こんにちは。富澤商店スタッフの三谷です。
1月ももう半ば!バレンタインが近づいてきましたね。今回はこの時期よくある「クーベルチュールとは?」というご質問にお答えしていきたいと思います。スーパーやコンビニ、100円ショップなどでも販売されているごく普通の板チョコといったいどう違うのか?今回はこの内容について徹底検証していきます。溶かすだけでなく、バレンタインシーズンの人気レシピで実際に作り比べてみましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「クーベルチュール」とは?
「クーベルチュール(couverture)」とは、流動性が高く、ボンボンショコラやケーキのコーティングに用いられるチョコレートのこと。カカオバターの含有量が多いのがその特徴です。
▼富澤商店オリジナルのクーベルチュールチョコレートフレーク
チョコレートに関する国際規格において「クーベルチュール」は、
・カカオ分35%以上
・カカオ分のうち、カカオバター31%以上、無脂カカオ固形分2.5%以上を含む
・カカオバター以外の代用油脂は5%未満
と定められています。
「クーベルチュール(couverture)」は、もともとフランス語で「毛布」や「掛け布団」、「屋根」といった意味の言葉。「クーベル(couvert)」は日本語で言うと「~で覆われた」という意味の形容詞で、「クーベルチュール」はその名の通り、菓子を「カバー(覆う)」することに適したチョコレートです。カカオバターを多く含むことによって生じる流動性の高さこそが、「クーベルチュール」のもっとも特徴的な部分と言えます。
▼湯せんにかけて溶かしたクーベルチュール
カカオバターは室温では個体ですが、融点が低く体温程度で溶けるという性質があります。そのため溶かしたときにサラっと流れて伸びがよく、優れた口どけが得られるのです。
一方、日本国内のチョコレートの規格は、この国際規格とは異なります。
日本国内のチョコレートの規格とは?
日本国内のチョコレートの規格は、「純チョコレート」「チョコレート」「準チョコレート」の3つに分類されています。そもそも国内の規格における「チョコレート」とは、
・カカオ分が総重量の35%以上、そのうちカカオバターが18%以上含まれ、水分が3%以下
という基準に合格しているものに認められる表示なので、「クーベルチュール」に定められた31%のカカオバターの含有量がいかに多いものなのかを、ここからも伺い知ることができます。
▼一般的な市販の板チョコの例
また「純チョコレート」とは、そこへさらに「カカオバター以外の代用油脂は使用不可」「糖類はショ糖のみ、全重量の55%以下」「乳化剤はレシチンのみ、全重量の0.5%以下」「食品添加物はバニラ系香料のみ」といった厳しい条件をクリアした製品にのみ許される表示。
一方「準チョコレート」とは、「カカオ分15%以上、そのうちカカオバターが3%以上含まれ、カカオバターを含む脂肪分の合計量が18%以上、水分が3%以下」であればよいというものです。
▼湯せんにかけて溶かした板チョコ
食べたときにおいしいだけでなく、国内で常温流通しやすくすること、またお手頃な価格で購入できることを目的としてそれぞれの規格のチョコレートが製造されていますが、日本国内で流通している市販の板チョコには、これらの情報が食品パッケージの裏面などの一括表示欄に「名称」として記載されているので、その部分を確認して材料を選ぶことも可能です。
クーベルチュールと一般的な板チョコを溶かして比較!
それでは改めて、クーベルチュールと板チョコの違いがわかるよう、同じ条件で比較していきます。まずはクーベルチュールと板チョコをそれぞれ湯せんで溶かし、比較してみたものがこちらです。
▼湯せんにかけて溶かしたクーベルチュール
▼湯せんにかけて溶かした板チョコ
いずれも乳成分を含むタイプのチョコレートですが、サラサラと流れるような質感のクーベルチュールに対して、板チョコはねっとりと重みがあります。メーカーや種類によって原材料の配合が異なり、乳成分の割合などの影響で色味も違いますが、ゴムべらを覆うチョコレートの厚みに違いがあるのがおわかりでしょうか?
溶かしたチョコレートをゴムべらでぐるぐると混ぜてみると、クーベルチュールは液体に近い感覚で扱えますが、板チョコの方はゴムべらを動かすたびに抵抗を感じるほど、もったりとした感触です。
クーベルチュールと一般的な板チョコで「生チョコ」を作って比較!
それでは、生菓子や焼き菓子のレシピに使用してみたときの違いはどうでしょうか?
