こんにちは、富澤商店スタッフです。
富澤商店のオフィシャルクリエイターとして、パンや米粉パン、麹を使ったレシピを発信しているマスダアイミさん。
このたび、マスダアイミさん初のレシピ本となる、ごはんと米麹から育てる発酵種をテーマにした書籍『ごはんと麹の酵母で作るパン』が、2026年10月11日に発売されます。
自家製酵母に興味はあるものの、「難しそう」「ハードルが高そう」と感じている方も多いのではないでしょうか。本書には、酵母を育てる楽しさや、その酵母でパンを焼く喜びを、もっと身近なものとして感じてほしいというマスダさんの想いが込められています。
今回は新刊発売を前に、マスダさんご本人に、本書の制作に至ったきっかけや込めた想い、そして「ごはんと麹の酵母」の魅力について綴っていただきました。ぜひご覧ください。
書籍紹介
書籍発売記念インスタライブのお知らせ

本書の発売を記念して、富澤商店公式Instagramアカウントにて、マスダアイミさんによるInstagramライブを開催します。今回作るのは、書籍掲載レシピのひとつ「ごはんと麹の酵母でつくる こねないフォカッチャ」。絹のようになめらかでやわらかな生地を焼き上げると、驚くほどふかふかの食感に仕上がります。こねずに作れる手軽さも魅力のレシピです。ごはんと麹の酵母の楽しさやパン作りのコツなどもお話しいただく予定です。ぜひご参加ください。
開催日時
2026年10月16日(金) 16時30分~
配信アカウント
富澤商店公式Instagramアカウント
→こちら
※ここからは、新刊『ごはんと麹の酵母で作るパン』の発売にあたり、
著者のマスダアイミさんご本人にご寄稿いただいた内容をお届けします。


パンと麹をテーマに、レシピ制作や料理教室などの活動をしているマスダアイミです。富澤商店では、小麦パンを中心に米粉パンや麹を取り入れたレシピなどをご紹介しています。
パンを作ることはもちろん、
私が昔から好きなのが「育てること」
目には見えない微生物の働きによって、昨日と今日で少しずつ変化していく発酵の世界に面白さを感じ、パンや麹と長く向き合ってきました。
今回は、そんな私の好きなものがぎゅっと詰まった「ごはんと麹の酵母」と、
この酵母から作るパンについてご紹介します。
「育てる楽しさ」を届けたい

この度、ごはんと麹の酵母から作るパンの本を出版することになりました。
私がこの本で伝えたいのは、もちろん美味しいパンを作ること。
でも、それと同じくらい・・むしろ一番届けたいと思っているのが、「育てる楽しさ」です。
パン作りが料理やお菓子作りとは少し違って「難しい」と思われている背景には「生き物」を扱うというところがあると思っています。
同じレシピで作っていても、日によって膨らみ方が違ったり、時には元気があったり、なかったり。
温度や環境によって発酵のスピードも変わるので、「〇時間経ったから次へ」と単純にはいかないこともあります。
でも私は、そんなあれこれも含めて楽しめるのがパン作りだと思っています。
そしてパンは、市販のドライイーストだけでなく自分で発酵種を育てて作ることもできます。
ある意味、パン作りの原点に近い方法です。
発酵パンの始まりについては諸説ありますが、穀物を挽いた粉と水を混ぜた生地が偶然発酵し、それを焼いたことから始まったとも考えられています。
私たちの身のまわりや食材には、さまざまな微生物が存在しています。
それらの働きを利用して発酵種を育て、その力でパンを膨らませる。
いわゆる「自家製酵母」や「発酵種」と呼ばれるものです。
発酵種を使って作るパンには、その種や作り方によってさまざまな香りや風味が生まれます。
パン屋さんでも独自の発酵種を育て、パン作りに取り入れている所がたくさんあります。
パン作りを続けていると、
「いつか自家製酵母のパンを作ってみたい」と思ったり・・
これも、パン作りをしている方には割と“あるある”なのではないでしょうか。
ところが、いざ挑戦しようとすると立ちはだかるのが、
「自家製酵母って難しそう」
というハードルです。
特に自然培養による種起こしは、毎回同じように進むとは限りません。
目には見えない微生物を相手にするため、増えてほしい微生物が思うように増えてくれなかったり、別の微生物の影響を受けたりすることもあります。
せっかく種を起こしたのに、なかなか元気にならない・・
「できた!」と思ってパン生地に入れてみたのに、今度は生地が思うように膨らんでくれない・・
種起こしがうまくいかなければ、その先の「パンを焼く」というステップまで辿り着けません。
これまでレッスンなどをしてきた中でも、
「自家製酵母に挑戦したけれど、正解が分からなくてやめてしまった」
「パンが膨らまず、難しいと思って諦めてしまった」
という声をたくさん聞いてきました。
でも、それってすごくもったいない。
本当はその先に、自分で育てた酵母でパンが膨らむという、とても面白い体験が待っています。
難しさを減らして、「育てる」を楽しめる酵母に
だったら、自家製酵母の「育てる楽しさ」はそのままに、最初の難しさを減らすことはできないだろうか。
そんなところから考えたのが、今回の「ごはんと麹の酵母」です。
ごはんと米麹、そしてほんの少しのイーストの力を借りながら、数日かけて酵母を育てていきます。
一から自然界の酵母だけを頼りに培養するのではなく、最初に少量のイーストを加えることで、発酵を安定させ、初めての方でもパンを焼く所までたどり着きやすい方法を目指しました。
少量のイーストの力を借りますが、「育てる」という工程は自家製酵母と同じです。
毎日様子を見て、変化を感じながら育てていく。
ー昨日より元気になった。
ー香りが変わった。
ー元気よく泡立つようになった。
そんな変化を観察する面白さは、ちゃんと残っています。
「失敗しにくい」ことがゴールなのではなく、まず成功することで「育てるって楽しい!」を知ってほしい。

