パン作りにおける塩の効果とは、塩を入れ忘れたらどうなる?

比較・検証

こんにちは。富澤商店にてレシピ著者をしておりますマスダアイミです。
私はほぼ毎日パンを焼いているのですが、たまにうっかり材料の入れ忘れをしてしまいます。
入れ忘れの中で断トツに頻度が高いもの…それは塩です。塩を入れ忘れると大体発酵途中であれ?おかしいな…?と気づくのですが、皆さんはパン作りに塩を入れ忘れるとどうなるか知っていますか??
実は塩ってパン作りにおいてとっても大事な材料なのです。
今回はパン作りにおける塩の役割について記していきたいと思います。

どのパンレシピにもほぼ必ず「塩」が入っているのは何故??

甘いパンのレシピ、総菜パンのレシピ、フランスパンのレシピ・・どんなパンレシピにも必ず「塩」の記載があります。「砂糖」は入るレシピと入らないレシピがありますね。リーンなパン、フランスパンやハード系のパンには基本的に砂糖は入りません。
どのパンにも塩が配合されているのは何故でしょう…?
それは「塩」は味のベースとなる大事な存在だから。味の調和役を果たしています。
甘いパンやリッチなバターたっぷりのパンでも、少量の塩が入っている事で甘さやバターのコクを引き立て、リーンなパンの配合では粉の香りを引き立てます。
塩は塩味をつける以外にも、味を引き立たせる役割を持っているということです。
うっかり塩を入れ忘れたパンを食べると塩味が付いていないと気付くだけではなく、全体的に味が薄い、味気ない…そう感じる筈です。

塩のおかげで雑菌繁殖を抑えることができる

発酵の様子

パンを長時間発酵させて作る場合、パン生地の中に酵母菌が少ない状態でスタートする為、酵母菌以外の微生物も繁殖しやすい環境になります。
塩は雑菌繁殖を抑える効果があるので、入れることでパンの発酵に有用でない菌が繁殖しないよう抑えることができます。変な香りや味がするパンになったら嫌ですよね。そうならないように塩を入れる、という訳です。

塩はパン生地にどんな影響を与える?塩無しと塩有りの生地で実験

塩を入れることで生地の状態はどう変わるのか??
実際に塩を入れていない生地と、入れた生地で比較してみました。

こちらのレシピをもとに検証します。

捏ね上がりの様子

左:塩無し 右:塩有り

生地は同じ配合・同時間捏ね上げたもので塩の添加以外は全く同じ条件で仕込んだものです。
一次発酵の間に変化が現れました。

一次発酵の様子

左:塩無し 右:塩有り

左側が塩無し、右側が塩有り、です。
塩無し生地は大きく膨らんでいるのに対して、塩有り生地は比べると膨らみが弱いことが分かります。
これを見て分かるように、塩には「生地を引き締め、発酵を抑制する」効果があります。
これだけ見ると、塩を入れないほうがよく発酵して膨らむから良いのでは?と思いますよね。
焼き上がりを見ていきましょう。

焼き上がりの様子 ~上から見て~

左:塩無し 右:塩有り

左側が塩無し、右側が塩有りの生地です。
焼いても同じく、塩無し生地のほうが大きく膨らんでいます。
ただし、これは真上から見た場合で横から見るとどうでしょうか??

焼き上がりの様子 ~横から見て~

左:塩無し 右:塩有り

真横から見ると、高くボリュームが出て焼けているのは塩有りの生地です。

断面

左:塩無し 右:塩有り

カットして断面を見るとより分かりやすいですね。
塩無し生地は扁平へんぺいに焼きあがっているのが分かります。
パン生地というのは、ただ単に早く発酵させれば良い訳ではなく、ある程度時間をかけてあげた方が結果的にボリュームが出やすく、生地の伸びはよくなります。
塩を入れることで生地が引き締められ、発酵の速度をコントロールすることが出来ます。
早く発酵させるほど、発酵速度と生地の柔らかくなるタイミングが合わない為、無理して膨らんでいくようになりますが、発酵をコントロールして時間をかけて発酵させると、生地のグルテンの組織がだんだんと柔らかくなり伸びやすくなります。そしてその時間経過がパン生地の中で有機酸や、おいしい物質を作り出すので、結果的に風味が良いパンが焼けるようになります。
実験の生地は同じ発酵時間で焼いたため、塩有り生地は少し小さく焼きあがっていますが、もう少し発酵時間を長くとって焼いてあげると、よりふんわり高さのある焼き上がりになるかと思います。
塩無し生地は高さがなく少しだれたような仕上がりになっていますね。
このように、パン生地には適度な量の塩を添加した方が良いことが分かります。

パン生地における塩の【 5つの効果 】

パン生地における塩の効果とは、
 ①生地に塩味をつけ、パンの全体の味のベースをつけている
 ②他の材料の風味や味を引き立たせている
 ③生地の中の雑菌繫殖を抑える
 ④生地を引き締める
 ⑤発酵をコントロールする

このような多彩な効果があります。塩はパン作りにとても大事な材料なことが分かります。
私のようにうっかり塩を入れ忘れることなく、塩を入れて風味も膨らみも良いパンを作ってくださいね。
ひとつひとつの材料の性質や効果を知る事が上達にも繋がりますし、よりパン作りが楽しくなる秘訣だと思っています。

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コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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