バレンタインシーズンの人気レシピである「生チョコ」で比較してみたいと思います。今回はあえて「板チョコ」のメーカーさんが公式サイトで推奨している生チョコレシピで作り比べてみました。
▼クーベルチュールを使用した生チョコの様子
▼板チョコを使用した生チョコの様子
チョコレートを溶かしたときと同様に、クーベルチュールはサラっと流れるような状態。それに対して板チョコはぐっと重く、キャラメルのようなねっとり感があります。つややかでなめらかなクーベルチュールの生チョコに対して、板チョコを使用した生チョコはどろりとした印象です。
▼固めてカットした生チョコ。左が板チョコ、右がクーベルチュール
冷やし固めてカットしてみた様子がこちらです。
板チョコを使用した生チョコはなかなか固まらず、冷凍庫で凍らせてからカットしています。生キャラメルのようにねっとりとしていて、まっすぐに切り分けるのが難しい印象。一方、クーベルチュールを使用した生チョコはしっかり冷え固まり、カット作業もスムーズでした。
食べてみると、板チョコを使用した生チョコは独特のもっちり感があり、やはり生キャラメルのように口の中に残る感覚があります。クーベルチュールを使った生チョコは口の中でスッと溶け、なめらかな舌触りを楽しむことができました。
クーベルチュールと一般的な板チョコでコーティング比較!
次に、クーベルチュールの一番の特徴である「流動性」を確認するために、コーティングで比較してみます。先ほどカットした「生チョコ」を使って、溶かしてテンパリングしたチョコレートにくぐらせて「ボンボンショコラ」を作ってみましょう。
▼クーベルチュールでコーティングした様子
▼板チョコでコーティングした様子
クーベルチュールは、やはり生チョコの表面を薄く覆い、コーティングを美しく仕上げることができます。一方で板チョコは重くもったりとした感触で、コーティングしようとしても伸びにくく、厚い層になってしまいます。
▼生チョコにコーティングした様子。左が板チョコ、右がクーベルチュール
板チョコはテンパリングを行ってみても難しく、溶かす前の状態のように綺麗にパリッと固まりませんでした。クーベルチュールの方は固まり、生チョコをコーティングすることができています。
クーベルチュールと一般的な板チョコで「ガトーショコラ」を作って比較!
それでは最後に、バレンタインのもうひとつの定番レシピである「ガトーショコラ」で比較してみます。
いわゆる「生菓子」である生チョコ、テンパリングを行ってのコーティングは「クーベルチュール」の方が優勢でしたが、火を通す「焼き菓子」では違いが出るのでしょうか?
▼ガトーショコラミックスを使用したもの。左が板チョコ、右がクーベルチュール
▼カットした様子。左が板チョコ、右がクーベルチュール
こちらは板チョコ、クーベルチュールともに綺麗なガトーショコラが焼き上がりました。クーベルチュールの方がカカオ分が高いため、生地が締まって少し小さくなっています。
食べてみると、板チョコを使用したガトーショコラは少し軽い食感と甘みが印象的で、クーベルチュールを使用したガトーショコラはしっとりと締まり、カカオの香りを感じる仕上がりになりました。
市販の板チョコも「ミルクタイプ」「ブラックタイプ」と多数のバリエーションがあるため、焼き菓子を作る場合は「ブラックタイプ」を選んでいただくと、よりカカオの風味を感じられる仕上がりになりそうです。
板チョコとクーベルチュールの使い分けのポイントまとめ
板チョコとクーベルチュール、同条件で扱ってみるとそれぞれ違いがあるのをお分かりいただけたでしょうか?
どこでも手軽に、安価で購入できる板チョコに対して、クーベルチュールはやはりお菓子作りに特化したチョコレート。特に生チョコやテンパリングを行ってのコーティング作業などはクーベルチュールをお使いになるのがおすすめです。
クーベルチュールの特徴まとめとおすすめの使い方
・カカオバターが多く含まれていて、溶かすとサラっとした使い心地
・テンパリングするとパリッと固まり、口に入れるとスッと溶けるため薄くコーティングするお菓子に最適
・カカオの風味が高く、高級感のある味わいに
★ボンボンショコラや生チョコ作りに特におすすめ
★焼き菓子もしっかりとしたカカオの風味が楽しめる
板チョコの特徴まとめとおすすめの使い方
・カカオバターが少なく(含まれない場合も)、溶けにくいため常温で持ち運びやすい
・お菓子作りの場合はブラックタイプを焼き菓子に使用するとよい
・そのまま食べるのにおいしいチョコレート
★手に入りやすいので気軽に使える
★ガトーショコラやマフィンなどの焼き菓子におすすめ
クーベルチュールと板チョコを徹底比較してきましたが、違いをお分かりいただけたでしょうか?どちらにもそれぞれ特徴と、優れたポイントがあります。
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ぜひチョコレートをうまく使い分けて、ご家庭での手作り、おうちバレンタインをお楽しみくださいね!
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