そして、自分で育てた酵母を使ってパンを焼き、
「ちゃんと膨らんだ!」
という喜びまで味わってほしい。
そんな思いから、この本を作りました。
ここからは、なぜ「ごはんと麹」なのか、この酵母ならではの特徴やメリットについてもう少し詳しくお話ししていきます。
なぜ「ごはんと麹」なの?

今回の酵母起こしに使うのは、ごはんと米麹。
どちらも、私たち日本人にとってとても身近な材料です。
麹というと、味噌や醤油、日本酒、みりんなど・・日本の和食における基本調味料を作る際に使われているものです。
麹にはさまざまな酵素が含まれていて、その中には、お米のでんぷんを糖へと分解する酵素があります。
そして、その糖を利用して酵母が活動します。
つまり、ごはんと麹を合わせることで、麹の酵素がお米のでんぷんを分解し、酵母が利用できる糖を作ってくれる。
そこへ少量のイーストを加えて育てていくのが、今回の「ごはんと麹の酵母」です。
私自身、普段からパンと麹の両方に関わる仕事をしています。
麹の面白さは、塩麹や甘酒が美味しいということだけではありません。
目には見えない酵素や微生物の働きによって、いつもの食材が少しずつ変化していくこと。
その過程そのものに、私はとても面白さを感じています。
パンも同じです。
小麦粉と水を混ぜただけの生地が、発酵によって膨らみ、香りが生まれ、やがてパンになる。
ごはんと麹の酵母は、私が好きな「パン」と「麹」、そして「育てること」がひとつにつながった酵母でもあります。
ごはんと麹の酵母の、うれしいところ

この酵母の大きな特徴は、初めて自家製酵母に挑戦する方でも取り組みやすいことです。
最初にほんの少しイーストの力を借りることで、自然培養だけに頼る方法と比べて発酵を安定させやすくしています。
そして、ごはんと麹の酵母を使う良さは「育てやすさ」だけではありません。
私がこの酵母をパン作りに使っていて特に気に入っているのが、パンの風味や食感の良さです。
麹には、でんぷんを糖へと分解するアミラーゼや、たんぱく質を分解するプロテアーゼなど、さまざまな酵素が含まれています。
それらの働きによって生まれた糖やアミノ酸などが加わることで、生地には自然な甘みや旨み、複雑な風味が生まれます。
また、焼いたときに香ばしい焼き色がつきやすいのも特徴のひとつ。

焼き上がったパンは、皮が薄く、中はしっとりとした食感に仕上がります。
砂糖や油脂をたくさん加えなくても、噛んだときにほんのりと甘みや旨みを感じられるシンプルなパンほど、この酵母ならではのおいしさを感じてもらえると思います。
そして、この酵母は一度育てたら終わりではありません。
酵母液の一部を残し、そこへまたごはんや麹などを加えて「継ぐ」ことで、繰り返しパン作りに使うことができます。
育てた酵母でパンを焼き、少なくなったらまた継いで育てる。
そうしているうちに、冷蔵庫に酵母液があることが少しずつ日常になっていきます。
「パンを焼くから酵母を用意する」のではなく、
「育てている酵母があるから、今日はパンを焼こうかな」
そんなふうに、パン作りが暮らしの中に入ってくる。
育てる楽しさがあり、その酵母だからこそ生まれるおいしさもある。
私はそれも自家製酵母でパンを作る大きな魅力だと思っています。
そして、パン作りも難しくしない
ここまで、ごはんと麹の酵母を「育てること」についてお話ししてきました。
でも、せっかく酵母を育てることができても、その先のパン作りが難しかったら、なかなか日常には続いていきません。
そこで今回の本では酵母の育て方だけでなく、パンの作り方そのものもできるだけシンプルにしました。

