パン生地の適正温度は何℃?捏ね上げ温度と発酵の正しい考え方

基本・初心者

こんにちは。富澤商店にてレシピ著者をしておりますマスダアイミです。
パン作りって難しい…!
同じレシピで、同じように作っているのに何故か仕上がりが違う。
そんな経験はありませんか??
その原因のひとつにあるのが、実は「生地の温度」です。
材料も工程も同じでも、仕込み時の温度が違うだけで発酵の進み方や生地の状態が大きく変わります。
ですがこの「温度」は見た目では分かりにくく、なんとなく見過ごされがちなポイントでもあります。

今回は生地温度が違う生地での発酵の進み具合の比較や、私がパン作りをする際、季節ごとに取り入れている工夫をご紹介していきたいと思います。是非、参考にしてください。

実際に大事なのは発酵温度ではなく「生地の温度」

よくパンのレシピには「30℃で発酵」等と、「発酵温度」が書かれている場合が多いですが(私が出しているレシピも主に発酵温度を書いています)

実際にパンの出来を左右しているのは「生地そのものの温度」です。
例えば同じ30℃の発酵温度の場所に置いたとしても、生地自体の温度が低ければ発酵はゆっくり進み、高ければ発酵は早く進んでいきます。

「30℃で60分」発酵のレシピでも、生地温度に差があると発酵具合に差が出るので焼きあがったパンの出来に影響します。

実際に生地温度に違いがあると、発酵具合にどれほど差が出るのか?実際に試してみました。
同じレシピでも、生地温度が違うだけで「膨らみ方、食感、風味」まで変わってしまいます。

生地比較

写真 左)冷やして仕込んだ生地 右)温めて仕込んだ生地

同じ配合・同じ工程で、生地温度だけを変えた2種類の生地を比較します。
ひとつはすべての材料を冷やして仕込み、もうひとつはすべての材料を温めた状態で仕込み、同じ時間捏ねました。

右側は温めて仕込んだ生地で、生地温度は31℃です。触れると温かさを感じる温度です。

左側は冷やして仕込んだ生地で、仕込み時は約17℃でしたが、捏ねている間に環境の影響を受けて24℃まで上昇しました。触るとやや冷たく、ひんやりとした状態です。

この2つの生地を30℃設定の発酵器に入れ、60分間発酵させます。
同じ発酵温度の中で、60分後にどのような違いが現れるのかを見ていきましょう。

60分発酵後の生地です。

写真 左)冷やして仕込んだ生地 右)温めて仕込んだ生地
写真 左)冷やして仕込んだ生地 右)温めて仕込んだ生地

分かりやすい違いが出ました。
右側の生地は大きく膨らみ、張りが弱くなっている様子が見られます。

一方、左側は右側よりもやや小さく、表面もツルンとしています。
同じ「30℃で60分発酵」でも、捏ね上げ時の生地温度が異なることで、このような差が生まれます。
この生地を同じ工程で進め、焼き上げてみました。

焼き上がりにも大きな違いが見られます。

写真 左)冷やして仕込んだ生地 右)温めて仕込んだ生地

右側は焼き色が薄く、やや扁平な仕上がり。
左側は焼き色が濃く、腰高に焼き上がっています。

右側の生地は捏ね上げ温度が高く、そのまま高い温度帯で発酵が進んだため、酵母の活動が活発になり、生地中の糖を多く消費したと考えられます。その結果、焼き色がつきにくくなりました。
また、やや過発酵気味となり、生地の張りが弱く、扁平な仕上がりになっています。

一方、左側は生地温度が過度に上がらず、発酵も適正に進んだため、焼き色も良く、ふっくらとした仕上がりになりました。

生地温度の違いだけで、これだけの差が生まれます。
見た目だけでなく、焼き色が濃い方が風味や味わいもより強く感じられました。

「捏ね上げ温度」をコントロールする為の基礎知識

生地の温度の違いで、発酵具合に差が出るのがよく分かる結果となりました。
では、安定したパン作りを行う為に、生地温度の調整の仕方はどのようにしたら良いのでしょうか?

少し専門的なお話を間に挟みますが、考え方を知っておくと安定したパン作りに繋がります。
生地の温度の指標としてよくパン作りで使われるのが「捏ね上げ温度」です。
これは捏ね終わった生地の状態の温度のことを指します。

捏ねあがったパン生地

一般的によく言われている捏ね上げ温度は大体24℃~28℃の間で、作るパンや使用する酵母によっても変動します。(ハード系のパンや、発酵種使用のパンはもっと低く設定することもあります)

この捏ね上げ温度を狙ってコントロールするための方程式も存在します。
生地の温度を決めるものは

  • 水温
  • 室温や粉の温度
  • 機械熱や手の摩擦熱

などが関係しますが
この中で「水温」が一番調整しやすい為、水温を計算で算出します。

水温=(3×(希望捏ね上げ温度-摩擦係数))-(粉温+室温)

