こんにちは!オフィシャルクリエイターのけいちょんです。
前回のコラムでは卵がパン生地に与える影響と、実際に水のみ・卵黄のみ・卵白のみで焼いてみてどのような結果になるのか検証したのですが、驚きの焼き上がりで卵についてもっと興味が湧く結果となりました。
なので今回のコラムはその続きとなります。
今回は全卵を使い、卵の配合割合によってパン生地がどう変化するのかを検証してみました。
パン作りをされる方はぜひ最後までご覧ください!
パン生地における卵の役割とは?
前回詳しく触れましたが、卵には主に
- パンの老化を遅らせる
- しっとり滑らかな生地になる
- 膨らみを助ける
- 風味や焼き色をよくする
という効果がありました。ただ、多すぎると膨らみすぎたり硬くなりすぎたりと悪影響がでてきてしまいます。
ではどのくらいの量を入れれば効果があるのか?逆にどの程度が適量なのかも知っておきたいポイントですね。
では実際に配合の割合を変えて焼いてみましょう!
実際に焼いて検証
前回焼いた基本配合をもとに、なるべく卵以外の材料の影響を減らし香りがわかるよう無塩バターをショートニングに変更し検証してみました。
- 春よ恋 50g(100%)
- 水 32g(64%)
- 砂糖 3g(6%)
- 塩 0.7g(1.4%)
- ショートニング 2g(4%)
- インスタントドライイースト 0.5g(1%)
全卵入りの生地では卵内の水分量(約76%)を計算し、それを元に基本配合と同じ水分量になるように配合をそれぞれ調整しました。
全卵(生地内の割合) | 全卵の量 | 全卵内水分 | 水の量 |
---|---|---|---|
3% | 1.5g | 1.1g | 30.8g |
10% | 5g | 3.8g | 28.2g |
20% | 10g | 7.6g | 20.6g |
30% | 15g | 11.4g | 20.6g |
全卵と水以外の材料は全て基本配合と同じです。
この際に、卵白が塊のまま入ると生地により配合バランスが崩れる恐れがあるので、卵は波刃のナイフで切るように混ぜ
できる限りムラにならないよう卵白を断ち切り満遍なく混ぜました。
捏ね上がり〜焼成
捏ねは順番に行い、生地温度が上がらないように冷蔵庫を使用し生地温度をコントロールしながら捏ねました。
理論値の水分量は全て同じですが、全卵が多くなるにつれベタつきが強くなりました。
特に30%の配合は卵特有のベタつきが強く捏ねるのが大変でまとまりにくく感じました。
卵の割合が多くなるにつれて生地の色も黄色味が強くなります。
一次発酵は生地温度をコントロールしていたので全ての生地でほぼ同時に完了することができました。
ただ、全卵を20%30%配合したものは生地の伸びがよく、滑らかな生地になっています。
型に入れて二次発酵に入ります。
同じ型が足りなかったので、水のみで捏ねたものはほぼ同じサイズのパウンド型を使用しています。前回は卵白のみで捏ねたものが極端に進みが悪くなりましたが今回はどれも生地状態もほぼ同じで、大きさも差がありませんでした。
二次発酵完了です。二次発酵スタート時点でほぼ同じ発酵状態でしたが、二次発酵を全て同じ環境で同じ時間とった結果、10%配合したものが一番膨らみ、20%30%配合したものはそれよりも少し膨らみが少なくなっていました。
上から見た状態です。
横から見た状態です。
30%配合した方が高さが低いのがわかります。200度に予熱したオーブンで約10分焼きました。
全部焼き上がった後に並べてみました。
焼き色は全卵の配合が増えるにつれてよく色付いています。
側面はオーブンの位置や型の違いで若干水のみが濃いですが、概ね配合の順番通りの色づきとなっています。
横から見ると高さの違いが出ていました。
一番高かった10%配合のものよりも30%配合の生地の方が背が高くなっています。焼く直前では10%の方が高く30%は一番高さが低かった30%が一番窯伸びしたという結果になりました。
全卵3%〜20%までは高さはほぼ同じです。
断面を比較すると、全卵の配合が多くなるにつれクラムの色が黄色くなっていますが見た目には柔らかさの違いや目の詰まりなどは見られませんでした。
弾力の違いです。
水のみで捏ねたもの〜10%配合まではほぼ同じ弾力で、程よい反発力と柔らかさを感じますが、20%・30%は明らかにクラストも固く、クラムの柔らかさもあまり感じません。
実際に指で押してみると、明らかに硬さが違いました。前回の結果を踏まえて考えると、卵白の割合が増えたためかと思います。
実際に食べてみました。
水のみ・3%配合のものはどちらもあまり違いが感じられず、配合を知らなければ違いも感じないと思います。卵の香りも感じず、バターではなくショートニングなのでほぼ小麦粉の香りのみでとてもシンプルな味でした。クラムは焼いた当日は柔らかくしっとりしていましたが、2日目はどちらも焼いた当日ほどの柔らかさはありませんでした。
全卵10%になると卵の香りを感じ、よく食べ親しんだ菓子パン生地の香りがします。シンプルですが卵のコクと香りが加わっているので旨みもあるように感じます。クラムは当日は柔らかく伸びがあり、2日目になると落ち着いたしっとり感を感じました。
全卵20%と30%は卵の香りが強く、手で生地を割くと引きちぎるという感覚よりも、割れるという感覚に近い感じです。2日目になるとよりパサつきが強くなっていました。
卵の風味がしっかりするので味は美味しく感じますが食感があまり良くありません。強いて言えば卵感を出してあえて硬めに焼き上げたい場合などにはアリかもしれませんが30%は入れない方がいいなというのが正直な感想です。
総評と考察
全卵を使った配合は、パンの膨らみと色づき・風味に顕著に影響することがわかりました。
ただし、配合の割合が少なすぎても変化を感じず、配合が多すぎるとふんわりを狙ったパンにとっては悪影響の方が強くなるという結果でした。
配合の割合としては、10〜15%ほどが適量で、それ以上になるとあえて狙う以外は硬くなったりパサつきが強くなるので入れるのを控えた方がいいというのが私個人の感想です。
おすすめ商品
まとめ
今回のコラムはいかがでしたか?
卵はお菓子作りにおいてもパン作りにおいても、とても大切な材料です。アレンジを加えたい場合はぜひ以下のポイントを参考にしてみてください。
適量を守ることで、味や見た目にも良い効果を発揮し美味しいパンになりますので、ぜひレシピに沿って配合してみてください。
もし卵を省略したい場合は卵の分だけ水分量の調整が必要なことと色づきが薄くなるので焼きすぎに注意しましょう。理想の色づきまで焼いてしまうと水分が飛んでしまい固くなる恐れがあります。焼成温度を高くしたり、バターや砂糖を少し足すと色づきや風味が良くなります。
逆に卵を追加したい場合はその他の水分量を減らすことと、色づきが良くなるので焦げや焦げ防止のためと焼き時間を短縮して生焼けにならないように注意しましょう。焼成温度を10℃ほど低めにし焼き時間を変えずに焼いてみてください。また配合の割合によって膨らみ方が変わるので型に入れるパンの場合は窯伸びを考慮して一個の生地量をやや少なめにしてみると型から溢れるような失敗がなくなります。
ぜひ参考にしてみてください。
コラム執筆:けいちょんさん
イーストだけでなく数種類の自家製酵母を使い、完全独学ながらお家で作れる「簡単だけど本当に美味しい家族が喜ぶパン」を日々研究中です。