こんにちは!オフィシャルクリエイターのけいちょんです。
パン作りで必ず使う「酵母」。
様々な種類が市販され、また自宅で果物や小麦等から酵母を起こして「自家製酵母」として使用する方もいらっしゃるかと思います。いずれにせよ、パンは発酵食品ですので「酵母」が必要不可欠な存在です。
市販されている「インスタントドライイースト」。実は種類があることを知っていますか?
知らずに使ったり、知っていても使い分けしていなかったり発酵スケジュールを誤ると完成したパンには大きな差が生まれてしまうことも。
そんなインスタントドライイースト、今回はもっともメジャーで私自身もよく使わせていただくサフ社の「インスタントドライイーストレッド」通称「赤サフ」と、「インスタントドライイーストゴールド」通称「金サフ」について解説したいと思います。
ドライイーストとセミドライイーストの違いや、実際に同じレシピ・同じスケジュールで赤サフと金サフを使い、焼き比べてみた結果もご紹介したいと思います。
イーストとは?
パン生地を発酵させ膨らませるために必要な酵母。
実は私たちの住む空間で一緒に生息している微生物=生き物です。醤油や味噌など日本人にとって昔から酵母はとても身近な存在ですね。
パンもこの酵母の働きによって膨らみ美味しくなります。パン作りで一般的に使われる酵母、これが「イースト」です。
イーストは数ある酵母の中でも発酵力が高く、安定的かつ効率的にパン生地を膨らませることができる酵母菌を培養し作られています。
イーストの種類?
イーストにも種類があり、生イースト・ドライイースト・インスタントドライイースト・セミドライイーストなどがあります。
生イースト
培養したイーストを水洗いし、水切りした状態のもの。
水で溶いて使用するのが一般的で、糖分に対して活動が活発になるため糖分の多い菓子パン生地など、日本人好みのパンを作ることに向いている酵母です。
ドライイースト
ドライイーストは生イーストを低温乾燥させたもので、顆粒状になっていて、保存性や計量のしやすさ、使いやすさに優れます。使用前には予備発酵が必要です。
インスタントドライイースト
ドライイーストと同じく、生イーストを低温乾燥させたもので、顆粒状になっていて、保存性や計量のしやすさ、使いやすさに優れます。ドライイーストに比べ、こちらは予備発酵なしで直接粉に混ぜて使える利点があります。
セミドライイースト
生イーストとドライイーストの良さを活かすために作られたイーストで、冷凍耐性があり冷凍保存することができます。
ドライイーストと同じく顆粒状になっていて、保存性や計量のしやすさ、使いやすさに優れます。
冷水でも発酵できるため、冷たい水に合わせて使用することもできます。
また、予備発酵も解凍の必要もなく、インスタントドライイーストと同じくそのまま生地に混ぜて使用することができます。
セミドライという名の通り、水分量がドライイーストよりも多いため水分に溶けやすいという特徴もあります。
赤と金の違いとは?
先に紹介したイーストの「状態」による違いに加えて、「耐糖性」による違いもあります。それが「赤サフ」と「金サフ」です。
「赤サフ」と呼ばれる赤いパッケージのイーストは、糖分0%〜12%の低糖パン生地での発酵力に優れます。
主にバゲットなどのリーンな生地、クロワッサン等の糖分の少ない生地に適しています。
「金サフ」と呼ばれる金色のパッケージのイーストは糖分5%〜20%ほどの多糖パン生地での発酵に優れます。
また、バターなどの副材料が多い生地でも発酵できる生イーストに近い性質を持ちます。日本人の身近な食パンや菓子パン生地、パネットーネなど糖分が沢山配合されたパン生地では、金サフの使用がおすすめです。
赤サフと金サフの使い分けは?
糖分が5〜12%のレシピならば、上記の特徴通り、赤サフと金サフのどちらを使っても問題なく作ることができます。
ただここで注意すべきなのは、砂糖だけでなく蜂蜜や練乳、また糖分の多いチョコレートやドライフルーツ、バターや生クリームなどの油脂などの副材料の多い生地の場合です。この場合、元々リーンな生地向けに作られた赤サフではスムーズに発酵することができません。この場合は金サフを使用することでしっかりと発酵させることができます。
赤サフしか持っていない場合、糖分のほかに油脂やフィリングの副材料もチェックして代用できるかできないかを見極める必要があります。
実際に焼いてみた結果は?
富澤商店に掲載中の「懐かしの黒糖ロール」は黒糖の他にモラセス、そしてバターが多く配合されている生地です。レシピではセミドライの金サフを使用していますが、インスタントドライイーストの赤と金どちらでも代用できるのか?実際に焼いて確かめてみました。
今回はどちらの生地も同時に捏ねあげ、同じ環境で発酵を取り同じスケジュールで工程を進めていきましたが、果たして結果は・・・?
まずはコネ上がり。時間は同じに仕上がるよう、機械2台で同時進行しました。ここから同じ温度管理・同じ発酵時間で焼成まで進みます。
一次発酵開始から2時間、発酵完了です。金サフの方はしっかりと発酵してふっくらしています。
一方赤サフの方はまだ発酵が足りない様子です。やはり糖分・油分が多い生地なので赤サフではうまく発酵が進んでいません。
ベンチタイム・成形後です。
ガス抜きをして成形をします。成形をするとガスが抜けたので大きさはまた同じくらいになっています。ここから一緒に2次発酵をとっていきます。
2次発酵完了時です。(35度で60分)
金サフの方は糖分・油分の多い生地でもしっかりと発酵しふっくらしています。
一方赤サフの方は一次発酵完了時と同じく、発酵がうまく進んでおらず一回り小さめです。本来赤サフの方はもう少し膨らむまで発酵をとるべきですが、今回はあえて同じスケジュールで進みたいので一緒に焼成を行います。
焼成後です。比較してみると、やはり焼成後も赤サフの方が一回り小さく、金サフの方がふっくら膨らんでいるのがわかります。
断面を比較してみると、金サフの方は中心までしっかりふっくらしているのに対し、赤サフの方はぎゅっと詰まっていて、膨らみも小さいです。
底面を比較すると、ここも大きく違います。
金サフの方はふっくら焼けたのが生地から伝わりますし、しっかりとイーストが糖を消費しているためか焼き色が適正です。
逆に赤サフの方はイーストが糖を消費できておらず焼き色が強く出ています。また、底面の張りが強く金サフに比べて締まっているのがわかります。
まとめ
いかがでしたか?
赤サフと金サフの違いを今回はご紹介しました。
普段のパン作りで何気なくイーストを使っている方も多いかと思いますが、その種類に着目することでより良い仕上がりになりますよ。
ぜひイーストの使い分けにも挑戦してみてください。
コラム執筆:けいちょんさん
イーストだけでなく数種類の自家製酵母を使い、完全独学ながらお家で作れる「簡単だけど本当に美味しい家族が喜ぶパン」を日々研究中です。