こんにちは。レシピ著者をしているちょりママです。
今月は徹底検証シリーズ。定番の「春よ恋」オリジナルと高加水について深堀していきます。
パン作りの登竜門といわれる万能強力粉「春よ恋」。私も長年愛用している強力粉です。
後から登場した「春よ恋高加水」とどんな違いがあるのでしょうか。
今回の検証で私が見えたもの。それは「目指す食感」と「組み合わせ」にあると分かりました。
さて、みなさんも「春よ恋」オリジナルと高加水の違い、さらに加水率を探る旅に行きましょう~!
「春よ恋」とは?
「春よ恋」オリジナルと高加水どちらもありますが、「春よ恋」とはどういう粉なのでしょうか。
食パンから総菜パン、菓子パンまでオールマイティーな強力粉といわれ、パン作りされている方なら一度は使ったことのある定番中の定番の強力粉です。
もちもち感としっとり感が共存した国産小麦の代名詞「はるゆたか」の改良品種です。
「春よ恋」は、はるゆたか同様にもちもち感としっとり感がありつつ、小麦の甘さを感じます。
また、吸水性が丁度よく扱いやすいため、パン作りのファーストフラワーとしても人気が高いです。
手ごね、ホームベーカリーどちらも適しているので様々な方に愛用されています。
「春よ恋高加水」は、α化した小麦粉を加えた春よ恋です。
α化した小麦粉のおかげで吸水性がよく、もっちり、もちもちとした食感に仕上がります。
さらに粉の旨味がとても強く、一回食べるとこのおいしさが離れられなくなる人続出です。(私)
吸水性がとてもよいの通常よりも6~10%を目安に水分を加えるのがおすすめとされています。
逆に水分が少ないと伸びや膨らみにくくなるので、使用の際はそのことに気を付けるとよいでしょう。
基本の丸パンで検証!加水率の違い
作る過程での違い、出来上がりの食感や風味。どのような違いが出てくるのでしょうか。
パン生地に誤差がでないようにホームベリーカリーで生地を作りました。
その後は通常の手ごねパンと同じく、ベンチタイム、成形、二次発酵、焼成のステップで作りました。
ホームベリーのパンケースに入れる材料はこちら。
春よ恋(強力粉) | 250g |
砂糖 | 20g |
塩 | 4g |
バター(食塩不使用) | 10g |
ドライイースト | 3g |
そこに水分を加えますが、生地の吸水性の違いも知るために水分を変えるパターンも作ってみました。
パンを作る上でカギを握るのが、主に粉と加水率です。
パンの加水率を算出するのは以下の通りです。
前述通り、加水率はパンの仕上がりに大きく差がでます。
クラムがぎゅっと詰まったベーグルの加水率は主に55~60%程度。
一般的なパンは65%前後、高加水と呼ばれるパンは70~80%です。
これは手ごねにおいての目安なので、ホームベリーでこの水分量を例にするとべたつく可能性があります。
そこで今回は加水率62%(155ml)と66%(165ml)で「春よ恋」オリジナルと高加水の4パターンで検証してみました。
加水率:62%(155ml)
左:高加水62%(155ml) | 右:オリジナル62%(155ml) |
ホームベリーでのこねが終わり、パンケースから出した直後の生地の状態です。
両者ともガス抜きをして丸め直します。
左(高加水62%)は若干べとつきますが、ベンチタイム後は扱いやすい生地になりました。
右(オリジナル62%)はべとつかず、丁度よい水分の生地状態でした。
左:高加水62%(155ml) | 右:オリジナル62%(155ml) |
成形をして二次発酵後の状態です。180℃で焼成します。
左:高加水62%(155ml) | 右:オリジナル62%(155ml) |
見た目には大きく差がなく、どちらもおいしい香りが部屋中をたちこめました。
左:高加水62%(155ml) | 右:オリジナル62%(155ml) |
焼き上がった粉違いの二種類のパンを実食してみました。
もちもち感 | 高加水>オリジナル |
ふんわり感 | 高加水<オリジナル |
弾力 | 高加水>オリジナル |
高加水62%は弾力があり、水分が閉じ込められているという感覚がありました。
焼きたてはイーストの香りが強く、冷めると粉の甘みがより感じました。
オリジナル62%はふわふわで粉の風味をとても感じました。
加水率:66%(165ml)