↑ここに当てはめて計算します。

摩擦係数は、捏ねる際に生地へ加わる熱の影響を数値化したものです。使用する機械や捏ね方、捏ね時間によって変わるため一概には言えませんが、目安としては以下のように考えています。

  • 手ごね(短時間の場合や手が冷たい人)・・・2〜3℃
  • 手ごね(しっかり捏ねる場合や手が温かい人)・・・4〜5℃
  • 機械捏ね・・・5〜10℃

ただし、これはあくまで目安です。

この方程式に希望捏ね上げ温度、実際の粉温や室温を当てはめることで、仕込み水温を算出できます。
ただし、この計算で求めた温度が必ずしも正解になるわけではありません。

季節や環境、捏ね方によって生地温度は変化するため、あくまで目安として考えましょう。

ちなみに、私自身も毎回細かく計算しているわけではありません。
毎回きっちり計算しなくても、生地温度の考え方を押さえておけば、家庭でも安定してパンを焼くことができます。パン作りは数字だけにとらわれる必要はありません。

そこで次からは、私が実際に行っている季節ごとの生地温度調整のポイントをご紹介します。

きっちり決めなくて良い。でも家庭で気をつけたい生地温度調整のポイント

生地の温度を測る道具

まずは生地の温度を測る道具です。
主にこの2つの温度計を使って生地の温度を測っています。

赤外線温度計の方が手軽なのでそちらを使いがちですが、しっかり生地温度や水温を内部まで正確に測りたい時は棒状温度計を刺して測っています。

私は粉類を常に常温保管しているので、基本的に水温で生地の温度を調整しますが、温度計での確認は参考程度で、目標の捏ね上げ温度ぴったりではなく、多少誤差があってもOK!と思うようにしています。

以下のように調整をとりながら緩やかなパン作りをしています。
基本的に、季節によって仕込み水の温度を調整しています。

夏は冷水(冷蔵庫の水や、氷を加えて冷やした水)を使い、冬はぬるま湯で仕込みます。

なお、冷水を使用する場合は、イーストの種類によっては直接冷水に触れることで発酵力が低下する可能性があるため、イーストは粉に加えてから混ぜるようにしています。

一方で春や秋は極端な温度差が出にくいため、あまり細かく気にせず仕込むことが多いです。

冬場は、生地温度が下がり過ぎないようぬるま湯で仕込み、発酵中に冷えすぎないようにマグカップにお湯を入れたものを一緒に置いたり、暖房の効いた部屋で作業したりしています。生地温度が下がり過ぎると発酵が進みにくくなるためです。

家庭でのパン作りでは、捏ね上げ温度をぴったり合わせることにこだわるよりも、その後の発酵状態を観察することの方が大切だと考えています。
そのため、発酵時間は固定せず、生地の膨らみや状態を見ながら調整しています。

夏は発酵が進みやすいため早めに状態を確認し、冬は発酵に時間がかかるため少し長めにとるようにしています。また、家庭用オーブンレンジの発酵機能は30℃前後に設定されていることが多いため、それより低い温度で発酵させたい自家製酵母のパンやハード系のパンでは工夫が必要です。

例えば夏場は、使用していないオーブンや発泡スチロール箱の中に保冷剤を入れ、温度が上がり過ぎないように調整しています。

特にハード系のパンでは低めの捏ね上げ温度を目指すこともあるため、冷水を使ったり、冷房の効いた部屋で作業したりして、生地温度の上昇を抑えることもあります。

温度計や計算式も参考になりますが、最終的には生地の状態を見ることが何より大切です。

まとめ

今回お伝えしたように、パン作りで本当に大切なのは環境の温度ではなく「生地そのものの温度」です。ただし、難しく考えてすべてを完璧に合わせる必要はありません。

大事なのは、生地の温度と状態を少し意識してあげること。
それだけでパンの仕上がりがぐっと良くなるはずです。

季節や環境に合わせて調整する力がついてくると、パン作りがもっと自由で楽しいものになっていくと思います。

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夏のパン作りで失敗しないコツは?| 試してほしい白神こだま酵母の冷やしクリームパンレシピ

コラム執筆:マスダ アイミさん

マスダ アイミさん
マスダ アイミさん

湘南・茅ヶ崎にてパン教室「OVEN 暮らしのパン教室」主宰。

『お家のオーブンから幸せを』をモットーに、
国産小麦や手に入れやすい範囲でのこだわり素材を使い、
作りやすいのに美味しい!と思えるパン作りを提案されています。

天然酵母を使ったレシピを中心としてパンや酵母菓子など、
特に、白神こだま酵母の良さや魅力を提案されています。

2024年には麹や発酵食のスペシャリストである「薬膳麹士」を取得され、同年10月より、『パンと麹をメインに、発酵をふだんの暮らしに取り入れる!』をテーマとした オンライン教室「発酵 暮らしごと」を開催されています。

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