発酵とは?|発酵不足?過発酵?実際に焼いて検証してみた

パン作り

こんにちは!オフィシャルクリエイターのけいちょんです。

だんだんと春が近づいてくると、新しいことを始めたくなったり外に出たくなったりワクワクしてきますね。パン作りも暖かくなってくると発酵がスムーズに進みやすく作りやすい季節になりますね。
しかし、最近では春でもびっくりするほど寒い日があったり暖かい日があったりと、うっかり油断をすると発酵が適正でないパンが焼けてしまうことも。
過発酵って聞いたことがあるけど、具体的にどうなると過発酵なのか?また発酵不足だとパンはどうなるのか?知っているようで実はよく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、実際に発酵不足のパン・過発酵になったパンを焼いてみました。ぜひパン作りの参考にしてみてくださいね。

発酵とは?

パン作りの要でもある“発酵”。これが適正でないといまいち美味しくなかったり、味やにおいに変化が出てきてしまうことをご存知ですか?
そもそもパンにおける“発酵”とはイースト菌(酵母菌)が酸素がない状態の時に糖を分解し、炭酸ガスとアルコールを生成することを指します。これは“アルコール発酵と呼ばれ、パンが焼き上がった直後に微かにアルコール臭がする理由です。
またパン生地内ではアルコール発酵のほかにも様々な菌が活動しており、乳酸発酵や酢酸発酵が起こります。
乳酸発酵は乳酸菌が入ることで起こります。乳酸菌はライ麦や全粒粉に多く付着しており、これらの粉を使ったパンは乳酸が生成されるのでpHが酸性に傾くため、イースト菌(酵母菌)が活性化します。
また生地中に含まれる酢酸菌はその名の通りお酢を生成するときに活躍する菌で、パン生地内では酸素とイースト菌が発生させたアルコールを酢酸と水に変換してしまいます。これが過発酵になったパンから酸味を感じる原因です。たくさんのアルコールを生成したパン生地内ではイースト菌(酵母菌)の活動が弱まり、そのため劣勢だった酢酸菌が優位になるため過剰になったアルコールを酢酸へと変化させてしまうのです。

発酵不足ではどうなる?

発酵はパンの要。適正に発酵したパンはふんわりと膨らみ、程よい弾力と柔らかさがあります。香りも柔らかく食欲をそそります。
では発酵不足はどのような時に起こるのでしょうか。発酵不足は、捏ね上げ温度(生地温度)が低過ぎてうまくイースト菌が活動できない状態でレシピの時間通りに進めてしまったり、発酵させる室温や庫内温度が低い時にも起こります。
発酵が足りていないパン生地内は炭酸ガスの発生が少なく、生地があまり膨らみません。そのため、焼き上がったパンは弾力が強く、ずっしりと重い焼き上がりになります。また、糖があまり分解されていないためパン生地の焼き色もつよくなります。

過発酵ではどうなる?

パンの”大敵"とも言える“過発酵”は生地の温度が高過ぎたり、発酵させる温度が高過ぎたり、適正な発酵温度でも長過ぎてしまうことで起こります。
過発酵になってしまったパンは、パン生地の発酵によって生成されたアルコールやイーストの臭いが強くなり、酸味が出ることがあります。また、ボワボワに膨らみすぎて気泡が荒くなったり、グルテンがちぎれて膨らまなかったり、焼き上がり後に腰折れをしたり大きく萎んでしまうなど味の変化に加え見た目も大きく変化します。

過発酵にしないために

過発酵にしないために大切なのが、適正な温度管理と発酵時間です。
適正な温度管理とは、生地温度(捏ね上げ温度)と一次発酵・二次発酵の際の温度設定です。

生地温度が低すぎる場合は、発酵がなかなか進まなくなります。逆に生地温度が高すぎると過発酵の原因になります。冬場など寒い時期は発酵がスムーズに進むように水をぬるま湯にしたり、粉類も室温(23度ほど)に戻すことで生地温度が適正になるように調節します。逆に暖かい時期は生地温度が上がり過ぎないように水は冷たいものを使ったり、発酵温度も適正になるようエアコンなどで室温を管理します。一般的に捏ね上げ温度は24〜28度ほどが一般的ですが、人間の体温は36度前後ですので、手ゴネの場合は体温が伝わったり、機械捏ねの場合はモーターの熱や摩擦熱で捏ね上げ温度が上がりやすくなります。ですので、室温や捏ねる環境を加味して暖かくなってきたらその都度生地温度が上がり過ぎないように注意しながら作ることが大切です。