左:高加水66%(165ml) | 右:オリジナル66%(165ml) |
続いて加水率66%での生地を比べてみましょう。
62%(155ml)同様にホームベリーでのこねが終わり、パンケースから出した直後の生地の状態です。
両者ともガス抜きをして丸め直します。
左(高加水66%)はかなりべとついて生地をまとめるのに少し苦労します。ベンチタイム後は少しは扱いやすくなりましたが、62%(155ml)と比べると難易度高めです。やはり高加水のパンはテクニックが少しいるようですね。
右(オリジナル66%)も高加水ほどではありませんが、べとついてます。ベンチタイム後は少しだけよくなりましたが、こちらもまた打ち粉をしないときびしいレベルです。
左:高加水66%(165ml) | 右:オリジナル66%(165ml) |
通常は打ち粉をして成形するのがベストですが、今回は比較検証のため打ち粉はなしで成形しました。
成形をして二次発酵後の状態です。180℃で焼成します。
左:高加水66%(165ml) | 右:オリジナル66%(165ml) |
水分を閉じ込めているのを感じさせる弾力が62%(155ml)よりも感じました。
左:高加水66%(165ml) | 右:オリジナル66%(165ml) |
焼き上がった粉違いの二種類のパンを実食してみました。
もちもち感 | 高加水>オリジナル |
ふんわり感 | 高加水<オリジナル |
弾力 | 高加水>オリジナル |
両者の食感の差異は62%(155ml)と変わりませんが、少し違うところがありました。
高加水62%は弾力、水分が閉じ込めらえている感覚はある上、クラムがもちもちしているせいかクラストとの差がはっきりしていました。62%(155ml)にはない食感です。
オリジナル62%はクラムとクラスト差があまりなく、かぶりつくとふんわりとクラムにたどり着きます。
焼き上がりに大きな差があり!
左:高加水62%(155ml)・オリジナル62%(155ml) | 右:高加水66%(165ml)・オリジナル66%(165ml) |
見た目以上に感じたのは、噛み締めたときの食感。
62%(155ml)は一般的な食感があり、食べやすさを感じました。また「ふんわり」としたパンの食感があります。
66%(165ml)は両者ともにもちもち食感が強めで、水分量の多さを感じました。
どっちがお好き?
「春よ恋」オリジナルと高加水。
どちらを選ぶかは好みの問題ではありますが、家族からのコメントとしては両者を食べ比べると「高加水」に軍配があがります。その理由を聞くと「もちもちでとにかくおいしいから」。
一度食べると病みつきになる高加水。その理由は粉のおいしさはもちろんのこと、食感の豊かさにも理由があります。個人的にはふんわり食感が好きなのでオリジナルも捨てがたいと思うところ。
作るものの目指すべき食感が「もちもち」であれば、迷わず高加水を。
おかずと一緒に食べるパンや、菓子パンとして使うなら、迷わずオリジナルを。
私なりの見解ですが、今回の検証はお気に入りの「春よ恋」をもっと知るきっかけになりました。
いかがでしたでしょうか。
粉の種類はたくさんあって、正直迷うことの方が多いけれど、それもまた楽しみのひとつです。
同じレシピで作っても粉が違うと全く別の食感や風味が生まれるから、パン作りの探求はやめられません。
「春よ恋」に限らず富澤商店で扱うたくさんの粉の食べ比べをみなさんもぜひご自宅で楽しんでみてくださいね。
みなさんの富澤商店ライフのお役に立てるとうれしいです。
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春よ恋 / 1kg
春よ恋(高加水用) (横山製粉) / 1kg
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コラム執筆:ちょりママさん
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この著者のレシピ一覧
フードコーディネーター・調理師・食生活/食育アドバイザー。「子どもも大人も一緒のごはん」をコンセプトに簡単レシピを発信。
企業レシピ・メニュー開発、書籍出版のほか、フードスタイリング、食育活動も多数。