発酵とは?パンの発酵って何がおこっているの?

基本・初心者

こんにちは!富澤商店オフィシャルクリエイターのマスダアイミです。
私は普段パン作りを教える仕事をしているのですが、よく自己紹介などでパンの仕事をしていますとお話しすると返ってくる言葉があります。

「パンって発酵があるから難しそう」という言葉です。確かにお菓子作りと違って発酵という特殊な過程があるので難しいイメージがありますよね。普段パンを作られる方でも、改めて発酵とは何?と聞かれると返答に困る・・そんな方も多い筈。
今回はそんな『発酵』について深掘りしていきたいと思います。

発酵とは??

まずパンに限定せず発酵とは何か?についてお話します。発酵とは実は世界において共通の定義はないのですが、3つ共通している認識があります。

① 微生物が関わっていること ②微生物のはたらきによって物質が変化すること ③それが人間にとって有益であること ・・の3つです。

例えば牛乳が乳酸菌の働きによってヨーグルトになる・・これは発酵です。パン生地が酵母菌によって膨らんで食感、風味と共に美味しくなる・・これも発酵。

では汚れた手で握ったおにぎりを放置して、食べたらお腹を壊してしまった・・これはどうでしょう。これは菌が人間にとって有害な活動をしたため発酵ではなく腐敗になります。

実は発酵と腐敗は紙一重。どちらも微生物が関わっていることは同じですが、人間の都合で良いか悪いかの判断をしているだけ。微生物の活動が人に有益なら発酵、有害なら腐敗です。微生物にとってはそんな事は知らず、ただ生きるための生命活動をしているだけ。良いものと悪いものの区別は人間が勝手にしています。

そうすると、発酵食品とは言い方が悪くなってしまうのですが、人間が微生物の生命活動で産出したものを搾取して利用しているものと言えます。よく言えば共存関係ということです。

パンはというと、遥か昔の話ですが小麦と水を練って焼くだけだった時代に、誰かが焼く前の生地を放置しておいたのか・・偶然にも野生の酵母菌が生地に入り膨らんでいたのでそれを焼いてみたら美味しかった。それが始まりだと聞いたことがあります。私はそれを聞くと初めに食べた人は凄いなあと思ってしまいます・・・!

パンの発酵って何がおこっているの?

パンの発酵は酵母が活躍します。酵母の英語名はイーストです。「イースト」なら聞き覚えありますよね。パンに入れるものでしょう!という認識だと思います。

酵母は目には見えない小さな微生物ですが、実はそこらじゅうにいる菌で、植物や野菜や果物の表面、空気中などあらゆる場所に存在します。市販されているイーストは製パンに適した酵母を果実や穀物から分離して、人間の手で純粋培養したものになります。(イーストも自然に存在する酵母菌で、パンに合う強い子が集まっているものと思ってもらうと良いです)

酵母は酸素があるときは私たちと同じように呼吸をして、生命活動に必要なエネルギーを得ています。私たち人間は酸素のあるところでしか生きられませんが、酵母は酸素の無いところでも大丈夫!

酵母はパン生地の中に閉じ込められて酸素のない状態になると、生地の中にある砂糖や粉に含まれている糖を利用してエネルギーを得ようとします。糖を分解したその産物としてアルコールと炭酸ガスを産出します。

この酵母による酸素のない状態で糖を分解して炭酸ガスとアルコールを出す生命活動のことをパンの「発酵」と呼びます。

産出した炭酸ガスがパン生地を膨らませ、またアルコール及び代謝の過程で発生した有機酸がパン生地にしなやかさを与え、伸びの良い生地になります。同時にアルコールや有機酸は香りや風味になりパンの味わいに深みを与えます。

要するに酵母菌が生きるためにエネルギーが欲しくて活動した結果、出てきた産物を人間が利用しているという事です。先程の発酵についての認識に当てはめると、①酵母が関わっていて ②酵母のはたらきにより生地が変化し、 ③人間は美味しいパンが食べられる・・ということになります。

パンを作る際は、このことを十分理解した上で酵母という生き物の活動である発酵をどうコントロールするかが美味しいパンを作る決め手となります。

それはただ発酵時間を気にするだけではなく、発生した炭酸ガスを生地の中に閉じ込めておけるように捏ねることが大事であったり、酵母が育ちやすい生地の温度にしてあげたり、発酵時間もその日の温度や湿度の状態で変わったりもするので思い通りにいかない事もあったりしますが、生き物を扱っているんだ!と思うとパン生地が膨らんでくる様子も中々可愛く見えてくるものです。ぷっくり膨らんだパン生地は赤ちゃんのほっぺのよう。目には見えませんが、生地の中では酵母が頑張っているのです。

パン作りは身近に「発酵」を感じられる楽しさがあります。「あっ、生地が膨らんできた!」「発酵させたら生地が柔らかくなっているね」「香りはどう」?と五感で感じながら楽しんで発酵に触れてみてください。自分で作ったパンは唯一無二!きっと美味しい筈です。

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コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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