こんにちは。洋菓子講師の舘野です。今回のテーマは「チョコレートの置き換え」です。
レシピ指定のチョコと家に在庫のあるチョコを見比べて「うーん…こちらのチョコで置き換えられないかな」と悩んだご経験がお菓子作りが好きな方なら1度はあるかもしれません。
他にも「私はビターチョコを使ったレシピが好きだけれど、召し上がる方は苦みが弱いほうが好きかも?」との理由からチョコを変えてみようかな?と迷うこともあるかもしれません。
カカオ分がそう遠くなければ置き換えてよさそうに思いますが、「味わい」以外にも仕上がりに違いが出るのでしょうか?
今回はチョコレートのお菓子の代表格である「ガトーショコラ」で焼き比べしてみなさんに結果をご紹介します。のんびりと読んでいただき、材料選びの一助になれば幸いです。
チョコレートを置き換えても良い場合とは?
チョコレートを置き換える時、スムーズに置き換えられる場合と、注意が必要な場合があります。
注目していただきたいのはチョコレートの「カカオ分」です。レシピにもよりますが、カカオ分が近いものは置き換えても味わい・作業性で大きな問題にはならないことが多いです。
一方、種類(ミルク、スイート、ビター等)が同じであってもカカオ分の数字が大きく異なる場合は注意が必要です。
チョコレートの置き換え時の注意点は?
分離に注意
レシピに「お好みのチョコレートで置き換えてみてください」と記載があることも多いですが、チョコレートは油分を多く含む為、水分と油分のバランスが繊細なレシピも多く、そのバランスが崩れると上手く乳化せず、分離してしまい、生菓子では形にならなかったり、焼き菓子では仕上がりが油っぽくなったりすることもあります。
溶かしたチョコレート(油分)に生クリーム・牛乳・卵(水分)などを加えて混ぜる(=乳化させる)という工程が入るレシピには特に注意が必要です。
味わいに注意
今回のコラムの比較で使うミルクチョコのカカオ分は44%で、ビターチョコのカカオ分は65%です。ビターのほうがカカオ分が21%多いことになります。カカオ分が多い=カカオマス(苦み)やカカオバターが多いことを表し、逆に、ミルクチョコはその分、ミルク分と砂糖が多く含まれる製品が多いです。
また、カカオ分が多いビターチョコの方がお菓子に混ぜたときにチョコレートの味わいを強く感じやすいので、ビターチョコのレシピをミルクチョコに置き換えると苦みが甘みに置き換わるだけではなく、チョコレートの味が弱いと感じることもあります。
3種のチョコレートをガトーショコラで焼き比べ
それでは、実際に3種類のチョコレートでガトーショコラを焼き比べてみて、違いを確認します。こちらのレシピをもとに作成しました。
(レシピの材料を60%の量に減らし、直径12cmの丸型にオーブンペーパーを敷いて焼きました。焼いた温度・時間はレシピ通りです。)
こちらのレシピで使用しているチョコレートはスイートで、今回は他にミルクとビターでも作りました。
ミルク < スイート <ビターの順にカカオの割合が多くなります。
焼き比べた結果
スイートチョコレートを使ったガトーショコラを基準とし、その他の種類ではどのような違いが出るのか結果を紹介します。
生地の状態
スイートと比べてミルクは流動性が高く(柔らかい・サラサラ)、ビターは流動性が低い(固い・粘る)です。生地が柔らかい方がメレンゲがスムーズに混ざり、生地が固いとメレンゲの泡が潰れやすくなります。そのため、メレンゲの立て方が同じであればミルクのほうが軽く仕上がり、ビターはやや重く仕上がりました。スイートはその中間です。
見た目
前項での結果通り、ミルクが一番高さがあってふんわりとしており、ビターは低く密な仕上がりです。
味わい
焼いた翌日に試食しました。スイートを使用することを前提に作られたレシピなので、スイートが甘さとビター感のバランスが良く、一番私の口に合いました。
ミルクはよく言えば麿やかですが、カカオ感が控えめで少し物足りなく感じました。好みでココアパウダー、チョコレートクリームやガナッシュを添えるとバランスが取れそうです。尚、甘さが強すぎるとは思いませんでした。
ビターはビター感が強く、甘さが控えめな分、こちらも少し物足りなく感じました。好みで粉砂糖、甘い生クリームやソースを添えるとバランスが取れそうです。
添え物におすすめな商品
食感
スイートはふんわり&しっとりのバランスが良く、ミルクはふんわり感を強く感じ、ビターはしっとり感がとても強く、密に感じます。
チョコレートレシピは「違い」を美味しく楽しもう
今回のレシピはチョコレートの割合が15%ほどだったので「あまりはっきりとした違いは出ないかな?」と予想して焼き比べましたが、味わい・状態の違いがかなり明確に出ました。レシピ名に「濃厚」とついているガトーショコラはチョコレートの割合が30%ほどのものが多いので、より違いが大きく出るはずです。
食べ物の「おいしさ」は人それぞれなので、一概に「レシピ通りのチョコレートを!」とは言えませんが、レシピ通りのチョコレートで作ったものが一番私の口に合いました。
一方、<味わい>の項目に書いたように、ちょっとした添え物で甘みや苦みを補うと、良いバランスでおいしく食べられるのも発見でしたので、状況に応じて自由に楽しむのも良いなと思います。
何はともあれ、レシピの材料を置き換えたい時は、予め「こんな違いが起こりそう」ということを分かって作ったほうがハッピーだと思いますので、今回のコラムがチョコレートシーズンを楽しむ一助となればいいなと思います。
▼合わせてチェック!
コラム執筆:舘野真里さん
製菓学校を卒業後、食品メーカーでの企画開発を経て、富澤商店×クオカスタジオをはじめ各地で洋菓子講師・レシピ開発をしています。