書籍のパンは、捏ねずに作ります。
材料をタッパーの中で混ぜて、伸ばしてたたんで・・そのまま発酵へ。
特別な道具もほとんど必要ありません。
そして、自家製酵母パンで難しいと感じやすい「発酵の見極め」も、できるだけ分かりやすく。
「〇時間発酵させる」という時間だけではなく、タッパーのラインを目安に、生地がどこまで膨らんだら次の工程へ進むのかを判断できるようにしています。
酵母を育てるところだけでなく、パンを焼くところまで。
できるだけ迷わず進められることを大切にしました。
8〜12時間の発酵は、長い?

ごはんと麹の酵母で作るパンは、一次発酵におよそ8〜12時間かかります。
「そんなにかかるの?」
数字だけを見ると長く感じるかもしれません。
でも実際にこのパンを日々焼いていると、私はむしろこのゆっくりとした発酵こそが
パン作りを暮らしに取り入れやすくしてくれていると感じます。
ポイントは「パンに自分の時間を合わせるのではなく、自分の生活にパンの時間を合わせること」
たとえば夜、寝る前に生地を仕込む。
眠っている間に発酵はゆっくり進み、朝起きたら次の工程へ進むことができます。
反対に、朝仕込んで仕事へ行きその間に発酵させておくこともできます。
すぐに次の作業ができないときは途中で冷蔵庫へ入れて、生地に少し待っていてもらうこともできます。
そんなふうに、発酵時間を自分の生活の中に組み込んでしまえばいいのです。
実は、忙しい人にこそ向いている

パン作りというと、
「一日予定のない日に作るもの」
「発酵中は時間を気にしていなければいけないもの」
と思われるかもしれません。
でも、このパンは少し違います。
ゆっくりと発酵する分、発酵時間のストライクゾーンも広め。
発酵中に買い物へ行ってもいいし、家事をしていてもいい。
子どものお世話で予定通りにいかなくても、生地がある程度こちらを待ってくれます。
私は神奈川に住んでいるのですが、先日は朝に生地を仕込んで、一次発酵中に家族で山梨までぶどう狩りに行ってきました。
帰ってきた頃には発酵が進み、そこからパン作りの続きをする。
そんなこともできてしまいます。
短時間で発酵するパンは、早くパンになる一方で、次の工程へ進むタイミングも早くやってきます。
ゆっくり発酵するパンは時間こそかかりますが、そのほとんどは「何もしなくていい時間」。
その間に仕事をしたり、出かけたり、眠ったりすることができます。
だから私は、時間のかかるパン=時間に余裕のある人のパンではないと思っています。
むしろ忙しい人ほど、この緩やかな発酵を味方につけると、パン作りがぐっと身近になる。
これは、私自身がこのパンを日々焼く中で感じている、大きな魅力のひとつです。
「育てる」から始まるパン作り

ごはんと麹、そしてほんの少しのイーストから育てる「ごはんと麹の酵母」。
初めての方でも育てやすく、育てた酵母は継ぎながら繰り返し使うことができます。
その酵母で作るパンも、特別な道具をできるだけ使わず、捏ねずに仕込み、ゆっくり発酵させる。
時間はかかるけれど、ずっとパンにつきっきりになる必要はありません。
「パンに生活を合わせるのではなく、生活にパンを合わせる。」
酵母を育てることも、パンを焼くことも、もっと気軽に毎日の中へ。
「私にもできた!」から始まり、いつか「育てるって楽しい!」に変わっていく。
この本が、そんなパン作りを始めるきっかけになれば嬉しいです。
掲載画像の撮影:伊藤徹也さん
自家製酵母は難しそうというイメージを持っていた方も、マスダさんの言葉を通して、「まずはやってみたい」と感じられたのではないでしょうか。
酵母を育てる楽しさと、暮らしの中でパンを焼く喜びが詰まった一冊。気になった方はぜひ手に取ってみてください。