また、こまめに発酵具合をチェックするのも大切なポイントです。
一次発酵の見極めで分かりやすいのが「フィンガーチェック」です。一次発酵の完了が近づいてきたら、人差し指に薄く粉をつけ生地の真ん中に差し込みます。
指を抜いた時に、空けた穴が少し縮むかそのまま大きさが変わらないくらいが一次発酵の適正です。指で空けた穴がすぐに小さく戻ってしまうようなら一次発酵が足りないサイン。
逆に穴を開けて生地自体が萎んでしまう場合は過発酵の状態です。こうなる前に気づけるようにフィンガーチェックを活用しましょう。

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実際に発酵不足・過発酵のパンを焼いてみた

今回は、一度に捏ねた生地を3分割にし、発酵が未熟なもの・適正なもの・過発酵のものの3つを実際に焼いてみました。一次発酵はどれも適正にとり、二次発酵の時間と発酵温度を調整して焼いています。焼き時間はどれも200度で10分です。

では実際に見てみましょう!

捏ね上げ温度は28.1度で適正に捏ねられました。ここから一次発酵に入ります。一次発酵は30度で約45分ほどでした。

フィンガーチェックをします。空いた穴が塞がらず、しっかりと膨らんでいるので一次発酵は完了です。

3分割にして丸め、ベンチタイム後に同じ様に成形し型入れしました。

まずは30度で20分発酵をとったものを焼きます。
まだ少し膨らんだくらいで、明らかに発酵が足りていない状態です。
焼き上がりもあまり膨らまず、ずっしりと重みがあります。膨らみが小さいため、ホワイトライン(焼き色のついていない部分)も太いです。

次に、適正に発酵させたものを焼きます。
30度で45分ほど発酵をとりました。指で優しく押すと指の跡が残るくらいしっかりと発酵が取れています。
焼き上がりは柔らかくしっかりと膨らんでいます。ホワイトラインも程よく、しっとり柔らかな焼き上がりです。

過発酵にさせた生地を焼きます。写真を撮る前は膨らんでボコボコと気泡が出ていたのですが、写真を撮るために動かした刺激で萎んでしまいました。
焼き上がりはカクカクに角ばっていて手で触っただけでパサパサとしています。表面も気泡で荒く、潰れた部分はそのまま焼き上がっています。

横一列に並べて比べてみると、焼き色は発酵不足のものが一番濃いですが小さく焼き上がり、反対に糖を消費してしまった過発酵のものは焼き色も薄く大きく焼き上がっていることがわかります。

頭頂部の焼き色は高さがない分、型の側面の影響で一番小さいものが焼き色が薄く、過発酵のものが濃くついたのだと思います。しかしながら、上から見ると大きさは一目瞭然で、発酵不足の一番左と過発酵の一番右では大きさがかなり違っています。

底面を見ると、未熟な発酵だと型に沿っておらず、過発酵だと気泡が荒く表面がざらざらで角ばっているのがわかります。

断面を比較してみます。発酵が未熟な生地は気泡が小さく中身も詰まった状態です。適正に発酵が取れた真ん中の生地は気泡が縦に伸びでよく膨らんだことがわかります。一方過発酵のものは気泡が大きくて荒く、パン生地も縦に伸びた形跡はありません。
実際にこれらを食べ比べてみたところ、発酵が未熟なパンは食べられないことはありませんがムチムチとして茹でていないのにベーグルの生地に近いような食感です。ずっしりしていて、しっとりというよりもねっちりしている印象です。
発酵が適正なパン生地はふんわりとして柔らかく、しっとりした美味しい焼き上がりです。
過発酵になってしまったパン生地はニオイも味も酸味があり、独特の少し嫌な香りがしました。表面(クラスト)がパサつき、ぼそっとした食感でしっとり感はあまり感じませんでした。食べられるけどあんまり食べたくないパンになってしまいました。

まとめ

いかがでしたか?
発酵はパンの仕上がりを左右する大事な工程です。気温や室温に影響され発酵不足だったり過発酵になってしまったりと、気温の変化が激しい季節は特に注意したいポイントですね。発酵時間だけでなく、発酵温度や生地温度、そして生地の状態を確認しながら美味しいパンを焼きましょう!

コラム執筆:けいちょんさん

けいちょんさん
けいちょんさん

イーストだけでなく数種類の自家製酵母を使い、完全独学ながらお家で作れる「簡単だけど本当に美味しい家族が喜ぶパン」を日々研究中です。