 牛乳を生クリームに置き換えるとより濃厚でリッチな口あたりに。

参考レシピ

メープルクラフティ
メープルクラフティ | レシピ | TOMIZ 富澤商店

クラフティをタルト仕立てにする

手軽に作るときはアパレイユとフルーツだけを焼いて作るクラフティですが、タルト仕立てにしてもおすすめです。甘みのない練りパイ生地や、サクサクのタルト生地をから焼きしたものを器代わりにして焼きます。ジューシーなフルーツ、やさしいカスタード風味のアパレイユに香ばしくザクザクしたタルト生地のコンビネーションが最高においしいですよ!

※クラフティのアパレイユは液状なので、生のタルト生地に流して焼くと生地が焼けにくく、生焼けになってしまうことも。
タルト生地は先に重石をのせてから焼きするようにしましょう。
ふちに焼き色がつくくらい焼けたら、一度重石をとり、さらに全体が香ばしい焼き色がつくまで焼きます。

手軽にタルト仕立てのクラフティを作るには?

生地を練ったり伸ばしたり、から焼きするのは大変! という方は市販のタルトカップを利用しましょう。から焼き済みでサイズも大小ありますし、甘みのないパイ生地タイプも甘いクッキータイプもあるので、お好きなものを選んでみましょう。

おすすめのクラフティーレシピをご紹介!

ではおすすめのクラフティNewレシピをご紹介します。

あんずのクラフティ オレンジ風味
缶詰のアプリコットを使って手軽にクラフティを作ってみましょう。
アパレイユに爽やかなオレンジ風味をつけて、初夏にぴったりなデザートに。
生クリーム多めのリッチな配合です。小さなココットで焼くのもおすすめです。

マンゴーのクリームタルト
クラフティのアレンジバージョンです。
市販のタルトレット生地を使ってレモン風味のクラフティを焼き、フルーツ、生クリームを絞って香ばしいアーモンドのクラックラン(砂糖をまぶして炒ったもの)をまぶして仕上げます。
クラフティのやさしい風味とフルーツ、クリームたっぷりで、初夏にぴったりな爽やかなプティガトーに。

練りパイ生地から作る・本格さくらんぼのクラフティ
パリパリザクッと香ばしい練りパイ生地をから焼きし、さくらんぼとアパレイユを流して焼き上げる、本格レシピのクラフティ。シンプルな組み合わせですが生クリーム入りの粉は一切入らないアパレイユなので、なめらかなカスタードプリンのようなリッチな風味と食感です。
ひと手間かかりますが、タルト生地から手作りするとおいしさもひとしおです。

簡単で材料もシンプルなうえに、温かくても冷たくしてもおいしいクラフティ、オールシーズン楽しめますのでぜひ作ってみてくださいね。

コラム執筆:熊谷裕子(くまがいゆうこ)先生

熊谷裕子(くまがい ゆうこ)
公式Webサイト
この著者のレシピ一覧
葉山「サンルイ島」横浜「レジオン」世田谷「ル・パティシェ・タカギ」を経て、神奈川・中央林間でお菓子教室「クレーヴスイーツキッチン」主催。
文京区 にて「アトリエルカド」 も開講。著作に「デコレーションテクニック」「チョコレート菓子のテクニック」など多数。